みなさん、こんにちは。「黄金丘陵の古い寺院」も、無事、連載終了しました。 うん、よし! 「遥かな…」も「ロシアン…」も「四季…」も「語り部…」も「…咲夜」も、いつ終わるかわからないし、そんなんばっかりが掲載されてちゃ困りモンだし(何に困るんだ?)、適度な長さで適度に完結するお話もひとつくらいはないとな〜、ってな感じで、このへんの感覚は「青空」と同じなんだけれど、まあとにかく終わりました。 ていうか、ひとつの成立した作品が、徐々にならんでいくって、サイトやってる本人にとっては、これもまた楽しみのひとつなんですよ。 実は「風の予感」などもまた始めたいなと思ってるし、「杜の庵」なんか既に続編が存在したりするし。このふたつの作品については、「完結」でも「連載中」でもなく、「未完」なんていう紹介の仕方にしようかなとも思ったりしますが、それだと途中で放り投げられた作品のように受け止められても困るし、ねえ。 |
おっと、ここは「黄金丘陵…」のあとがきでした。 でも、その前に、もうひとつ。 うちの職場は宿屋なんですが、ここにたくさんの漫画を置いています。最初は安売りの古本屋で買ってきて置いてたんですが、そうして徐々に本が増えていくと、「あげますよ。捨てるに捨てられないし、二束三文で古本屋に売るくらいなら、大勢の人に読んでもらえたらその方がいいし」てな具合で、結構漫画本が集まってきました。 僕も「自分が欲しくて買う漫画」と、「お客さんのために買ってくる漫画」は区別していたんですが、我が家がもう限界になりまして。最初、「職場に持っていって、誰かわからん人に乱雑に扱われて、本が朽ちていくくらいなら、古本屋に叩き売るぞ」と妻には言われていたのですが、「こんなに漫画本ばっかりになって、どうするのよ」と最近では妻も意見が変わってきたので、「じゃあ、持っていくよ」と。 ただ、もし自分がオーナーになって宿屋するようになったら、それらの本は取り戻したいので、特別なマークをつけて所有権を主張しながら、ロビーの書棚にならべていっています。 しかし、あくまで個人趣味の漫画ばかりなので、果たして一般ウケするかどうか。しかも、男性向けのものならそれなりに人気作品もわかるけれど、女性向けではよくわからない。僕は作家買いするので少女漫画もある程度は持っているけど、あくまで個人の好みなわけで、若い女性のスタッフに「いま、どんな漫画がウケてるの?」ときくと、「NANA」なんだそうで。 さすがに人気作品だけあって、書店では簡単に見つかります。 そうかあ、りぼんマスコットコミックスかあ。かなり昔、「清原なつの」さんの本を買いあさって以来、りぼん系とはご無沙汰だったなあ。そうそう、清原なつのさんって、すごいですねえ。誰しも「単行本未収録作品」てのがあるんだけれど、ついにこの方の漫画、全作品が単行本化されてしまいました。ぼくはどうやら一部所持していないようですが、ほぼコンプリートしています。「飛鳥昔語り」なんて、おそらく古書店でもまずは手に入らないようなファン垂涎のコミックスもあって、これも書棚に並べますよ。 さて、「NANA」。うん、オッケー。まだ完結していないようですが、いい作品です。 しかし、衝撃的だったのは、「NANA」ではなく、同じ作者による「ご近所物語」との出会いでした。実はこの作品、アニメ化されていて、僕はそのアニメを数回観る機会があったんです。 原作も知らないし(原作があるとも思っていなかった。アニマックスかキッズステーションで再放送してくれ〜と、祈るだけだったのだ)、最初から観ていたわけじゃないから、ストーリーも設定も何もわからない。でも、なんか惹かれるものがあって、チャンネルを変えたりすることなく、どんどん引っ張り込まれていったのです。 まさか「ご近所物語」がコミックスで出てるなんて思いつきもしなかったから、探しもしなかった。 それが手元に購入できてしまったわけだから、これはもうハッピーですよねえ。 キャラクターたちがみんなそろって妙にぶっとんだ格好してて、最初はアパレル系の専門学校かなあとか思ってると、どうも高卒後の年齢にしては幼いし。放課後ならば確かにコギャルなファッション。でも、そんな格好で通学する高校生はおらんぞ、みたいな。で、なんか自分の将来に向かっての夢、みたいなことにしても、恋愛にしても、シリアスで少し青くてなんだかとっても好感の持てる作品で。しかし、大学生の年齢なら、もう少し大人っぽく割り切らないとナンだよなあ、てな感じで。 う〜ん、設定はどうなってるんだ??? ま、そのあたりはコミックスを手にとって氷解したわけですが、期待以上の作品で、ちょっと興奮していたりするわけです。多分僕は「NANA」よりも「ご近所」の方が好きなのでしょう。 |
さて、あとがきと何の関係も無い近況報告を終えまして。 「黄金丘陵……」には、連載終了とほぼ同時に感想のメールをいただきました。厳しいご指摘を含んだメールで、めちゃくちゃ「じ〜ん」と来ました。 そうか。厳しい指摘というのは、「隅々まできっちりと、真剣に読まないと、書けないんだな」と感じたからです。本当にありがとうございます。この場を借りて、お礼申し上げます。(あ、いや、もちろん私信でもお礼申し上げていますよ、はい) そのメールには、「テーマとして……ということが言いたかったのでしょうけれども……」というようなことも書かれていて、これには本当に申し訳ないことをしたなと恐縮するより他ありません。 おそらく、メールを下さった方のおっしゃる「テーマ」は、間違ってはいません。きっと、その通りなのでしょう。 「おそらく」とか「きっと」と書いたのは、実は僕はそこまで明確なテーマ性をもって取り組んだ作品ではなかったからなのです。 以前、北欧のユースホステルを舞台にした小説が「小説ジュニア」という少女小説誌(月刊)に掲載されました。コバルト文庫の母体になる小説誌で、現在は「コバルト」という雑誌に生まれ変わっています。 愛読していたと言うほどでもなく、毎月買っていたわけではありませんが、時々僕の大好きな「辻真先」さんの作品が掲載されるので、手にしていたのです。他には、氷室冴子、新井素子、藤本ひとみ、赤川次郎、久美沙織などという作家陣でした。 その中に混じって、「北欧のユースホステル」舞台の作品があったのです。作者をもう記憶していないのですが、おそらく津山紘一さんだと思います。 この作品より数ヶ月前に同じ作者、同じ挿画家により「ベルリン物語」というのが掲載されていて、おそらく評判が良かったのでしょう。同じような雰囲気でもう一本、という発注があったのではないかなと思います。 「ベルリン物語」は、まだ「壁」のあったベルリンが舞台。西ベルリンには東を見るための物見台のようなものがあって、そちら側から男性が、東にいる恋人(?)に会う、というストーリーです。当時、知識が無く、従って物語りがなんとなく矛盾していることにも気がつかなかったのですが、主人公の男性は「そうだ、西と東は地下鉄でつながっているんだ」と思い出します。 そして、声が届かないから、壁の向こうの女性にジェスチャーで、「今から地下鉄でそっちへ行くから」と伝えます。(だったら、物見台などで会わずに、最初から地下鉄に乗ればいいのだ。東から西へは自由にいけなくても、西から東へは自由に行けたわけです。← この変がなんとなく矛盾だよな) しかし、壁の向こうの女の子は勘違いをして、感極まって、壁を乗り越えてしまいます。(いや、女の子が簡単に乗り越えられるような高さじゃない ← これも妙)。あるいは、壁のない所(ブランデンブルグ門とかかな?)を、無理矢理通り抜けようとしたのかもしれません。 で、結局射殺されてしまい、倒れたその子のところに壁のこちら側の男性も駆け寄って、確か二人とも射殺されてしまう、と言う物語です。 こう書いてしまうと、なんだかすごく「あっそ〜」で終わってしまいますが、これは僕の記憶が不確かなのと、説明が陳腐なせいです。どうしてこの男女がそもそも惹かれあったのか、も忘れてしまっています。 そして、実際の作品は、なんともいえず甘く切なく情感豊かで、ぐいぐい引き込まれたのです。机の前にきちんと座って読んでいるのか、寝転がって読んでいるのか、そういうこともわからなくなるくらいに、僕はまさしくそのとき、ベルリンの地にいたのです。 しかし、物語の結末をきちんと覚えている「ベルリン物語」と異なり、タイトルも忘れてしまった「北欧物語(仮)」は、僕の中できちんと像を結んでいません。 覚えているのは、駅からユースホステルへ向かう「この先に本当に町や宿があるのだろうか、もしかしたらどれだけ歩いてもどこにも辿り着けずに野垂れ死にするんじゃないだろうか」というような長い道のりと、何日間か男女数人で魚を釣ってそれを食べたりして楽しくしかしどこか物悲しくすごしたユースホステルの断片的な場面だけです。 これを自分なりに再構成して、新しい物語として甦らせてみたかった。これがそもそものきっかけだったんです。このあたりは「思い出ライブラリー」の執筆動機とほぼ同じです。 もちろん物語りは完全オリジナル、盗作をしようにも覚えていないんだからしようがない。甦らせるといっても、旅先恋愛紀行な作品は、僕らしい空気やリズムがもっとも生かせるジャンルですから、力を込めて、かつ相当楽しみながら、書きました。元作品をもし手元にお持ちの方がおられれば、比べてみたください。よもや「北欧物語(仮)」がモチーフになっているとはお気づきになられはしないでしょう。 |
こんなにダラダラと長ったらしく、あとがきを書くつもりはありませんでした。 こんなことになってしまったのは、「ご近所」のせいです。少女漫画の場合、本文作品内のページに、タテナガのCMが入ります。これはコミックスにしたとき、空間になってしまいますから、ここに作者がいろんなことを書いていたりします。 本の巻末にありがちな居住まいを正した「あとがき」と違い、このスペースはカジュアルなことが多く、「ご近所」の矢沢あいさんのそれが、なんと楽しく愉快なことか。語り口調だけで、「お、峰とおんなじ関西人やんか」とわかってしまい、ますます親近感を持ってしまいました。 ご本人がおしゃべりなのか、それとも本の中のキャラクターなのかは存じませんが、その楽しいおしゃべりに影響を受けてしまい、月刊誌の原稿を書かねばならんのに、ついついこちらを先に書いてしまいました。 |
うん。おかげでキーボードを打つ指の動きも軽やかになってきました。(一昔前なら、ペンのスベリが良くなった、とでも言うのでしょうかね。しかし、口が滑る、とはいい意味では使われませんね) というわけで、今から原稿料をいただけるお仕事をいたします。では、みなさん、ごきげんよう。 このあとは、多分、「四季」を集中的に書きながら、他の連載もダラダラとって感じでしょうか。 |