サークルの春合宿にわたしは参加しなかった。少しでも多く、直也との時間を作りたかったからだが、それだけじゃない。理由はもうひとつあった。 サークルの合宿では間違いなく乱交が行われるからである。乱交は嫌いじゃない。むしろ、大好き。リングも入れて、もはやなにも心配することなくセックスに没頭できる。にもかかわらず合宿を避けたのは、「直也だけにしておこう」と思ったからである。 キョウスケのように彼氏がサークルの中にいれば、内部事情を知っているから話が早い。わたしたちのクラブにはきまりがあり、本人が拒否すれば乱交しなくてもいい。だからもし、キョウスケが「いや」だと言えば、わたしだって他のメンバーとは交わったりしなかったし、キョウスケの存在自体が監視の目となって、雰囲気に流されることもないだろう。 わたしとキョウスケの場合は、恋人以外ともやりまくりたいという希望があったから、拒否しなかっただけである。 もちろん春合宿でも「新しい彼氏が出来たから」とわたしは乱交の場に加わらずにいることは出来る。でもそれはサークルのきまりであって、わたし自身はどうかというと、その場にいてセックスせずにいられる自信はまるでなかった。 これまでさんざんヤリまくっておいて今更一人の男に操を立ててもしょうがないとも思うけれど、合宿か直也かと問われれば、今のわたしには直也の方が大切だった。 |
学生の春休みというのはとりたててすることがない。わたしと直也は旅行に行こうと決め、アルバイトで資金稼ぎをすることにした。 これまでわたしは、さほどアルバイトをすることなく学生生活を過ごしてきた。遊ぶ金が男がかりだったからだ。単発のアルバイトと親からの仕送りで、学費や生活費はまかなえたし、それらを少しづつ貯めておけば合宿の費用も間に合った。 どこかへ一緒に行きたいね、とわたしが提案したときも、合宿のためにとっておいた費用をあてればなんとかなるのがわかっていたからだった。けれど、直也はそうではなかった。彼は親からの仕送りだけでは学生生活を送ることが出来ず、日ごろからそれなりにアルバイトをしていたのである。旅行をするための金など持ち合わせていないのだ。 「わたしも一生懸命アルバイトするからさ。ふたりで稼いだらなんとかなるよ」 彼はレギュラーでずっと居酒屋のアルバイトをしている。夕方から夜にかけてのアルバイトでないと、学期中は続けることが出来ない。それに加えて昼間は運送屋のバイトを始めた。 春は引越しのシーズンだから、人手が足らない。しかも、日払いが可能である。 わたしも昼と夜の2本のアルバイトをすることにした。昼は翻訳である。といっても、わたしのような素人にいきなりそんな仕事が舞い込むわけがない。クラスメイトのかおるが引き受けた仕事を一部回してもらったのだ。 かおるは「春休みは稼ぎ時」といっぱい仕事を引き受けてしまい、パンクしてしまったのである。かといっていまさら断れば信用にかかわる。将来その道に進みたいと考えているかおるにとっては、「通常では出来ないくらいの量をこなすことで信用を勝ち取る」というつもりもあったらしい。もともと彼女の仕事はプロダクションにも定評があり、大量に引き受けると彼女が宣言すると事務所も大喜びだったらしい。 夜は水商売だ。といっても、スナックである。風俗ではない。お客さんの隣に座って水割りを作ったりおしゃべりをしたり、時には一緒にカラオケを歌ったりと、その程度だ。時折お尻や胸を触られるけれど、客も心得たものでそれ以上のことをしない。 もっとも、毎日のように誘われるけれどね。 |
直也はいくばくかの着替えを持って、わたしのマンションにやってきた。 しばらく一緒に住むのだ。 朝、彼を運送屋の仕事に送り出した後、わたしは洗濯機を回しながら翻訳をする。午後からは出来上がった原稿を手にかおるの部屋を訪ね、ひきとってもらったりやり直しを命じられたり、いくつかのコツを教えてもらったりしてしばらく一緒に過ごす。 「わたしに指導するくらいなら、自分でやった方が早いんじゃない?」 「そんなことないよ。自分で書くのは大変だもの。ああだこうだと口先だけで言うほうが早いし、ラク」 「じゃあ、わたしみたいなのを何人も抱えて仕事をやらせたら?」 「そんなことしたら、私の取り分がなくなるわよ。私は翻訳プロダクションやってるわけじゃないもん。しがない翻訳者だもの」 かおるがわたしに回してくれた仕事は童話である。一方で彼女が手がけているのは、辞書を引いても載っていないような専門用語が頻出する学会の論文だった。 かおるの部屋を辞した後、わたしは買い物を済ませてマンションに戻り、翻訳の続きをしたり、ボーっとテレビを観たりしてすごす。 やがて直也が戻って来るが、シャワーを浴びてあわただしく出かけていく。一緒に暮らしていても夕食は別々だ。直也は居酒屋でまかないが出るし、わたしはスナックの客と一緒に飲んだり食べたりするから空腹を覚えない。 部屋に戻るのは直也の方が先だ。 バイトの連チャンで疲れて、私が戻ったときには眠っている。テレビも電気も付いたままだったりする。きっとわたしが戻るまで起きて待っていようとしていたんだ。そうするうちにいつの間にか眠ってしまったんだ。 そう思うとジーンとした。 もっとも、わたしのベッドに横になってテレビを観たりするものだから、そのまま寝てしまうのも無理はない。 一緒にいるのに、セックスなしかあ… わたしは少しだけ欲求不満を感じる。 直也とは出会ったあの日と、それからふたりでラブホへ行って愛し合い、旅行のことや春休みのことを語り合ったその2回しかセックスしていない。 経験は少なそうだったけれど、結構パワフルだった。淡白な男ではないはずだ。 きっと直也もたまっているんだろうな。 そんなことを思いながら、彼の横に身体を横たえた。 |
バイトの掛け持ちは、一晩眠っただけでは疲れがとれなかった。 翻訳の仕事は時間の自由が利くので朝寝坊しててもいいのだけれど、直也にはせめて朝食をきちんと作ってあげたかった。ふたりで一緒に食事をする貴重な時間でもある。 トーストと目玉焼きとコーヒーだけの簡単な食事である。せめてサラダやフルーツなどがあってもいいよなと思ったりするのだけれど、それでも直也は喜んでくれた。 「朝食を食べるなんて下宿して初めてだよ」 「あ、朝、食べるのが辛かったら、言ってね」 「いや、そういう意味じゃないって」 「わかってる。コーヒーだけでいいって言われても、ちゃんと用意するから」 直也を送り出した後、もう一眠りしようかどうか少し考えた。けれど、机に向かうことにした。翻訳は順調なペースで進んでいるけれど、なにぶん初めての経験だし、どこで行き詰るかわからない。できるところまでやっておこう。それに、汗を流している直也をうわべだけ機嫌よく見送って、そのまままた眠るなんて、なんだか裏切り行為のようで気が引けた。 絵本に出てくる単語やフレーズにそれほど難しいものはない。けれど、直訳したらやっぱり不自然だ。 中学校や高校では関係代名詞など「○○するところのもの」なんて訳したけれど、そんな日本語はありえない。しかも、読者層は児童である。日本語を置き換える作業をしていると作家になったようで楽しかった。 楽しくて飽きなかったけれど、気が付いたらあくびが出た。 授業中なら遠慮なく机に顔を突っ伏して居眠りするところだ。 コーヒーで気合を入れて、昨日やった分も改めて手を入れてみた。 「直訳は困るけれど、それなりの日本語になってたらとりあえずオッケーだから、最後までやってみて。そのあと、物語のリズムとかも考えながら、もう一度手を入れるから」 かおるにはそう言われていたけれど、気になった。 今日、手をつけた部分は昨日よりもそれらしくなっている。これとくらべると昨日の分には不満が残る。それに、通しで読んだときに文体が微妙に違っていて違和感を感じるのだ。 こうして書き直した昨日の分も含めてかおるの所に持って行ったら、眉をしかめられた。 |
「毎日そんなことしていたら、明日は3日分書かなくちゃいけなくなるわよ。そのうち、新しいことが出来なくなって、書き直しばっかりする毎日になるわ。とりあえず最後まで、そこそこの日本語で完成させなくちゃ」 そんなものかなあという思いと、そう言われればそうねという気持ちが半ばした。 「それに、ごめんね。最終的な全体調整をして書き直すのは、私なの。どんなに完成度の高いものを持ってこられても、私風っていうのがあるから、それに直さなくちゃいけないの」 かおるの仕事だと思うからよりよいものを提出しようと思っていたわたしは、ちょっとショックだった。 出版時に訳者として名前が出るのはわたしではなく、かおるなのだ。そんなことは承知の上だったが、「あなたはただの下請けなんだから、でしゃばらないで」と言われたような気がしたからだ。 わたしの表情の曇りを読み取ったのか、かおるが申し訳なさそうに付け加えた。 「ごめんね。でも、翻訳家を目指す人はたくさんいるの。その中で、ああさすがにこの人の訳書は違うって評価をもらうためには仕方ないのよ」 「うん、わかってる、謝ったりしないで」 「ありがと、でも、ごめんね」 かおるはその後、翻訳の作業を中止して、コーヒーを入れてくれた。 2人でコーヒーを飲みながら、かおるは翻訳のことについて色々話をしてくれた。わたしが訳した部分を指でなぞりながら、「たとえばここは、そうではなくて、こう訳すの。英語の文章作法と日本語の文章作法は違うからね」と解説してくれる。 「基本的に日本語の文章作法っていうのは、『こうしなさい』というのは少なくて、『こうしてはいけない』というのが主流だから、自由度が高いの。いけないことをしなければいいんだからね。翻訳家の命は外国語の能力ではなくて、日本語の能力なのよ」 熱く語ってくれたかおるだけど、わたしは頭の中では別のことを考えていた。 かおるは将来の道をしっかりと見据えている。その点、わたしはどうなのだろう、と。 こうして仕事を一生懸命していたって、所詮は彼とふたりで旅行へ行くため。旅行先ではセックス三昧で過ごすだろう。 生きるスタンスがかおるとわたしでは決定的に違う気がして、落ち込んだ。 |
スナックに出勤して、さっそくママさんに言われた。 「うちはサービス業だからね。サービス業っていうのは、お客さんを喜ばせてナンボなのよ」 それくらいは心得ているつもりだったが、昨日なにか失敗でもしただろうか。 そうたずねると、「そうじゃないのよ、由美ちゃん。逆に言うと、こうすれば『成功』とか『正解』とかっていうのはないの。直感的に瞬時に『このお客さんはこうしたら喜ぶだろうな』っていうのを判断しなさいってことよ。短期アルバイトの子にこんなこと要求するのは酷だけど、短期バイトでもプロなんだから、ね」 わたしは、はい、と返事した。 返事のよさにママさんは気を良くしたのか、具体的に説明してくれた。 「ほら、太ももにお客さんが手を置くでしょ。基本的にここはお触りの店じゃないから、そういうのはいけないことよね。由美ちゃんだったら、どうする?」 わたしはしばらく考えて、「太ももくらいだったら…」と答えた。 「そうじゃないでしょ? ここはお触りのためのお店じゃないんだから」 わたしは、そうですね、としか答えられなかった。 「私も含めて女の子はみんな短いスカートを履いているから、太ももといってもスカートの上からじゃないわよね。直接触られるわけよ。ちょっと手を動かせば大切なところに届くわね。もしかしたら、アソコを触られるかもしれないのに、そのままにしておくの?」 「えーと、じゃあ、やんわりと拒否すればいいんでしょうか」 わたしは相当困り果てた顔をしていたに違いない。電車の中で痴漢に遭ったのなら「何するんですか!」と大声を上げて爪を立ててもいいだろうけれど、あらわな拒否はきっとお客さんを怒らせる。だとしたら「やんわり」拒否するしかない。でも、その「やんわり」っていったいなんだ? ママさんは笑った。 「ごめんね、意地悪な質問して。『もう、何をするんですか』って演技で怒りつつピシャって叩かれるのを期待している人もいるのよ。その人にとってそのリアクションはお約束なの。でもお客さんによっては、太ももに置いた手の上に女の子が掌を重ねてくれるのを待っている人もいる。こうして手の位置をキープしとけば、アソコまで侵入される恐れもないでしょ? つまり、人それぞれってことなのよ」 「それは、とても判断がむつかしいですね」 わたしは正直に言った。 「そう、難しいわ。だから、プロの仕事なの」 |
「あらあ、太田さん、お久しぶりです。どうぞどうぞ、新しい子も入ったんですよ」 ドアのカウベルが鳴るのと、ママさんが猫なで声を出すのとが同時だった。 「そうですか。新しい子が入りましたか」 この店の客としては珍しく、丁寧な口を利く紳士だった。 仕立ての良いスーツをさりげなく着こなしたその男は、40前半に思われた。紳士服のブランド名をいつくか思い出してはみたけれど、そのどれでもなさそうだ。もっともあまり興味のない分野だから、よくはわからないんだけど。でもブランドものというよりは、町の腕のいいテーラーにオーダーしたスーツのような気がした。 恰幅はいいけれど、お腹は出ていない。世の中にはこんなちかっこいい中年がいるんだなと、少し見とれていた。 新人アルバイトのわたしは、その時どこかの客についてはおらず、言いつけられるままにミネラルウォーターやスナックなどを運んでいた。 「いつものでいいかしら?」と、ママ。 「ええ、お願いします」と、太田。 ママさんはカウンターの中に立ち、わたしに紳士の横に座るように命じた。 「このお嬢さんが、新しい子?」 お、お嬢さん!? びっくりした。そんな風に呼ばれたことなどこれまでにない。 「そうよ。由美ちゃん。大学生」 客よりもママさんの方がぞんざいな口をきく。 「そうですか。大学生ですか。アルバイトをしながらですね。立派です」 太田はわたしの太ももにさっそく手を添えた。わたしは彼の右隣に座っているので、彼はわたしの左足に右手を載せたのだった。 ママさんが差し出した水割りのグラスを左手で受け取って口に運ぶ。 ふうーん、この人は左利きなのかと一瞬思ったけれど、そうではないことをすぐに悟った。太ももの上の指が微妙に動くからだ。それはわたしの性感の琴線をやさしくなぞった。 ベッドの上なら「あん」って声を出すところだ。 わたしはママさんに目で合図を送った。 わたしはママさんとサインの交換で客あしらいを教えてもうらうことになっていた。 「プロの仕事って難しいんですね」 「じゃあ、ブロックサインで色々と教えてあげる」 こんな密約をさっき交わしたところだった。 ママさんはカウンターの中で自分のお尻を触った。わたしは首を横に振った。 するとママさんは太ももを触った。わたしは頷いた。 こうして客がわたしのどこを触っているのかをママさんに伝えるのだ。 ママさんは首を縦に振った。「触らせてあげなさい」の意味である。もし首を横に振ったら、「いやだあ、どこ触ってるんですかあ」と返事し、指を2本立てれば「駄目ですよお。ここはそういう店じゃないんですから」と口で断り、指を3本立てれば払いのけても良いという合図。親指と人差し指で丸を作ったら「わたし、高いですよ」と耳元で囁きなさいとも言われていた。 「いくらだ? って聞かれたらどうするんですか?」 「その恐れのある客に、そんなサインは出さないから安心して」 太田の指の動きは絶妙だった。ちょっとづつ股間に近づいてくる。お客さんと何かおしゃべりをしなくちゃと思いつつも、唇を開けば「ああん」とか言ってしまいそうで、一言も発することが出来なかった。 そのかわり、ママさんが太田と会話をしていた。 「このお嬢さんはまだ日が浅いのですか? 緊張してちょっと震えているようですけど」 別に緊張しているわけではない。気持ちがいいのを我慢しているだけだ。 「ええ、まだ二日目」 スカートのふちに指先が触れた。もうアソコはすぐそこだ。キュッと股を閉じなくちゃこのままさわられてしまう。でも官能の誘惑が足を閉じさせてはくれなかった。身体は「早く触って」と要求していた。濡れていく。 「由美さんでしたね。こういうお店では客に失礼の無いようにだけしておけば大丈夫です。すぐ慣れますよ」 すぐ、と太田が言うのと、指先がパンティーの上からクリトリスに触れるのが同時だった。 電気が走った。身体がピクリとふるえ、手に持ったグラスの中の氷がカランと音を立てた。わたしは液体をこぼさぬように必死でそおーっとグラスをカウンターに置いた。 その間もクリトリスを探り当てた指先は執拗に刺激してくる。 抑える、こする、爪弾く、2本の指でつまむ。パンティーの上からなのに、どうしてそんなに刺激を与えることが出来るのか、わたしには理解できなかった。 わたしはようやく右手を顎に当てた。 「アソコを触られた」の意味である。 ママさんは首を縦に振った。「そのまま触らせなさい」ってサインだ。 ええー!! 「アルバイトで学費を稼ぐのは大変でしょうけれど、社会勉強だと思えば良い経験になりますよ」 太田はパンティーの一番細くなっている部分を脇へ寄せて、指を直接割れ目に当ててくる。タップリと潤ったわたしのアソコは男の指をすんなりと受け入れた。 ゆっくりと割れ目に沿って前後させる。 わたしは口をパクパクさせた。官能の声を我慢するためでもあったが、ママさんへの合図でもあった。パンティーの中に指を入れられたときのサインまで決めていない。わたしの異常な所作でそれと悟って欲しかったのだ。 2人きりのベッドシーンのように、わたしは大きな反応をしていないつもりだ。けれど、太田は的確にわたしの感じるところを探り当てる。どうしよう。これ以上濡れたら、これ以上触られたら、くちゅくちゅと音が出てしまう。 膝を閉じなくちゃ。でも、力が入らない。太田が強引にわたしの足を押し開いているのではない。つい官能に身を任せてしまうのだ。 「社会勉強といっても、このお嬢さんは既に相当色々な経験をされているようですね」 わたしが数多くのセックスをこなしてきているのを、太田は見抜いているようだった。 わたしはママさんを見た。目が合った。もう一度口をパクパクさせる。太田の指すごく、わたしのアソコは大変なことになろうとしている。なんとかそのことを伝えたい。 一瞬、ママさんの目が光ったような気がした。小さくうなづいただけかもしれない。よくわからない。快感のほうが大きい。 具体的な太田の行動は、きっとママさんにも悟りようが無いだろう。けれど、わたしのアソコが太田によって普通じゃない状態になっている、そのことは確かに伝わったようだった。 そして、ママさんは、また首を縦に振った。 ええー!! それは、そのまま好きにさせておけってこと? そんなあ、という思いとは裏腹に、わたしのアソコはラブジュースをどっと吐き出した。ママさんの許可が出て、理性がふっとんだのだ。 この手のお店なら、悪戯程度のお触りはあっても、こんなことにまではならないだろうって安心していたのに。エッチなことは、直也とだけにしておこうって決意したばかりなのに。 「太田さん、なんだか顔色がお悪いみたい。お疲れですの?」と、ママさんは言った。太田は手を止めた。ママさんがうまく話題を作って、太田の気をそらそうとしてくれたのだ。 と、思ったのは、どうやら早計だった。 「いささか疲労気味ではありますね。ちょっと仕事がきつかったものですから」 「なんでしたら、奥でお休みになられますか?」 「助かります。こんな状態ではお酒も楽しめないなと、ここに来たことを後悔し始めていたところです」 「由美ちゃん、奥へご案内して介抱してあげて」 わたしは仕組まれていたことを理解した。 サービス業がどうたらこうたらという話も、ママさんとのブロックサインも、この人が身体目当てでここへ来ると知ってママが段取っていたのだった。 |
奥の部屋というのは、女の子たちの休憩室兼更衣室だ。ソファーと机、それにロッカーが置いてある。小さな洗面台もあり、それぞれのコップや歯ブラシなんかもある。テレビもある。 こんないわば控え室でこの男はわたしを抱こうと言うのだろうか。途中で誰かが入ってきたらどうするのだろう。 しかし、そんな心配は無用であることがすぐにわかった。雑誌やお菓子や灰皿が散らかっていた部屋が綺麗に片付いている。太田という男が女の子を抱くためにこの部屋を使うことは周知の事実だったのだ。 「そこに、座って」と、太田はソファーを指差した。 「そして、足をテーブルの上に」 わたしはどう抵抗してもしょうがないと思った。出口はひとつ。その先は、店。そこには女の子たちもママさんもいる。全員がこのことを知っているのなら、逃げ切れるわけがない。 ごめんね、直也。 頭では謝っているのに、身体は歓喜を上げている。 これじゃレイプにならない。和姦だ。わたしはもういちど、「ごめんね、直也」と言った。 無意識にそれが言葉になったらしく、太田の耳に届いてしまった。 太田はわたしの靴とソックスを脱がせながら、「直也くん? あなたの恋人ですね?」と訊いた。 わたしは頷いた。 次に太田はわたしのパンティーに手をかけた。ゆっくりと脱がしてゆく。 「いけないお嬢さんですね。謝っているはずなのに、こんなに濡れて」と、パンティーに添えた手を止めて、わたしのヴァギナのジュースを指先ですくう。 顔を近づけてアソコを凝視し、「これは相当使い込んだおまんこのようですが、違いますか?」 わたしは何も言えなかった。 「いつからこんなに開いているのかな? 太ももを触られたときから? それとも、お店に入ったときからかな?」 太田はわたしのクリトリスにキスをする。 「ああ、やっぱり社会経験、豊富なようですね。こんなに固くて立っている。皮を剥く必要も無い。唇はこんなに爛れているのに、開ききったおまんこから綺麗なピンク色が露出しています。すばらしい」 太田はヴァギナの入り口に鼻をこすりつけた。息が膣の中に入り込んで、わたしは「ひいい」っと声を上げた。 |