語り部は由美
大学2年生 純愛(3)





 ママが見守る中で、わたしと太田は全裸になった。
 ママは控え室の扉を3割ほど開き、お店の方に顔を出した。
「そんなに忙しくないわね。しばらく頼むわ」
 ホールに残っているスタッフに声をかける。開いた扉の隙間から店内に流れているBGMが聴こえる。優しげで、しかしどこかなまめかしいピアノのスローバラードだった。
「ちょっとボリュームあげておいて」
 私たちの声が店内にまで届くのを防ぐためだなと思った。ママさんにはわたしが壮絶な声を上げることが予想できたのだろう。そういえば、とふと思う。わたしは声を我慢した経験がほとんどない。
 官能に耐え切れずによがるのか、苦痛で悲鳴を上げることになるのか、わたしにもわからない。
 目の前に立つ太田は、ビール瓶の底に匹敵する太さのペニスを、股間から前方に突き出していた。その太さが目立つためにパッと見では「長い!」とは感じない。けれど常人よりも長い。25センチ前後だろうか。この程度の人は時々いるので、未経験の長さではなかった。
 太田のそれはヒクヒクと律動していた。いまにもお腹に張り付こうと何度も持ち上がっているのだ。けれど、太すぎて根元が上を向かない。跳ね上がろうとする力を物体そのものの太さと硬さが押し戻そうとする。太田のモノは年齢に比してきわめて元気だと言えるだろう。
 背中がゾクゾクした。
 半分近くは恐怖である。こんなものを受け入れてしまったらわたしのアソコが壊れてしまう。
 けれど、それにもまして大いなる期待が私を包んでいた。
 これまでにない官能と恍惚の境地へと誘われることを望んでいた。
 タプタプと溢れ出るラブジュースが、恐怖よりも期待が強いことを示していた。
「さ、はじめましょう」
 ママさんは扉を閉めた。室内が急にシンとなった。意外と防音出来ているようだ。
 

 あたし一人だけ服を着ているってなんだかマヌケだわと、ママさんも服を脱ぎ始めた。
 上品なデザインではあるけれど、もともと無防備な着衣である。胸元からも、わきの下からも、いつでも手を差し込むことが出来る。そんな衣装だから、脱ぐのも手間がかからなかった。布と肌がスルリと擦れたかと思うと、そのしたからふわりと下着姿のママさんが現れた。
 ハーフカップのブラとTバックパンティーはいずれも黒で、わずかながらに透けている。それらをママさんは淀みのない動作で取り去った。
 肌の張りはさすがに年齢と共にあるが、プロポーションは衰えていない。それどころか中年女特有のなまめかしさがわたしの目を射った。
 わたしのように乳首がピンと立ってはいない。けれど、垂れているのでもない。その微妙な位置は、数々の男たちに受けてきた愛撫をたっぷりとしみこませているようだった。
「すごいな」と思った。
 わたしも同年代の女の子に比べたら遥に多くの経験をつんでいると思う。人数も、回数も。だけどママさんのそれにはまるで及ばない。ママさんの裸体を見ただけでわかるほどの歴然とした差だった。
 おまけに……。
 目の前にある巨大な男性器をママさんは既に何度も受け入れているのだ。ママさんに対抗意識を持っているわけではないけれど、少なくとも太田の挿入をこなさないとママさんを乗り越えることは出来ない。
 太田は一歩、二歩とわたしに歩み寄り、そして優しく抱きしめてくれた。
「なるべく、優しくするから」と彼は耳もとで呟いた。
 わたしは「激しくしてください」と返事した。
 わたしのお腹には彼の巨根がものすごい圧力とともに押し付けられていた。彼は唇を重ねてきた。ただそっと触れ合っているだけのキス。これから始まろうとする野獣的なセックスの、始まりを告げる静かな合図だった。

 わたしと太田が熱く静かに抱擁している間にママさんは準備を整えていた。控え室にあるテーブルを隅によせ、床に毛布とシーツを敷いた。
 この部屋の床はそっけないタイル絨毯。50センチ四方のそれは濃いベージュと薄いベージュが市松模様に敷き詰められている。スタッフはそこへ土足で上がり込む。直接裸身を横たえるには抵抗があった。
 かといってこれまでのようにソファーの上では自由な体位が取れない。
 そこでママさんはこのような気遣いをしてくれたのだった。
 おそらくここにはもともと毛布やシーツが用意されていたのだろう。かつて、ママさんがまだ受け入れ可能だった頃に太田と使っていたものかもしれないし、その相手は太田だけではなく、そのほかのこの店の客にもこういうサービスが提供されていたのかもしれない。
 バイトを始めて間もないわたしはママさんのプライベートをまるで知らない。彼女に特定の男がいるかどうかも当然のことながら聞かされていない。
 いずれにしてもママさんは何人かの客とはここで関係を結んでいるんだろうなとわたしは思った。客とのやりとりの中にそういう部分は感じられなかったけれど、ママさんの接客だってそれほど見ているわけではないし、彼女に男抜きの生活が耐えられるわけないとわたしは感じていた。
「さ。遠慮しないで。綺麗に洗濯してあるわ」
「ママさんは、いつも、ここで?」
「もう由美ちゃん、野暮なことをきかないで。あなた、同類でしょ? わかるでしょ?」
 わたしはコクンと頷いた。

 わたしは靴を脱いでシーツの上にあがった。そして座った。
 背中の後ろに両手をついて上半身を支えながらのけぞる。膝は曲げて浮かせた。お尻と膝と踵で三角形を作った。足は思い切り開いた。
「その体勢で太田さんを受け入れるの? バックの方が少しはラクだし、色々と太田さんに動いてもらえるわよ」
「いいの。結合部分が見たいの」
「そう……。根っからのスケベなのね」
 太田もわたしの前に同じように座った。足はまっすぐに伸ばしていてわたしの浮いた太ももの下から外に向かって伸ばした。太田はその足を少しづつ閉じ、わたしのお尻をぎゅっとはさんだ。
 そして太田は体重を後方の手にかけて腰をちょっぴり浮かせると、わたしの股間にペニスを接近させてきた。
 太田の腹筋は力強くスジが立っている。この体勢でお尻を浮かせるのだから力も必要だろう。
「由美ちゃん……」
 太田はささやいた。わたしは太田の目を見た。久しぶりにセックスできる喜びがアリアリと感じられたが、それだけじゃない。宗教的な崇拝の念までそこには現れていた。何者にも受け入れがたかった彼のペニスを迎えようとしているわたしに対して、彼はまるで女神を重ね合わせているかのようだった。
 事実、わたしもそんな気になっていた。
 口には出さないけれど、「さあ、いらっしゃい。わたしはどうなってもいいの。アナタがよければ、それで」と感じていた。
「すごいよ……」と、太田は言った。「ママさんには悪いけれど、この子、ママさんより、すごい」
「悪くなんか無いわ。あたしに見る目があったってことよ」
「そう、だね。ああ、開いているよ、由美ちゃんのおまんこ。こんなに開いている。早くおいでって誘っているみたいだ。おまけにトロトロに濡れている」
 店に来たときの紳士的な口調はすっかり消えていた。
「じゃあ、い、入れるよ」
 太田はわたしのヴァギナに先端を添えた。
 わたしは目を凝らした。わたしも腹筋に力をいれ上半身をさらに起した。その瞬間を見たかったのだ。
 思わずわたしは生唾を飲み込んだ。
 
 太田の亀頭は半分くらいまではスルリと入った。太田はそこでいったん動きを止め、腰を床に落とした。それからはジワリジワリと進んでくる。わたしの膣は太田のそれに合わせるように押し広げられた。既にいつものセックス以上にわたしのアソコは拡張している。太田の進み具合はきわめてゆっくりしていたが、そのスピードでさえ膣壁の摩擦は相当なものだった。
「あん、はあ〜」
 わたしは目を閉じた。目を閉じずにはいられなかった。
「つらい、ですか?」
 太田が言った。わたしは首を横に振った。
 太田の挿入はきわめてゆっくりだった。若い男の子ならもうこのあたりから我慢が出来なくなって力任せに腰を振るところだ。わたしもそうされてもいい、くらいの覚悟は出来ているつもりだった。けれども、太田はゆっくりだった。
 挿入の様子を見ようとせっかくとった体位だったのに、わたしは目を再び開けることが出来なかった。既にアソコはこれまでの最高記録を超える太さを受け入れている。目を閉じていてもそれはわかった。そろりそろりと突き入れられる太田のペニスに、ぎしぎしとわたしの穴は広げられていた。溢れ出る樹液のおかげで痛みは感じなかったが、わたしの膣ははちきれんばかりになっていた。
「痛かったら言って下さい」
「痛くはないの。だけど、なんだかすごく変な感じ」
「気持ちいい? なんてことはないですよね」
 いつのまにか太田の口調はですます調になっていた。わかりやすい男だと思った。
「ああん、はあ、はあ、……気持ち、いいです……、んん〜」
 いつもとは違う。だけど、確かに気持ちよかった。当然だ。こんなバカでかいものを受け入れて膣の内壁は伸びきっている。そこを挿入によってこすられるのだ。いつもにもまして敏感になる。しかもわたしは「こんな大きなものを」と思うだけで興奮は数倍に増している。
 喘ぐつもりはなかった。普段のセックスで勝手に声が出てしまうのとは明らかに違う感覚がわたしの下半身に満ちている。「あ〜」だの「ん〜」だのの声が漏れる状態とは異なっている。ただ「気持ちいい」とだけ伝えるつもりだった。なのに、口を開くと喘ぎ声が混じる。わたしの身体は正直だ。
「太田さん、もう一気にいれてしまったら、どう?」
 ママの声が聞こえる。わたしが目を閉じている間にわたしの背後に回っていた。
「ああ、そうするよ。この子は本当に平気みたいだ。すごいよ」
「さあ、一気に来るわよ。すごいわよ。せっかくだから目を開けなさい」
 ママに言われてわたしは瞼を開いた。
「う!」
 そして、思わず呻いてしまった。太田の亀頭の部分はほとんどがわたしの中に入っている。しかし、入っているのは亀頭の「ほとんど」であって全部ではない。ビシっと張り出した太田のカリがまだ残っている。それはさっきまで目にしていた状態よりもさらに膨張をしていた。ビール瓶の底? 冗談じゃない。そんな生易しいものじゃない。
「あ、ひ!」
「どう、すごいでしょう? これがおまんこの中で暴れまわるのよ」
 ママさんはウフフという笑い声を混ぜながらわたしの耳元で囁いた。
「由美ちゃんならきっと大丈夫よ。あたしだって、30代の頃はこれを受け入れてきたんだから。さすがにもう無理だけど。裂けちゃうのよね。弾力がなくなってきたんだわ」
 ママの「裂ける」という台詞にわたしは戦慄した。
 アソコが壊れる。
 そんなの、やだ。
 拒否する一方でさらにジュースが溢れ出して来た。わたしは怖いと思う一方で、身体は着々と受け入れ準備が整っている。
「大丈夫よ。ほら、もうすっかりトロトロになってるじゃない」
 わたしから溢れ出た粘液は太田のペニスを伝い、絡み付いている。
「行くよ」と、太田が言った。
 
 太田が腰を突き入れる瞬間を、わたしは目の当たりにした。目を閉じることが出来なかった。
 ビシイッ!!
 そんな音がした。
 部屋中に音が響き渡った。
 それはわたしのイメージだったかもしれない。本当はそんな音などしなかったのかもしれない。
 ミシミシとアソコが裂け広がり、熱く熱く燃え上がる。熱い部分がどんどん奥へと進んでくる。わたしは息ができなくなった。
「が! ヒイイィィ!」
 わたしは悲鳴を上げた。
 強烈な痛みが手前から奥へと突き進んでくる。
 けれど、痛いだけではなかった。
 その熱いものが通過したあとに甘い霧雨が降り注いでくる。
 膣壁に無数に生じた小さな舌がその甘さに酔っている。
 甘いだけじゃない。なにかしら酔わせる成分までが含まれていて、ジンジンと痺れたような感覚に包まれてゆく。
 最初ソレはアソコだけに与えられる恍惚だったが、ものすごい勢いで全身に広がってゆく。乳首が痛いほど勃つ。霧雨が嵐になってわたしの身体中を駆け巡り、雷がスパークして大地のあちこちに落ちた。草原を焼き、樹木をなぎ倒す。
 大地は彼を受け止めるわたしそのもの。
 彼はそれでも侵入をやめない。どんどんわたしの奥深くへと蹂躙してゆく。
(まだ、まだ辿り着かないの?)
 彼の先端部分がどこにあるのかわたしにはもはやわからなくなっていた。いつもなら、とっくに子宮口に達しているはず。ズドンと打ち込まれてズンズン侵攻されているような気になっているのは彼のアレが巨大だからであって、実際はたいして挿入されていないのかもしれない。
 目を閉じたつもりは無いのに、わたしには視界がない。
 頭の中が真っ白になっている。そして紅く染まってゆく。
 エッチしているという意識も持てない。
 何かが身体の内側を這いずり回って、その接触部分の全てが気持ちいいのだ。
 耳を澄ますと獣のようなうめき声が聴こえ、それが自分の恍惚の叫びだと気付くのにに時間はさほどかからなかった。
 わたしの身体がフワリと宙に浮いた。背中の後ろで体重を支えているはずの手もどこかしらわけのわからない空間を漂っている。背後に回ったママさんがわたしののけぞった上半身を支えてくれる。
「い、痛い!!!」
 遠くから聞こえてきたその叫び声は自分自身のものだった。
 そういえばさっき、ブチッと何かがはぜる音がしたような気がする。それも遠くから聞こえてきたものだった。肉体と魂が切り離されている。
「あ、大丈夫? 由美ちゃん、出血しているよ……」
 太田の心配そうな声がする。
「これくらい平気よ。あたしのときなんてお構いなしだったじゃないの」
「だって、ママさんは水商売のひとだもの」
「まあ、ひどい。この子も相当遊んでいるわ。これくらい平気よ。どんどんやっちゃいなさい」
 ママさん、ひどいこと言うなあ。わたしはぼんやりした意識の中でそんなことを考えていた。
「あ〜ん、あうあうあうあ〜〜、もっと〜、ひい〜ん、あう〜ん、ひくっ、ひくっ……」
「ほら、この子よがりまくってるわ。きっと普通のちんちんじゃ満足できない身体なのよ。思いっきり突っ込んだらいいわよ」
「そ、そうか」
 ズン!
 お腹の奥底に打ち付けられたハンマー。それはペニスの先端がいよいよ子宮口に届いた証だった。

 それからの太田は凄まじかった。
 あんなに太くて、カリだって思いっきり張り出したアレ。それを力任せにピストンするのだ。
 ぐっちゅ、ミシ、ぐっちゅ、ビシ、ぐっちゅ、バリ、ぐっちゅ。  粘液の音に混じって、わたしのアソコが壊れていく様子が耳に克明に届く。
 けれど、わたしには抗う術がない。
 太田の腰の動きに主導権を握られて、わたしはただただ振り回されるばかりだ。
 細胞のひとつひとつがバラバラにされ、そのひとつひとつが性感帯となり、まるで無数に分裂した太田の生殖器によって、残らず丁寧に触られ舐められ擦られている。
 暴れるわたしをママさんが羽交い絞めにしてくれている。
「最高だよ、由美ちゃん。最高だ。こんなに僕の全部を受け入れてくれる人なんて、初めてだ」
「あら、あたしよりいいの? そんな言い方は傷ついちゃうわよ」
「いや、ママさんはママさんで良かったんだよ。だけど、セックスの感覚なんてしばらく忘れていたからね」
「あん、あふーん、ああ、んんんんん〜〜〜〜」
 くっちゃ、ぐっちゃ、くっちゃ、ぶっちょ……
「ああ、由美ちゃん、いいよ。とってもいい。こんなに激しく出し入れしてるのに、ちっとも広がらない。カリにまとわりついてくるよ。すごい名器だね。暖かくて、熱くて、最高だ」
「太田さん、そろそろフィニッシュにした方がいいわ。本当にこの子、壊れちゃうわ。出血もひどくなってきてるし」
「……、せっかくこんなに気持ちいいのに……」
「一度でこの子、壊しちゃうつもり?」
「そ、それは……」
「あなた、コントロールできるんでしょ?」
「それは、多分……」
「この子、彼氏だっているんだから、このへんでゆるしてあげたら? 壊さなかったらまたさせてもらえるわ。ほら、こんなに感じてるんだもの。きっと太田さんの大きさ、忘れられない身体になってるわよ」
 ママさんは好きなことを言ってくれる。ひどいなと意識の片鱗で思ったけれど、99%以上がわたしの細胞は太田に同化していた。
「じゃあ、ラストスパートするから」
 太田はそう言うとこれまでにないスピードと力強さで、わたしの子宮口を突き上げた。
 
 ズドン! ズドン! ズドン!
 高層ビルに基礎工事に杭を打ち込むように、わたしの内臓を破壊していく太田。
「カハッ! カハッ!」
 喉の奥からしぶきが飛び出してくる。
 太田の張り出したカリが膣壁を強烈に押し広げながら前後動する。
 快感と苦しみが渾然となって、カオス状になったわたしの感覚を深い奈落の底に落として行く。
 腰がピョンピョン跳ねている。下腹部に生じた痙攣が太もも、膝、つま先へと伝わっていく。
 同時にそれは、腹部から胸へと這い上がっても来る。
 頭の中が真っ白になったり、真っ赤になったり、真っ青になったりした。身体が宇宙に放り出された。
「あ、だめ、この子、泡吹いてるわ」
 ママさんの叫び声。
「ほら、太田さん、早くフィニッシュしないと、まずいわよ。痙攣して泡吹いてるってば! この子、逝くわよ。早く終わらして!!」
 背後からわたしを拘束していたママさんの手が、わたしの乳首をつまんだ。
 あんなに霧散しかけていた意識がぐーんと強烈に現実に引き戻され、乳首に触れたママさんの熱い指先を感じた。
 全身痙攣をおしているわたしは、つままれた乳首が自分の身体の振動によって上下左右前後に激しく不規則にひっぱられ、くう〜んと上り詰めていった。
 そうだ、イクんだ。
 太田の想像を絶する攻撃に、セックスに「イク」という状態があるのをわたしはすっかり忘れていた。
「痛い! 痛い! しめつけないで!」
 太田が悲鳴を上げた。
 わたしのアソコが収縮している。
「由美ちゃん、痛いよ!」
 痛いといわれても、イク瞬間の締め付けをわたしはコントロールできない。
「一緒に、お願い、一緒に」
 そういうのが精一杯だった。
「ダメだよ、そんなに締め付けちゃ抜けない。このまま中で出ちゃうよ」
「こんなふしだらな子には中出しでいいのよ。それより早く。泡吹いてるって言ってるでしょ」
 ママさんの言葉が合図になったように、太田はわたしの中で大量の精液を放出し、わたしはイッた。
 
 ママさんは熱いおしぼりで何度も何度もわたしの身体を手入れしてくれた。口の周りやアソコを優しく拭ってくれた。
 わたしは起き上がることが出来なかった。イッた状態が継続していた。ちっとも醒めない。脳細胞がとろけてしまったようだった。
 落ち着きかけてはわたしは痙攣し、泡を吹き、涎をたらした。
「まだ、感じてるの?」
 わたしはがくがくと頭を動かした。
 セックスの相手だった太田はとっくに身繕いを終えて傍らに座っている。でも、わたしはまだセックスの最中だった。
「やだ、また濡れてるわ」
 わたしのアソコに手をやったママさんが呆れている。
「本気で感じてたのね。太田さんがこの子最高って言った意味がよくわかるわ。あたしだって感じてたけど、こんなに苦しいの早く終わってって同時に思ってたものね」
「だろ? この子は本当にすごかったんだよ。セックスの申し子だよ」
「バカなこと言ってんじゃないわよ、ほんとに。あたしだって10代の頃から鍛えてたらきっと負けてないわ。でも、変に真面目な子だったから。処女を失くしたのは22の時よ」
「そのかわり、40過ぎてもやりまくってるんだろ?」
「だって、身体が疼くんだモノ。太田さんが普通のサイズだったら、毎日でもやらしてあげたのにね」
「よく言うよ」
 太田の口調はもう変わらなかった。店に入ってきたときのよそよそしいのか丁寧なのかわからない言葉使いは、ママさんとふたりきりのときには出てこない。まるで長年の親友のように思えた。
 わたしにはその心理がなんとなくわかる。
 セックスをした男女が、その後、セックスなしの関係になっても付き合っている。それはきっとこういう状態なのだ。
 残念ながらわたしにはそういう相手はまだいないなと思った。
 直也とはそういう関係になれるだろうか?
 脳裏に直也の顔が浮かんだその瞬間を境に、わたしは徐々にセックスの余韻から醒めていった。
「どう、落ち着いたみたいね?」
「はい」と、わたしは答えた。
「2階に狭いけど寝室があるから、泊まっていってもいいわよ」
「ママさんは?」
「あたしはソファーででも寝るよ。明日は定休日だし」
 わたしは少し考えてから言った。「やっぱり帰ります。直也が待ってるし」
「彼氏?」
「はい」
「一緒に暮らしてるのね。じゃあ、外泊はまずいわよね」
 ママさんはニコリと笑った。
「じゃあ、送るわ」
「え? でも、お店……」
 店の心配をしながらも、でもとても一人じゃ帰れないだろうなと思っていた。まだわたしは床に寝そべったまま。ちゃんと歩けるかどうか自信がなかった。
「とっくに閉店してるわ。いったい何時間昇天してたと思ってるの? ほんと、スケベなんだから」
 
 太田が差し出した封筒には5万円が入っていた。わたしはそんなつもりじゃなかったと断った。これじゃ売春だ。けれど、尋常でないモノを受け入れたお礼だからと太田は引っ込めなかった。ママさんが「もらっておきなさい」と言ってくれた。
 ママさんはわたしを車で送ってくれた。車を降りて地面に降り立つと、普通に歩けるのが嬉しかった。車に乗り込むときはなんとなく自分の身体がぎこちなかったからだ。
 直也はとっくに眠っていた。
 同じ布団に入る。
 わたしはそっと下着の中に指を滑り込ませた。ひりひりするけれど、いつのもようにキュッと張り付いてくる。ユルユルになってしまったら直也に申し訳ない、あるいは他の男とエッチしたのがバレてしまう。そんな心配はしなくていいようだ。わたしのアソコは優秀だ。
 わたしは本当にセックスの申し子なんだな、と思った。