西賀内智子へのオマージュ 1  by ヤギちゃん その1





 




 僕の初体験は21歳の時で、相手は大学のサークル活動で知り合った西賀内智子(仮名)という名の短大生だった。
 きりっとした眉と、切れ長の涼しげな目、やや大きめで形のいい口、ミディアムロングの髪がゆったりカールして肩にかかり、笑顔がとてもチャーミングで、さわやかな声の女の子。そんな彼女に、僕は一目会った瞬間から恋をしてしまった。
 おとなしいまじめな性格で、サークルでも発言は少なかったが、自分の役目はひたむきにこなす。
 特に無口でも無愛想でもないが、エッチな話題は嫌いで、コンパでそういう話になると耳をふさいで顔をしかめた。そんなところも、僕が彼女に心を引かれた理由だった。

 僕は四年制大学、彼女は同じ大学の短大部。校舎は別々だったから、会える機会はサークルしかなかったし、会っても二人きりで話ができるような雰囲気じゃなかった。何度も気持ちをうち明けたいと思いながら、彼女のまじめさを考えると、告白しても拒絶されそうで、結局僕は1年2ヶ月も、彼女への熱い思いを胸の奥に秘め続けた。

 サークルの他の男たちはみんな彼女のことを親しみを込めて「智子」とか「がうち」と呼びすてにしたが、僕だけは、きまじめに「西賀内さん」と呼んでいた。
 彼女を呼び捨てにできる仲間たちの気安さをうらやみ、そして嫉妬しながら。
 そんなとき、僕はサークルの他の女子から、意外な話を聞いた。
「西賀内さんは誰とでもエッチする子よ。君は気づいてないと思うけど、サークルの男子も、君以外全員あの子とエッチしてるんだから」
 ショックだった。すごいショックだった。話を聞きながら、顔から血の気が引くのがわかった。

 茫然とした僕は、下宿先のアパートに帰っても食事も喉を通らず、ベッドでふて寝をしたが、深夜になっても眠れなかった。心は彼女のことで一杯だった。
 あんな話は全て嘘だと思いたかった。しかし今になると思い当たることはいくらでもあった。
 サークルの男どもが飲み会でみんな彼女のまわりに集まって、わざと彼女の耳元で猥談をし、彼女が嫌うのを喜んでいたのも、ほんとうは彼女との関係をみんなにひけらかしていただけだ。
 だから彼女は嫌ったのだ。
 そのくせ彼女は、個人的に求められれば、喜んで彼らが言うようなことを・・・。

 気がつくと、僕は固く勃起したものを握りしめてオナニーしていた。それまでの僕はオナニーしながら彼女のことを頭に思い浮かべることだけはしないようにしていた。そんなことをしたらまじめで清純な彼女に顔向けできなくなると思っていたから。僕にとって、彼女のイメージはそれぐらい清らかで大切だった。
 その戒律のような自制の鎖が、このときぷっつりと切れたのだ。
 サークルの男たちが次々に彼女とセックスをするのを想像すると、狂おしい嫉妬とやりきれなさで胸を裂かれる気分だったが、同時にものすごく興奮して、自分をしごく右手にも力が入った。
 それまでのオナニーで経験したことのない、背筋がぞくっとするような激しい快感が、体中を突き抜け、記録的な量の精液を射精した瞬間、僕は思わず、「西賀内さん!」と彼女の名前を呼んでいた。

 激しい快感が引いたあとに残るのは、地獄に堕ちるような自己嫌悪だ。
 それでもしばらくするとまた彼女の裸体を想像し、たちまち勃起してしまう。それまで彼女への清らかな愛だと信じていた感情は、実は童貞であるがゆえの未熟な性欲にすぎなかったのか?
 僕は徐々に愛と性欲の区別もつかなくなって、一晩中彼女とのセックスを想像しながら、オナニーにふけった。やりすぎて朝になったらペニスがパンパンに腫れ上がった。仮性包茎の皮が、水ぶくれになり、まるまると亀頭をくるんだ感じがボクシングのグローブでハムを握ったようだった。茎も腫れて、トイレはもちろん、痛くて歩くのもつらかったので、腫れが引くまで大学をさぼった。

 ペニスの腫れは2日目にはおさまったが、西賀内智子と顔を合わせるのがいやで、3日目もアパートに閉じこもり、朝からペニスが腫れない程度にオナニーしていた。
 そんなときだった。彼女から電話があったのは。
 ここ数日、サークルに顔を見せない僕のことを病気とかんちがいして、「食事とか、ちゃんとしてますか? これからお見舞いに行っていいですか?」と不安そうに言う。
 僕はあせった。
「体の方はすっかり良くなったから、心配ないよ。でも西賀内さんが来てくれたら、正直言って、すごくうれしい。いつか2人でいろんなことを話せるチャンスがほしいと思っていたから」
 僕がすなおに本音を言うと、彼女は「そうしましょう。明日は土曜日だから、遅くなってもいいし」と、屈託のない明るい声で答えた。
 その日が金曜日だったことに、初めて僕は気がついた。

 それからが大忙しだった。オナニーで使ったティッシュが山盛りになったゴミ箱を片づけ、大急ぎで部屋中を掃除した。こんなに一生懸命掃除をするのは、生まれて初めてだと思ったが、もしかしたら今日はもっとすごい「生まれて初めて」を経験することになるかもしれない。
 サークルのほかの男どもといっしょにされるのはいやだったが、本音を言えば、やっぱり、したい。
 念のために、近所の薬局で3箱3000円のコンドームを調達した。
(男の子の初体験掲示板より 2002/07/29)

 
 ヤギちゃんさん、ありがとう&お疲れ様。このシリーズはとっても長くて、全4回。とても丁寧に書いてくださっていて読み応え満点。読者の皆様もご期待くださいね。

 

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