智史と幸絵はそれほどひろくもないソファーベッドで身を寄せていた。普段は部員たちが座っておしゃべりなどをしているが、練習中に気分が悪くなった生徒などが出たらここに寝かすのだ。 二人とも裸で、智史は仰向けで顔だけを私のほうに向けていて、幸絵は身体の右側面を下にして正面を私のほうへ向け、肘を突いた右手で頭をグイと持ち上げていた。 私は昨夜、なかなか寝付かれなかった。部室に残ったこの二人が繰り広げているであろう痴態を思い浮かべると、我慢ができなかった。オナニーに疲れ果てて眠り、朝、目が覚めてまた自分でした。自分のとてもよく知っている人がセックスの快感に身を沈めている、それだけのことがわたしの肉を切なくよじれさせるのだ。 「よく寝たわ」と、幸絵が言った。 「そう、よかったわね」 しゃべってから、自分の口調がトゲトゲしいことに気が付いた。 わたしには彼がいる。求め、求められる関係だ。智史と幸絵がどれだけ激しく狂おうと羨んだり嫉妬したりする理由は何もないはずだ。でも、それは理屈だ。まもなく始業時間になるというのに、熱い燃え盛るような一夜を過ごした二人がいまだに全裸のままその余韻に浸っているという事実が、わたしを平静で居られなくしていた。 「何回したかしら。何度も何度もイカされたわ。彼も何度も出したの。そのうちわけがわからなくなって、どこか遠くへ放り出されてしまったところまで覚えてる。で、そのまま寝ちゃった。さっき、起きたところ。彼もそうよ、ほら、その証拠に…」 幸絵は問わず語りに興じたかと思うと、智史のそそり立った幹に左手を添え、根元をそっとつかんだ。 「朝立ち、って言いたいの?」 「そう。長くて素敵」 確かに智史の幹は長い。わたしの彼のよりも3センチは確実に長い。とはいえ彼だってそれなりのモノを持っている。十分な前戯なしで奥深くに突っ込まれて何度か吐きそうになったことがあるくらいだ。もちろん感じ始めたらそれがたまらなく良くなってくる。膣壁を激しく摩擦されながらぐいぐいと子宮口が押し上げられるような感覚にわたしは声をあげまくる。同時に乳房をわしづかみにされたり乳首やお豆をつままれたりするともうどうしようもなくなってしまう。 子宮口なんかに本当に性的な快感があるのかどうかわたしにはわからないけれど、気持ちのよさだけなら、お豆への刺激のほうが確実にわたしを高めてくれる。なのに、子宮口を押し上げられることで感じてしまうのは、きっと彼に本能のままに攻めまくられているという事実がわたしを官能に導いているのだと最近思うようになった。 近頃は以前のあの吐きそうになる感覚が味わいたくて、前戯なしで無理やり挿入してもらうこともあるのだけれど、そういうことを考えることで既にわたしは濡れ始めてしまうから、セックス初心者の時のようなわけにはいかない。充分に濡れてまとわりつくような感覚とはまた違い、まだ硬い肉を無理やりこじ開けられる快感は得られるし、彼もそれを喜んでくれるから、それはそれでいいのだけれど、もっともっと長いのでお腹の奥深くつきたてられてみたいとも思う。智史のそれはまさしくその欲求を満たしてくれそうだった。 (欲しい…) 「ねえ、トーコ、あのレモンティーを取ってくれない? のどが渇いたわ」 幸絵はわたしを見て、それから視線をはずした。彼女の視線を追う。そこはテーブルの上で、小ぶりなペットボトルに黄金色の液体が半分ほど残っていた。ラベルにレモンティーと書いてある。幸絵に従うことに反感を感じながらも言われたとおりにしてしまう。歩くごとにわたしの股間がジュルジュルと音を立てじっとりと濡れていることがわかる。 幸絵は上半身を起こしてわたしからペットボトルを受け取ると、2・3口飲んだ。そして次は飲み干さずに、液体を口の中に保ったまま智史と唇を重ねた。口移しで飲ませようとしているのだ。智史の唇の端から一筋の液体がほほを伝って流れた。妙に艶っぽかった。そして、智史の喉が動いた。 何度か口移しで飲ませるうち、ペットボトルの紅茶はほとんどなくなった。最後の一口を幸絵は自分で飲み切って、空になったペットボトルをわたしに放って手渡すと、また彼の幹に手を添えた。 今度は右手である。しかもやさしく上下に動かしながら、先端に唇を寄せ、やがて口に含んだ。視線だけをわたしに向けてうっすらと笑った。 智史はウッと小さな声をあげて顔をしかめた。 やりすぎで痛いんだろうとわたしは思った。 わたしにも経験がある。挿入したままで何回出来るか、そんなことをわたしと彼のどちらから言い出したのだっけ。その日は確実に安全日だった。コンドームを装着したまま入れたままで何度も何度もすることは出来ない。 そうだ、思い出した。わたしが「今日は絶対安全だから、生で中出ししていいよ」と言ったのがきっかけだった。「じゃあ、入れたままで何回できるかやってみない?」と彼が提案し、わたしがそれに乗ったのだった。 入れたまま、というシチュエーションにわたしは異常に興奮した。 何度か体位を変えながら、彼が3度目にわたしの中に出して、そのままでしばらく休憩しているときだった。「ちょっと、なんとなく、痛い」と、彼が言ったのだった。出し終えるとすぐに腰を動かし始めた彼だったけれど、3回目から4回目へはインターバルをとった。わたしも腰がぐんにゃりしていたけれど、これまでになく高く昇りつめていたので、さらなる興奮を求めていた。 彼は正直なところこれで終わりにしたかったのかも知れない。けれど、わたしが入れたままの状態で彼にしがみついて動こうとしなかったので、休憩のあと4回目に挑んでくれた。 そして、5回目。わたしも疲れきっていた。けれど、連続してイキまくった。そして、痙攣を起こして放心状態になった。意識はかろうじてあったけれど、身体が思うように動かなくなった。それを機に彼はわたしから離れた。 ふたりとも裸のままで長い間ぼうっと横たわっていた。 どれくらいそうしていただろう。ゆっくりと上半身を起こしたわたしの目に、ぐんにゃりとした彼の幹が入った。わたしを存分に愉悦の極限にいざなってくれたそれがとてもいとおしく思え、わたしは彼のモノを手にとり、やさしく撫でた。 長い間休憩していたので、彼の幹はすぐに反応した。けれど、「いててて」と、彼が叫んだので、わたしは手を離した。 今朝の智史は、時々つらそうな声を上げながらも、それでも快感と欲望が勝っていたのだろう。やがて幸絵の口の中に放出したようだった。 これ以上ここに居てもしょうがないとわたしは思った。だから、部室を後にして、教室に向かった。 1時間目が始まる直前にマッキーが廊下を走ってこちらへ向かってきた。遅刻を免れるためだろう。わたしの彼、上野真木。以前は「女みたいな名前」とよくからかわれたらしいが、わたしがマッキーと彼の事を呼ぶようになってから、お気に入りになったとのことだった。「よっ」と片手を上げてわたしの前を通りすぎようとするのをわたしは引き止めて、放課後デートしようと約束を取り付けた。 「俺もやりたいなと思ってたんだけど、いい?」 「うん。わたしも今日ちょっと朝からムラムラしてるから、ねちっこいのしてね」 チェリーボーイとバージンガールだったわたしたちが、今は平気でお互いの性欲について語り合っている。 |