語り部は由美
高校3年生 塾とラブホ(3)





 わたしの恋愛はすごく落ち着いていた。
 これまではなんだかんだ言って、怒涛のように流れていた、と言えるかもしれない。でも、今はすごく落ち着いている。ゆったりした流れの中に身をおいているかのようだ。
 千代田君とはようやくおフェラの仲になれた。彼はわたしの口の中に出すことを覚えた。学校帰りのひと時を二人で過ごすだけで、親のいない時を見計らってどちらかの家に行くとか、ラブホに入るとか、そういうことはまだない。だから、最後の一線は越えていない。けれど、公園のベンチなんかに並んで座ると彼はフェラを求めてきたし、同時にわたしのことも可愛がってくれた。服の裾を捲り上げてブラをずらしオッパイを揉んだり吸ったりしてきたし、パンティを脱がされたその奥に指を這わせたり、時にはスカートの中に頭を突っ込んでアソコを舐めたりもしてくれた。
「あ、あん、あああーん、もっと、もっとよお」
 私が喘ぐと彼は「そんなに気持ちいいの?」と訊いてくる。
「気持ちいいわよ。もっと、もっとおおおん」
 ただ、最後までの経験のない彼にとって、野外での挿入は思いもよらないことらしく、イチャチヤ触りっこ以上へは進もうとしない。夜の公園なら場所はいっぱいあるのにね。だけど、そうなるのも時間の問題のような気がしたし、わたしは焦らないことにした。
 身体の方は市場先生が満たしてくれていた。市場先生にとってわたしはセックスの道具だったけれど、わたしにとってもそうだから別に構わなかった。千代田君だけでは身体はきっと満足しなかったろうけれど、市場先生のおかげで火照った身体をもてあますと言うことはなかった。もっとも、オナニーはしてるけどね。
 そうそう、オナニーと言えば、千代田君に「わたしのこと考えながらしてる?」って聞いたことがある。
 彼は首を振り、「とんでもないよ」と言った。
「じゃあ、わたしで、して」
「あ、え・・・、うん。いいよ」
 彼はわたしを犯すシーンを夢想しながら射精しているのだろうか?
 うーん、それはなかなか素敵だし、彼はそのうち我慢できなくなってわたしを襲ってくるだろう。それまで、少しの我慢だ。
 
 問題があるとすれば恵子のことだろう。
 市場先生は塾の女の子何人にも手を出していて、わたしは彼氏がいるからそんなことどうでもいいのだけれど、その相手の一人である恵子が心揺れている。市場先生の想いはわたしよりも恵子に多く注がれているのだと彼女は思っていて、それがちょっとやっかいだったりする。彼女自身は嫌いじゃないし、わたしは市場先生には本気になったりしないから、わたしのことなんか無視してくれていいのに。
 梅雨になり、千代田君と公園のベンチで過ごす機会も減ってきた。そんな日はファーストフードでドリンクだけを注文して、たわいもないおしゃべりをして別れる。なんだか普通の高校生の恋愛みたいでちょっと嬉しかった。ここぞという機会を虎視眈々と狙って、チャンスがあればやっちまおう、なんて様子が千代田君からは伺われないのが普通の高校生とは違うかな、なんてことを思いながら。
 そんなある日のこと。
 その日は塾の日だったので学校が終わるとわたしは千代田君に「バイバ〜イ」と告げて、少し急ぎ足で傘をさしながら家に向かっていた。
 雨の日は早足で歩くのは嫌だ。水しぶきが跳ね、裾を濡らすから。どうせ今日は市場先生とエッチする日じゃないし、こんな状態なら傘をさして自転車で塾へ行こうかな、などと考えていた。
 後ろから近づいてくる車の音。車道の路面はたっぷり濡れており、車が横を通過すれば水しぶきを浴びせられるかもしれない。幸い車はマナーをわきまえているのかゆっくり走っていて、なかなか接近してこない。パン屋の軒下にわたしは逃げ込み、車をやり過ごそうとした。
 お店の自動扉が開く。
 店員のお姉さんは最初から私が客ではないのを見抜いていたようで、「また雨宿りか」とでも言いたげな陰鬱な表情でこちらをチラリと見た。わたしはお店に背を向け、車道側を見る。
 こうなると、歩行者に気を使ってゆっくりやってくる車が恨めしい。さっさと通り過ぎてくれればいいのに。
 そう思いながら車をじっと見ると・・・あれ?
 市場先生の車に似ている・・・やっぱりそうだ。
 塾へ出勤するところなのだろうか。ラッキー。このまま塾まで乗せていってもらおう。一瞬そう思ったが、やっぱりだめだ。一度帰宅して着替えないと。塾のテキストも持っていない。
 別に隠れる必要もないのだけれど、わたしは「わたしに気付かずこのまま通り過ぎて」と祈った。会話するのが単に億劫だったから。傘で顔を隠すようにした。
 けれど、車はわたしの目の前で停車した。
 助手席のウインドーが下がり、先生がわたしの名前を呼ぶ。
「乗って」
「え、でも、まだ塾の用意が・・・」
「話があるんだ。すぐ済む。家の近くまで送るから」
 市場先生はちょっといつもと違ってなにやら深刻な表情をしている。台詞もせっぱつまった感じだ。なんだろうと思いながらわたしは自分でドアを開けて助手席に乗り込んだ。半分すぼめた傘がうまくたためない。でも、先生はそんなことお構いなしに、「シートベルト」と言った。わたしは言われたとおりにした。車はすぐに発車する。
 中途半端に閉じられた傘がわたしの足元を濡らし始めていた。
 
「すまないが、もうあんな風には会えない」と、市場先生はハンドルを握って前方を見ながら言った。
 車は便利だと思う。運転しながらだと、相手の目を見ずに言えるからだ。ちょっとずるいよね。
「はい」とだけわたしは答えた。
 下校途中にわざわざ車でピックアップされた、と思うとそれだけで面倒な気分になっていた。しかも、いつものエッチ全開の先生でもない。厄介ごとが介在しているような予感を感じた。だからわたしは、素直に「はい」と言った。
 惜しいな、という気持ちは正直あるけれど、いつまでも続けられる関係でもない。どこかで終わるのなら、今終わってもいい。
「それで、いいのか?」
「なにか事情がるんでしょう? だったら仕方ないじゃないですか」
「意外とクールなんだね」
「『嫌です。別れないで下さい』って言って欲しかった?」
「いや、それは、困るんだ」
「だったらいいじゃないですか。あ、そろそろ家の近くです。ここでいいです」
 車は路肩に寄って止まった。
 シートベルトをはずす。降りようと身体を起こす。すると手を掴まれた。このまま身体を引き寄せられてキスされるのかと思った。が、そうではなかった。未練たっぷりにキスされるほうがよほどましだった。
「これまでのことも、無かったことにして欲しい」
「はあ?」
 意味がわからなかった。二人のこういう関係に終止符を打とうという話は判る。けれど、これまでのことを「無かったことにする」とはどういうことだろう?
  「先生なんですから、わたしにも理解できるようにおっしゃってください」
 嫌味な言い方をしてしまった。だって、わたしの見えない所で何か策意が働いているような気がしたからだ。ずるいことをされようとしている。そう直感的に感じた。
「わかった。説明するよ」
「待って。先に車を動かして。ここだと、近所の誰に見られるかわからない」
「そうだな」
 市場先生は車を出した。今度はシートベルトに関する注意を受けなかった。わたしは自主的にシートベルトを締めた。

 それは、こういうことだった。
 市場先生は塾に通ってくる女子高生の何人かに同時に手を出している。わたしは最初から「どうせそんなヤツだろう」と思っていたから、その事実を知っても「ああやっぱり」と思う程度だったが、そうでは無い子もいた。その子が市場先生のご乱行に勘付いた。
 やっかいなことに、妊娠・中絶という経路も辿っているという。
 そして、「誠意ある態度を示してくれないのなら、ひどいことをされたと、塾にいいつける」と大騒ぎをしているのだそうだ。
「誠意を見せたらいいじゃない」
「とても、呑める条件じゃない」
 法外な慰謝料でも請求しているのだろうか。それとも結婚でも迫っているのだろうか。
 話がこじれて最悪の状況になる可能性も高く、その時に彼女以外の女性関係が次々と暴かれたら事態がさらにややこしくなるから、これまでのことは無かったことにして欲しい、つまり、ふたりの中を口外せずにいてくれ、ということだった。
「必要なら、それなりのお礼もする」
「そんなものいらないわよ」
 ばかばかしくなって、わたしは台詞をはき捨てた。
 
 この前のコーサンといい、わたしが身体を重ねた相手が次々ややこしいことになってゆく。
 モラルのない乱れた関係、爛れた関係というのは、維持するのがなかなか大変だなあとわたしはため息をついた。
 でも、よく考えたら、そんな関係を維持する必要は今のわたしには、ない。だって、わたしには千代田君がいる。セックスしたいのなら彼とすればいいのだ。
 翌日の放課後。
 今日は千代田君とデートの日だ。いつもより多めのお金を持って家を出た。梅雨のあいまで、いつもどおりのデートなら公園でいちゃいちゃして終わってしまうだろう。わたしは思い切って「ホテルに行こうよ」と誘うつもりだった。お金がないと言われれば全額出すつもりだ。最後までの関係を持つことにいまさら千代田君が躊躇するとは思えない。
 一度やっちゃえば男の子なんてどうせ夢中になるに決まっている。
 
「二人っきりになれる所へ行こうよ」
 わたしは千代田君をこう言って誘った。
「由美ちゃんから先に言われちゃったね」と、彼は言った。

 え? それって?

 彼の方も「そろそろ」って思っていたんだ。やったね。
「ごめんね。わたしから言っちゃって。自分から誘おうと思っていた?」
「いいよ、別に。こないだから、どうやって切り出していいか悩んでたんだ。きっと由美ちゃんに言われなければ、今日も逃していたかもね」
 わたしはとてもとても暖か〜い気持ちになった。千代田君と手をつないで歩く。ふたりの足は自然とラブホテル街の方へ。雨は降っていないけれど、どうやら天気は下り坂。空がどんよりと曇ってきた。
「一度、家に帰らなくてもいい? 制服だし」と、千代田君。
「別に、いいんじゃない?」
「誰かに見られるかも」
「見られてもいいよ」
「噂になっても?」
「わたしは平気。キミは迷惑?」
「全然」
「じゃ、いこ」
 あ、そうだ、コンドーム。
 常時持ち歩いているけれど、学校には持ってきていない。千代田君は用意しているだろうか? ホテルの部屋に用意してあればいいんだけど。
 ま、いっか。考えていても仕方ない。
「ここにしよ」と、千代田君が言った。
「うん、いいよ」
 入る場所を選びかねて何度もホテル街を往復したりなどしないだけ、立派だよ。
 
 お風呂にお湯を張りながら私達はテレビのスイッチをつけ、ソファーに座った。会話は弾まないけれど、隣に千代田君のぬくもりを感じるだけでいい。
 千代田君が冷蔵庫から缶ドリンクを取り出している間に、わたしは部屋の中をチェックする。ベッドの枕元にティッシュペーパーの箱と灰皿とコンドームがふたつあった。
 だけど、すぐにやることがなくなってしまう。
 そっと腰に手を回して身体を倒しながらキスとかしてくれないかな、と思うけれど、ここまできたら千代田君に任せようと思う。
 彼はバスルームをチラリとのぞき、「まだだけど、もういいや」と言った。
 脱衣場なんてないから、彼はわたしの目の前で服を脱ぎ始める。ただし、後ろ向き。
 彼の全裸ってまだ見たこと無かったなあと、わたしは感慨にふけったりする。
 わたしはなるべく音を立てないようにそっと服を脱いで下着姿になると、彼の後ろから抱きついた。
「ねえ、一緒に入ろうよ。洗ってあげる」
「え? な、なんで? ・・そんな」
「イヤ?」
「イヤじゃ、ないけど・・・」
「今さら恥ずかしがらなくてもいいじゃん」
 わたしは彼の肩に顎を乗せ、彼のお腹の前にあるものを見た。緊張のあまりだろう、ついさっきまで小さかったと思われたそれは、半立ち状態になりつつある。
「ねえ、いいでしょう?」
 わたしは右手を彼の腰に当て、ゆっくりと前に回した。彼のモノに届く頃には、それは立派な状態に成長していた。
 カリの少し下を掴んで、根元の方へゆっくりと手を滑らせる。
「あ」
「なによ、驚かなくてもいいでしょ。いっつもしてるじゃない。フェラチオだってしてあげてるのに」
 その「いっつも」の様子が彼の脳裏に浮かんだのか、ペニスは一瞬にしてカチンコチンに膨張した。
 わたしは彼の左手を掴み、両足の間に導く。
 彼の手は最初遠慮がちに太ももの内側を撫でていたが、やがて指を一気に突っ込んできた。
「あ、いい・・」
 わたしは思わず声を漏らす。
「濡れてるよ。むちゃくちゃ濡れてる」
「だって、感じてるもん。ものすごーくエッチな気分よ」
 千代田君は絡み合ったわたし達の手を振り解いて振り返り、わたしをガバっと強く抱きしめた。わたしの下腹部に彼の大きく熱くなったものが押し付けられる。
 激しいキス。
 唇と唇がぐいぐい押し付けられ、前歯を割って彼の舌が強く挿入されてくる。
(あ、強引だ)
 ぬちょねちょと彼の舌がわたしの口の中を這い回る。舌と舌が熱くいやらしく絡まりあった。
 ぽんわりといい気分になるわたし。これがセックスに手馴れた相手だったら、きっとこのままやっちゃうんだろうな。湯船の中に沈められて合体? それとも、立ったままでとりあえず挿入?
 彼もわたしも、インサートのための準備はオッケーだ。ギンギンにそそり立ったおちんちんとぐっちょり濡れてぽっかり開いた膣。もうガンガン突き上げて欲しい!
 わたしは下半身がうずきまくっていた。
 でも、さらにエスカレートすることはなく、不意に身体を離した千代田君は、「お風呂」と言った。
 ま、いっか。
 
 仲良く一緒に湯船につかり、湯船からあがった。
「先に洗ってあげるよ」と、千代田君。
「んふ、わたしのこと、さわりまくりたいんでしょう」
 千代田君はわたしの台詞には何も答えず、タオルにボディーソープを含ませ始める。でも、わたしにはわかる。湯船の中の超接近密着で童貞君が平気でいられるはずなんてないのだ。わたしのように経験を積んでいてさえ平気じゃない。あ、もしかしたら、逆かな。細胞の一つ一つが快感を覚えているから、うずいてしかたない。
 だからわたしは、タオル越しに彼に触られるだけでのけぞりもんだった。
 彼の持つタオルが胸に差し掛かったとき、わたしは思わず「いや」と小さく叫んだ。
 怪訝な目で見る彼。
「あ、そうじゃないの。オッパイは、手で洗って・・・」
 彼は新しいボディーソープを自分の掌でこねて十分泡立ててから、わたしの胸にねめつけた。
 ぞくぞくぞく。
 指先と掌で彼は優しく丁寧に洗ってくれる。それは恋人への愛撫ではなく、とてもナイーブでデリケートなものを、傷めたり壊したりしないように扱っているかのようだった。
「あ、ふん」
 我慢出来ずに声を出してしまうわたし。
 腰がひくひくと動く。
「あう、ああん、あん」
 そのうち彼も、手の動きが早くなってくる。夕闇の公園でわたしのオッパイを執拗に揉みしだくときのように。
「あ、ああー、ああん、はああー」
 公園と違って遠慮なく声を立てることが出来る。
 わたしの前で胡坐をかいて座っている彼の棒は、直立を通り越して反り返っており、彼のお腹にピタリとひっついていた。
 そこにばかり目が行くわたし。
 気がついたら触っていた。
 わたしの太ももに落ちてきていた泡をすくって、泡と一緒に彼のモノを握る。
 シャボンだらけになっている彼のペニスをさすがにそのまま咥えるわけにはいかない。口でしてあげられない分、念入りに手でマッサージをする。シャボンのぬるぬるの他に、彼の先端からもトロトロとジュースがこぼれ出ていて、わたしの指がそれらをぐちゃぐちゃに混ぜてしまう。彼は悶絶しそうな表情。とても気持ちよさそう。
 くっちゅ、ぬちゃ、にちゃ。
 千代田君が「うう」と呻き声を上げる。わたしは彼のモノをきつく握り締めた左手をピストンさせながら、先端部分を右手の指先で悪戯をする。はちきれんばかりに膨れ上がったそれは苦しそうにひくひくしている。にゅ、にゅととロリとした液体が押し出され、わたしの指で塗りたくられる。
「ああー!」
 千代田君は歓喜の中にちょっと悲しげな音色のまざった叫び声をあげた。射精したのだった。屹立していた彼のペニスからは打上げ花火のように白濁した液体が噴出した。
 身を乗り出していたわたしの顔にもザーメンが浴びせられた。
 ほんの一瞬、放心状態のようになっていた千代田君は、ザーメンまみれのわたしの顔を見て、「あ、ごめん」と言った。
「平気よ。いっつもわたしに飲ませてるくせに、いまさら・・」
 わたしは笑いながらいった。
 口の周囲、下を延ばせば舐め取ることが出来る位置にも彼の液体が付着してしまったけれど、さすがにシャボン混じりでは舐められない。わたしは自分の顔と彼のペニスをお湯で洗って泡を落とし、硬度を落としかけた千代田君のおちんちんを口に含んだ。
 彼は再びパワーを取り戻した。
「ねえ、欲しい」と、わたしは言った。
「うん」と、千代田君。
「もう、ここで入れて・・・」
 わたしは四つん這いになってお尻を持ち上げた。
「丸見えだよ」
「うん、よく見えるでしょ?」
「恥ずかしく、ないの?」
「これまでさんざん見たり舐めたりしたくせに」
 そうは言ったものの、「恥ずかしくないの?」と訊かれた途端に強烈に恥ずかしくなった。
 身体がカーッと熱くなる。
 恥ずかしいことがとてつもなく耐え難かったのは、いったいいくつの時だろう。今では羞恥心が逆に興奮度を高めてくれる。
 わたしは顔を横に向けて頬を床につけ、さらに肩や胸も床につけると、床についていた手をお知りに回した。そして、ヴァギナの両サイドに指をそえてグイッと開いた。
 もっとよく見て、触って、そして、入れて!!
 子宮を中心に同心円状にうずきのうねりがグングン広がってゆき、膣がきゅんきゅんしている。
 ああ、ここに早くぶちこんで!
 彼のを受け入れたらわたしはきっと我慢できなくて腰を振り続けるだろう。わたしの意識とは関係なく彼のものを締め付けるだろう。
 ああ、わたしのをめちゃくちゃに掻き回してエ!!!

 興奮曲線をぐんぐん興奮させるわたし。でも、待っても待ってもちっとも挿入してこない千代田君。
 これまで彼は、日が暮れた公園でわたしのスカートの中に顔を突っ込んだりで、明るいところでわたしのおまんこを見たことがない。だから、思わず見入ってしまっているんだろうか。
 そんなことを考えながら振り向くと、彼のペニスは小さくなっていた。
 通常時の状態、というより「萎えていた」という感じだ。
 さっき出したせいではないだろう。わたしの手や口で、千代田君は2度3度と続けて放出したこともある。
 童貞君がいざその時になって極度の緊張からこんな状態になることがあるというのはよくきく話ではあるけれど、でも、千代田君はもう十分わたしとエッチなことをしてる。挿入の経験がないというだけで厳密な童貞とはいえない。
 そんな彼が、ダメになってしまうなんて・・・
 
 数日後、もう会うことが出来ないはずの市場先生から連絡があった。今日は塾のない日で、わたしは家で夕食を終えてゆったりした気分でいた。
 折り入って頼みがあるという。
「いったいいまさらなんの頼みなんですか?」
 ちょっと嫌な言い方をしてしまった。
「ごめんなさい・・・」
「いや、いいんだよ」
 市場先生によると、ついに問題の彼女が塾に訴えでたという。うーん、でもそれは「お気の毒」としかいいようがない。だって、身から出た錆だもの。遊べる女の子とそうでない女の子を見極めることが出来なかったのも先生が未熟だったからだ。
 そこで、女の子たちに次々手を出していたことがさらにばれるとやっかいだ。だから全員を説得しなくてはならない。
「だから、わたしは黙っていてあげるわよ。心配しなくてもいいわ。合意だったんだし、わたしも彼氏いるから、表沙汰にしたくないしね」
「うん。でも、そう言ってくれる女の子ばかりでもなくてね」
「それは仕方ないんじゃない?」
「すまん。そう言わずに手伝って欲しいんだ?」
「は、はあ?」
 手伝うって、何を?
「恵子ちゃん、知っているだろう?」
 先日、わたしと先生を取り合いした子だった。取り合い、というより、譲れと言われて譲っただけだったんだけどね。
「彼女が駄々をこねていて、キミからも説得して欲しいんだよ」
「どうしてわたしがそんなことをしなくちゃいけないの?」
「頼むよ。『騒ぎを大きくしてキミと僕の関係がばれたら、キミだってまわりにああだこうだ言われて良いことはない』とかなんとか、言ってやって欲しいんだ」
「それはわたしに関係ないでしょう?」
「わかっている。それなりのお礼はするよ。お願いだ。頼むよ・・・」
 消え入りそうな声。わたしは「仕方ないわね」と返事してしまった。既に何度も肌を温めあった先生からの頼み、断りきれなかった。

 先生は近くまで車で迎えに来てくれた。その車に乗り込み、恵子のところへ行く。車中では私達はまったく会話を交わさなかった。

 そして、事態は最悪の状態になった。
 わたしの姿を認めるなり、彼女の顔がみるみる険しくなっていくがわたしにはわかった。
「どうしてこんな子を連れてくるのよ!」
 恵子は激怒した。
 市場先生が口を挟む暇も与えず、恵子は私達のことを罵った。
「わたしとちゃんと話がしたいって言うから会ったのに。何よ、この子と二人連れ出会いに来るの? わたしよりこの子の方が上だっていうの?」  わたしがいても状況は悪化するばかりだ。わたしは黙って二人の修羅場に背中を向けた。

 とぼとぼ歩いて家に戻ったら、夜の10時になっていた。
 わたしは千代田君に電話をかけた。
 とりたてて用事があったわけではない。なんとなく声を聞きたくなったからだ。
 実はあの日、千代田君と二人でラブホテルに行き、上手くいかなかったあの日から、私達の仲がおかしくなりつつあった。
 学校であってもなんとなくよそよそしい態度をとってしまうし、言葉を交わしても会話が弾まない。わたしはさほど気にしていないつもりだったけれど、彼の方が大いに気にしていた。
 大丈夫。今度やったらうまくいくよ。そう言ってあげたかったけれど、失敗したことを蒸し返すことになるから、言えなかった。
「どうしたの。なんか、元気ないね」
 千代田君はわたしの様子がいつもと違うことにすぐに気がついた。
「うん、ちょっとね」
「どうしたの?」
「たいしたことないんだけど、友達関係が、ちょっとね」
「ふうん」
 千代田君は会ってくれると言った。
「こんな時間なのに、いいの?」
「いいよ。そのかわり・・・」
「そのかわり、なに?」
「ホテル、行こうよ。今度はうまくするからさ」
「うん、いいよ」
「あれからね、なんかもう、うずうずしちゃって」
「したくてしたくてしょうがない?」
「ん、まあ」
「わたしもそうよ。はやく千代田君と結ばれたい」