最終章 開放は淫らに
その日以来、雅人と加奈の二人は、学校の中でセックスを楽しむようになっていった。 初めのうちは、休日の誰もいなくなった音楽室で二人は楽しんだ。 そして、とある平日。 部活動の練習も終わり部員達全員で後片付けをしている時のことである。 「なぁ、加奈、今日ここで遊んでいかない?」 「えっ」 「後で話すよ」 雅人はそれだけ言うと、自分の楽器ケースをもって、準備室に入っていった。 「おつかれさまー」という部員達の声が聞こえ、一人、また一人と音楽室から出ていった。いつものように、最後まで残っているのは、雅人と加奈、そして一哉と優美の4人だけであった。 「おい、雅人、みんなで少し遊んで帰ろうぜ」 一哉が声をかける。 「あ、いや、今日はやめとくわ」 いつもなら二つ返事でOKをするところであったが、今日は断る雅人。 「えっ、なんでだよ」 一哉が不思議そうな目で、雅人と加奈を交互に見る。 「あっと、今日はちょっと二人で寄りたいとこがあるから、別々に帰ろうぜ」 雅人はちょっと何か含めたような口調で答えた。 「おぅ、わかった、それじゃ別々に行こうか」 そう言って、一哉と優美が先に音楽室を出ていく。 二人が出て行くと、雅人はすぐに窓際へと駆け寄る。加奈もそれについていく。 二人が寄り添う窓際からは、校庭と、そこから続く校門が一望できた。 |
二人がいるのは4階だということもあって、校門をくぐっている人物が誰だかわかるくらいに見えていた。 「ねぇ、雅人さん、今日本当にしていくの?」 「うん」 「だって、いつもと違ってさ、結構、人がいるし」 「大丈夫だって」 その言葉に、今で誰にも見つからなかった経験だろうか、加奈はただ雅人の言葉にコクリとうなづいただけだった。 少したって、雅人の目は一哉と優美を捕らえた。 「あいつらいるよ」 「どれどれ」 加奈も目を凝らして校庭の中の二人を捜す。 「あっ、ほんとだ」 加奈の目も二人を捕らえる。 仲良く談笑しながら歩く様子が手にとるように伝わってくる。二人はやがて校門をくぐると、雅人と加奈の視界から消えた。 |
雅人の腕が加奈の背中を包むようにしてきた。加奈はそっと雅人の胸に顔をうずめる。 「向こう行こうか」 その言葉にやはりコクリとうなづくだけの加奈。 加奈の瞳はすでにトロンとしはじめてきていた。 ついこの間までの加奈を想像できないくらい、加奈は大人の女へと近づきはじめていた。抱きかかえられるよに、隣にある準備室に入る二人。 雅人は片方の腕で加奈を抱き、もう片方の手で、準備室のドアを閉める。そして唇を合わせながら雅人は顧問の教諭がいつも使用している椅子を引くと、そこにどかっと腰をおろした。 そのまま加奈も雅人の両膝の上に尻をのせていく。 きしゃな加奈の重みは雅人の太ももにそれほど負担を与えない。 それどころか、大人の女性へと成長していく加奈のお尻の柔らかさが伝わってくるぐらいであった。 雅人の手が加奈の制服のボタンを外す。 加奈はそれを拒むこともなく、重ねられた唇の中の舌のまさぐりを熱く受け止める。 ブラウスの上から、加奈の乳房を揉む雅人。いつも通りの女性の柔らかさが、ブラウスの布地を通して、雅人の手の平に伝わる。 お互いの唾液のぬくもりと、ぬめりを舌を絡めて確かめあう。加奈の胸を揉んでいる手の平がゆっくりと下の方に移動していく。ブラウスの裾を捲り上げると、その中に手を入れていく。 指先に滑らかい加奈の肌がふれる。ブラジャーの中に手を差し入れ、今度は直に膨らみの感触を楽しむ。 |
ここ最近の加奈との行為によって、雅人も以前よりも成長していた。 「うぅっん」 唇を塞がれた加奈の口から甘い声が漏れる。 雅人の手は再び下へと移動し、ミニにしているスカートの裾の中に入っていく。加奈は太股に雅人の手が触れただけで、あそこが一段と熱くなるような気がした。 雅人の指先がパンティーの上から、加奈の一番大事な所を刺激しはじめる。その下にある蜜壷からは、すでに愛液がにじみだしてきており、パンティーにほんのりと染みさえ浮かばせていた。 刺激されている一番大事な所がプックリと膨らんだのか、少しコリッとした感じになる。そうなってくると、重ねていた唇を離し、雅人の胸の中に顔をうずめる加奈。雅人ま指は加奈の大事な所を刺激し続ける。 「んっ、んんっ」 加奈は雅人に抱きつきながら喘ぐ。 雅人も空いたほうの腕で、ギュッと加奈の体を抱きしめる。 「はんっ」 雅人の指がパンティーの中に入りこんだ。 指先に柔らかい恥毛とそれに包まれるようにある、一番大事なところのなんとも言いがたいものが伝わる。 指を下へずらしていく。蜜壷のぬめりが指に絡む。雅人はその愛液を広げていくように、そんなに開花していない、花びらに広げていく。 加奈の体に最近ようやく味わえるようになってきたばかりの、心地よさが広がっていく。雅人はいよいよ堪えきれなくなってきたのか、加奈の下着をずらしはじめていく。 加奈も数回の経験から得たものだろうか、そうされはじめると、自ら腰を浮かせて、下着をずらしやすい体勢をとってみせた。 雅人によよって下げられた下着は両足のかかとまできた。雅人はそれを片方の足だけ抜いた。 そして一旦加奈を自分の膝の上から降ろすと、ベルトを緩め、腰を浮かしてズボンとトランクスを膝のあたりまでずらした。 あらわになった、雅人のいきりたった男根の先には、いつものように、雫がではじめていた。傍らに立つ加奈を引き寄せる雅人。 加奈も心得たもので、片足を上げると、雅人のの上にゆっくりと乗っていき、それと同時に蜜壷にいきりたった男根を沈めていく。 |
「あんっ、んっ」 お互いが完全に密着して、いきりたった男根が加奈の蜜壷の中に隠れると、加奈は声をあげた。 雅人は腰を前後させて、快感をさらに得ようとする。 いつものように、雅人の硬い恥毛が加奈の一番敏感な所をすりあげていく。 「あっ、い、いい」 あげてはいけないとはわかっていても、小さくではあるが声が出てしまう。 その声とともに、しだいにヌチュ、ヌチュという音も大きくなっていく。 雅人のほうに限界がやってきた。 加奈の腰を掴み膝の上から降ろすと、一気に白濁が、いきりたった男根の先から噴き出してきた。 それは勢いよく、目の前の机のしたへと向かって飛び散った。 「ふーっ」 雅人は大きく息を吐いた。 |
その日以来、部活動が終わって誰もいなくなった放課後の音楽準備室でほとんど毎日といっていいくらい、その行為がつづけられていた。だがそれも、いつまでも誰にも気づかれずに続けるというわけにはいかなかった。 それは誰もいなくなった夜の校舎を見まわる警備員がいたからだった。 この学校の警備員は、60歳を越えたばかりの、会社を定年になり警備会社に再就職したばかりの男だった。 その男がいつものように、夜の8時をまわった校舎の中を巡回していた時のことである。音楽室の前まできた男は、なにか物音がするのに気がついた。 なにか怖いような気がしたが、そーっと音楽室のドアを開ける。 懐中電灯であたりを照らしてみたが、誰もいる気配はなかった。 警備員は耳を澄ましてみる。 隣の準備室に人がいるような音がする。 準備室から聞こえる物音に集中する警備員。かすかにだが、女の声がするのがわかった。 それも、情事にふけるときに出す女の甘い声だと、警備員にはすぐにわかった。 男の胸が、ドキドキしたような、ワクワクしたようなものに包まれていく。本来するべき仕事のことなど、この男の脳裏には微塵もなくなっていた。 男は懐中電灯を消すと、窓から差込む月明かりを頼りに準備室のドアへと近づいていく。「んっ、あっ、んんっ」ドアに耳を近づけると女の甘い声がはっきりと聞き取れた。 (だれだろう?) 男はふと思う。 (先生かな?)などと思いながら、ドアの向こうから聞こえる音に耳を集中する。 男はドアの中を見てみたい気がしたが、それをすることはなかった。 |
まるで泥棒のように忍び足で音楽室を出て行く警備員。 なぜその男がそうしたのかというと、男は女の甘い声を聞きながら、一つの考えが浮かんだからだった。 (今、ここで中に踏みこんでも、おもしろくない。どうせ暇な巡回だから、楽しみの一つにとっておいたほうがいいかもしれないなぁ) そんな考えから中に踏みこむのはやめ、これからの楽しみにしょうと思った警備員だった。しかし、いくらこれからの楽しみだといっても、中にいた甘い声の持ち主の顔ぐらいは拝んでおきたいと思う警備員。 (階段の下で待ち伏せるか、いや、それではもうやらないかもしれない) 警備員はあれこれ考えていると、上から階段をおりてくる足音がした。その足音がだんだん警備員に近づいてくる。 慌てて隠れるような場所もなく、警備員はまるで自分がなにか悪い事でもしたかのような気持ちで、その足音の主の姿が現れるのを待った。 |
やがて、その足音の主が男の視界に入る。 (えっ、生徒か) そう思った瞬間、「お前達ここでなにしてたんだ」と声をあげた。 その声にひどく驚く、雅人と加奈。 二人の表情がひどくひきつり、困惑しているのが、警備員にもわかった。 「あ、あの、勉強してたんです」 「勉強だって? こんなに遅くにか」 「え、えっと、彼女に勉強おしえてて」 「本当か?」 「ほ、本当です」 雅人は階下にいた警備員が、まさか自分達のしている行為の音を聞いてから、下に降りてきているなどと思いもしなかった。今から階上を見まわると勝手に思いこんでそう言ったのだった。 「ほんとに勉強してたのか?」 警備員が再び聞く。 「ほ、本当ですよ、信じて下さい」 その押し問答を、顔を下に向けたまま聞いている加奈。警備員は懐中電灯で加奈を照らし出す。加奈の心臓がはちきれんばきりに鼓動する。 警備員は加奈の美しい首筋から下へ向かって舐めるような、いやらしい視線を移動させていく。 むしゃぶりつきたいような、ミニにしているスカートのの下のくすみひとつない美しい太股。 警備員はその太股に見入っていると、「信じてくださいよ」と雅人が懇願するように言った。 |
「うーん、どうしたものかなぁ」 思わせぶりな警備員。 「俺達、ほんとに勉強してただけですから、あっ、俺達部活の先輩後輩なんです」 「んーっ」 それでも警備員は、加奈の太股に視線を送りながら悩んだふりをする。 「まっ、いいだろう、お前らの言う事を信じるとするか」 「あっ、ありがとうございます」 「これからは、あまり遅くならないように」 「は、はいっ」 そう言って、階段をかけおりていく二人の後ろ姿を見ながら男はほくそえむ。 (こりゃ、いいとこに就職したなぁ、やつらのほかにもいるんだろうなぁ) 今回の事で、これからが楽しみになってきた事を再認識する警備員だった。 現にこのあと警備員は、この仕事を辞めるまでの間に、数度、今日のような事を体験した。雅人と加奈は、校門を足早に駆け抜けて出た。 |
「やばかったなぁ」 「ほんと、どうなるかと思っちゃった」 「まじにあんなに早く警備員がくると思ってなかったよ」 「でも、今日はいつもよりおそかったから」 「それもそうだなぁ、今度からもっと早く」 もっと早く終えようとでも言うつもりだったのだろうか。けれど、加奈は自分の言葉で雅人の台詞と打ち切り、最後まで言わせなかった。 「えっ、私、もういやだ」 「えっ、俺とするのいやなのかよ」 「学校でするの、もういやなの」 「いままでずっとしてたのに」 「今日みたいな事、あったら怖いし」 「それもそうだけど」 その日から二人の行為の場所は、お互いの家へと変わった。 |
それが数回続いたある日の帰り道のことである。 その日は加奈の家に行くことになっていて、二人は家まで後少しというところを談笑しながら歩いていた。 「加奈、今日はちょっと変わった事してみないか?」 「えっ?変わった事ってなに?」 「あのさ、この前、警備員のおっさんに見つかりかけてから、お互いの家でやってるじゃん」 「うん」 「それでさ、あんまり家の中ばっかりですると、今度は親にみつかるんじゃないかと思ってさ」 「そうなんだよね」 「それでさ、考えたんだよ」 「何を考えたの?」 「外でならいいかなぁーって」 その言葉にひどくびっくりする加奈。 「えーっ、そんなのできないよ」 「いいだろ? 実は一回だけやってみたくってさ」 「いやだ、絶対にいやだ」 雅人はほとんど毎日のように行われる行為に対して、最近少し飽きがきていたのかもしれない。 絶対いや、と言い張る加奈に、さらに説得するようにせまる。 「いいだろ? 一回ぐらいだったら大丈夫だって」 「でも」 そこまで言われると、雅人が望むなら一回だけだったらいいような気もしてきた。 「大丈夫だよ」 「うん」 加奈の方も回を重ねるうちに少しづつ大胆になっていったせいが、雅人に押し切られる形で、了承してしまった。 |
「それでさ、今日いいだろ?」 「今日って、もう、私の家の前だよ」 「ここなら誰もこないだろ」 「えっ」 雅人は加奈の自宅のある袋小路には彼女の家しかなく、通行人など加奈の家の住人しか来ないだろうと思っていた。 「なぁ、頼むよ、さっきいいって言ってくれたじゃん」 誰かに見られる確率は低いかもしれないが、見られるとしたら確実に家族か、または家族を訪ねてきた誰かに、である。 それは避けたかった。 「でもここでは」と加奈が言い始めた時、雅人は加奈をグッと抱き寄せて唇を重ねていった。 強引な雅人の行為に加奈の体は一瞬硬くなったが、すぐに当然のごとく熱くなっていく。 雅人は自分の鞄を下に置くと、加奈の舌をまさぐりながら、彼女の鞄を取って下に置いた。雅人はスカートの中に手を差込むと、すぐに一番敏感な部分を刺激する。 加奈のパンティーにはしだいに染みが浮かびあがっていく。 すぐ側にある塀に加奈を押し付けると、すばやくズボンをおろす。 そして加奈のパンティーの大切なところを覆っている部分だけ、指を使って横にやると、いきりたった男根を一気に差込んだ。 |
「んんっ」 大きな声はだせないと思う加奈。 しかし、いつものように声が漏れてしまう。 雅人は男根を抜き差しすることが容易なように、加奈の方足を持ち上げて、腰を動かす。 「あっ、あんっ、あっ、あっ」押し殺したような声でそれでも甘く聞こえる加奈の喘ぎ声。 あそこを突き上げられるたびに、腰のあたりに切ないものが駈け抜ける。 「はぁ、はぁっ、はっ」 雅人もいつもより興奮したのだろうか、息をあらくして、加奈のあそこを突き上げる。 「か、加奈っ、いいよこれ、はぁ、はぁ」 雅人は加奈の耳元で言った。 「んっ、んっ、んんっ」 加奈はそれを聞いても喘ぐだけであった。 「もっ、もういきそうだ、くっ」 雅人が男根を引きぬき、加奈のパンティーにそれがどっとかぶった。 「はぁはぁはぁ」 雅人は片手で加奈を抱き、もう片方の手を塀につけて、息をあらげている。 「まっ、雅人くん、見つかるといけないから」 加奈が自分の家の2階にある、弟の部屋に電気がついているのに気がつくと、慌てたように言った。 「あっ、ああ」 加奈から少し離れて、身だしなみを整える雅人。 その後数回であったが、二人は加奈の家の前で行為を楽しんだ。 時には、加奈を塀に手をつかせて立たせて、後ろから男根を差込むこともあった。 加奈も外で行為に及ぶことに対する興奮と快感のようなものが芽生え初めてきていたが、家の人間に知られるのではないかという不安もつのりはじめてきた。 「ねぇ、私の家の近くでするのやめない?」 「なんでだよ」 「だって、家の人に見られたら」 「でも、加奈の家の側が一番安全だと思うんだけどな」 「そっかな」 「うーん、他にどっかあるかな?」 別段、思い浮かぶところもなく、少し考えはじめる雅人。 「あっ、そうだ、あそこだったらいいよ」 加奈が急に思い出したように雅人に言う。外ですること自体にはすっかり抵抗がなくなっていた。 「どこだよ」 「用水路の水門の上ならいいかも」 「ああ、あそこならいいかもな」 「でも、加奈よくきづいたな」 変なことに感心され、少し照れ笑いを浮かべる加奈。 |
加奈の言っていた水門のある用水路岸は両岸とも舗装がされていなく、車は通れなくなっている。そのため、通る人といったら、せいぜい犬の散歩をさせる人ぐらいのものであった。 そして、その道は電灯のある道からも遠いことと、水門の管理場は歩く人の目線から高いこともあって、人がそこにいるとは思われないような場所であった。 翌日の夕方、二人は早速その場所に行ってみる。 水門の入り口までくると、階段がついていた。 その階段の手摺と手摺の間にはチェーンが一本かけられてあっただけで、誰でも簡単に上へ行けるようになっていた。 あたりを見まわす二人。 人気のいないことを確認すると、雅人はチェーンを乗り越え、加奈はチェーンをくぐって中に入った。 階段を登りながらも、あたりを見渡す二人。 天辺までくるとどちらからともなく、むさぼるように抱き合い、唇の中の舌を絡めはじめる。 ここならどこからも見えない。誰かが来ても物音でわかる。安心感からか、加奈もこれまでになく激しく舌を動かした。 雅人はいつものように、加奈の一番敏感なところを刺激しはじめる。 「あーっ、んんっ、あっあんっ」 加奈はなぜか今日は大きく声をあげた。 なにか開放的にでもなったかのように声を大きくあげた。 それは、水門の横を通る調水路を流れる水の音のおかげだったかもしれない。 その音は以外に大きかった。 それがいっそう加奈を解放的にしたのかも知れない。 耳元に聞こえる、初めてきく大きな甘い喘ぎに、雅人の男根が一層熱くなっていく。 「はっ、はっ、はっ」 雅人の息もいつもより激しい。 「うっ、も、もうだめだ」 引き抜かれた男根から、いつものように白濁が飛び散った。 |
時には場所を変え、外での行為を二人は、雅人が卒業するまで続けた。 だが、二人は雅人の卒業と同時に別れ、2度と会うことはなかった。 加奈は時々、雅人とのことを懐かしく思い出す。あれは一種の熱病のような恋だった、と。決定的な破局などなかったのに、雅人の卒業が転機となり、若い恋に終止符がうたれてしまった。 けれど、決していいかげんな気持ちではなかった。真剣だったし、必死だった。 しばらくの間は二人とも新しい恋をする気にはなれなかったが、やがてそれぞれに恋人も出来た。 けれど、これほどまでに熱く興奮したはずの、外での行為をすることは二人ともなかった。 無意識のうちに、加奈は「雅人さんだったから」と思い、雅人は「加奈とだったから」と感じている。確かにあの青春の瞬間は二人だけの特別な恋愛だったのだ。 それから10年経った今、雅人は毎日の平凡な日常にいやけがやす度に、蒼かった二人の熱い喘ぎを思いだすのであった。 |
=完=