ネットナンパ師“スケベガオ”の
今宵のベッドはキミと共に

【5】 とうとう出会った完璧理想な女


 住所氏名を明かしたせいか、雪ちゃんとの仲は、途切れずに続いた。
 それどころか、メールの中身はどんどん濃くなっていく。携帯ではなく、パソコンでのメールのやりとりだったし、送信時間はお互いに夜中だったし、それなりにじっくり語り合っていたこともあって、頻度は1週間に1往復程度。でも、短い携帯メールを頻繁にやりとりするのと違い、毎回、充実かんがあるし、気持ちもズッシリ伝わってくる。

 だから、成り行きとしては当然なのだが、それにしても「会いに行く」というメールは、唐突だった。

 メールの雪ちゃんは僕も相当、好きになっていたし、会えるのは嬉しい。でも、電話で話したことないし、写メのやりとりだってしていない。
 しかも、彼女が指定したのは、「さあ、これから夕食&飲みにでも行こうか!」って時間帯。会ってすぐにバイバイするならともかく、食事を終えてからでは、距離的にももう彼女には「帰宅」という選択肢は用意されていないのだ。
 そこまで一気に思い切ってしまって、いいのか? 僕は決して「変な奴」(空気が読めない、常識が無いとか)でもないし、清潔にだってしてるが、イケメンなんかじゃないし、生理的な好き嫌いだってあるだろう。正直、度胸あるなあ、と関心してしまうのだ。

 一方、こちらには、雪ちゃんが「とんでもない女」ではないという、いくつかの保証がある。

 彼女が人妻であるのが、そのひとつだ。トンデモ女では、結婚なんてできないだろ。結婚後に油断してどんどん崩れていく女性だって決して珍しくはないが、夜中に抜け出してきた彼女を人妻と知りながら抱く男だっているし、それとは別に本当に大好きな男性がいて、その男性ともたまに関係するというんだから、そこそこのレベルであることは間違いない。

 写真を見ずに女性を判断するには、男性遍歴も大切だ。誰にも相手にされたことがないのか、世間一般なみには色々と経験しているのか、ヤリまくっているのか。これである程度、わかる。
 このとき、年齢も勘案しなくてはならない。
 例えば、既婚と思われる年齢なのに未だに独身って、ちょっと何かあるんではと疑ってみる必要があるが、しかし、次から次へと恋人やセフレが絶えない、というのならそれなりにイイオンナであり、結婚に固執していないだけなのかもしれないし、バツイチだったら年齢に関わらず未婚なのも頷ける。かといって、離婚後ずっと男に縁がないのであれば、何か原因があるのかもしれないと考える。

 もちろん、過去の栄光だけでなく、今の状態も確認しておくことが、大切だ。過去はそれなりでも、今は無惨、なんてこともありえるからだ。

 そして、当日。
 やってきた彼女は、完璧だった。

 プロポーションは均整がとれているし、身長はちょっと低め。かわいくって、笑顔がステキで、元気。僕が理想とする女性のタイプのひとつなのだ。おまけに顔だって、僕好み。
 まさに雪ちゃんは、「大当たり!」と叫ぶにふさわしい。

 まずは食事でもと並んで歩き始めたら、おもむろに手を握ってきて、「ずっと、こうしたかったんだ〜」だって。抱きしめたくなるほどカワイイじゃないの!

 個室のある料理屋を携帯電話で予約し、ゆっくり手をつないで歩いて15分。おかみさんにコースを頼んで、冷酒で乾杯したら、ようやく落ち着いて見つめ合う瞬間がやってきた。

「ああ、やっと逢えたね」
 口にしたのは一度だけだが、お互い心の中で、同じ言葉を何度も繰り返したに違いない。

 酒食でお腹を満たしながら、何度も何度も笑顔になった。でも、何を喋ったかは、憶えていない。たくさんの言葉が溢れ出て来たような気もするし、実はそれほどたいしたことを喋ってはいなかったようにも思う。
 唯一、憶えているのは、お店を出たあとの会話だ。

「どこに泊まる? シティーホテル? それとも、ラブホ?」
 こんなことを聞くのは、野暮だとわかっている。でも、僕は決めていた。彼女がその気にならなかったら、潔い態度をとろうと。いつのまにか、「逢えただけで、十分」という気持ちにさせられていた。

 そして、雪ちゃんは、言った。
「ラブホが、いいな〜」 (つづく)


ぶるう浪漫:今回は珍しく、ハウツーらしいハウツーになってるじゃないですか。
スケベガオ:……前回、色々、言われましたからね。
ぶるう浪漫:そりゃあ、言いますよ。編集者としてはね。
スケベガオ:ていうか、自分が知りたいだけだったりして。←(小声で)
ぶるう浪漫:聞こえてますよ。そもそも、2人で対談してるのに、どうして小声なんだか……。
スケベガオ:アハハハハ。
ぶるう浪漫:それはさておき。この、雪ちゃんて方、べた褒めですね。そんなにイイ女だったんですか?
スケベガオ:まあ、人それぞれ、好みはあるとは思いますけど、外見も性格も相性も、人並み以上でしたから……。
ぶるう浪漫:文句は、ない?
スケベガオ:当然、文句はありませんよ。それに、僕の好みにバッチリ合いましたから。
ぶるう浪漫:それにしても、スケベガオ先生も書いてらっしゃいますが、彼女、度胸ありますね。
スケベガオ:そうでしょう? メールをたくさんやりとりしてても、会って「あ、この人、無理」とか感じたときに逃げられるように、普通は午前中とか、せいぜいゴゴイチくらいには会って、逃げ帰れるようなことも考えると思うんですよ。
ぶるう浪漫:遠方の方?
スケベガオ:隣の隣の県ですから、夕食前だったら、逃げ帰れます。
ぶるう浪漫:じゃあ、第一印象でダメだったら逃げ帰る。一緒に食事するなら、覚悟を決める。そんなつもりだったのかもしれませんね。
スケベガオ:あとで訊いたら、そうではなかったんです。もう最初から、この人と一緒にお泊りするって、決め手出てきたみたいですよ。それに人妻ですから、お泊りできるように色々と理由付けて家を出てきてるわけですから、突然帰宅したら、逆に疑われかねない。
ぶるう浪漫:すると、人妻の場合、事前にその気になってたら、逃げられる可能性はほとんど、ゼロと思っていいんですね。
スケベガオ:不潔感満載とか、生理的にどうしてもダメとかなら別でしょうけど、「ちょっとイマイチ」程度なら我慢するでしょうね。
ぶるう浪漫:ははあ。彼女は、ちょっとイマイチのを我慢したんですか。
スケベガオ:あのねえ。失礼なことを言わないでください。彼女は外見で判断するような子じゃなかったってことです。メールで十分話し込んで、僕ももちろんそうですけど、彼女も僕とひとつになりたいってところまで気持ちが昂ぶって、そして、会いに来たんですから。
ぶるう浪漫:事前に写メとか、やりとりしなかったんですか?
スケベガオ:彼女が求めてこなかったんですよ。
ぶるう浪漫:スケベガオ先生は、求めなかった?
スケベガオ:顔で判断されるような人だと思われるのは、イヤでしたから。
ぶるう浪漫:彼女もそうだったのかもしれませんね。
スケベガオ:いや、女性は男性に写メを先に求めても、僕は許されると思いますけどね。でも、そんなことどうでもいいぐらいに、僕たちはメールで仲良くなっていましたから。
ぶるう浪漫:顔や表情が見えない分、確かにメールでは本音が語れますね。
スケベガオ:ただ、リアルタイムの会話じゃないんで、推敲とかもできますから、イイカッコしようと思ったらいくらでもできますよね。だけど、イイカッコばかりじゃ、ダメなんです。自分のダメなところは認める。ちょっとイイカッコしてしまったかなという時には、その部分を削除したり、あるいは自分でオチをつけてみたり、バランス感覚は大切ですよね。メールだし、必ずしも会うわけじゃないしで、嘘をつこうと思ったら、いくらでもつける。でも、実際に会う機会に恵まれることもあるわけで、嘘をついてまでカッコつけたら、その時に後悔します。だから、嘘は絶対ダメ。でも、ある程度の演出は必要ってことです。
ぶるう浪漫:なーるほど。それで、彼女とは、ラブホへ行ったんですね。セックスは楽しめました?
スケベガオ:もちろんです。
ぶるう浪漫:で、それは、次回、ということで、ひっぱるわけですね。
スケベガオ:そのとおりです。


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