語り部は由美
大学2年生 純愛(5)





 上品なエロス。それが脳裏に浮かんだ言葉だ。
 わたしは黒のスーツを身に付けている。けれど、上着の下は、白のチューブトップ。何の装飾もないシンプルなもの。シルクではないけれど、それに似せたやわらかな光沢を放っている。
 前ボタンを外したままなので、清潔感と高級感のある擬似シルクのチューブが目にまぶしいはずだ。
 上着を羽織っているので、それがTシャツなのか、タンクトップなのか、キャミソールなのかはわからない。肩紐にあたる部分が見えないからだ。けれど、実は肩紐はない。しかも、ノーブラ。上着を脱げば、ツンと尖った乳首が見える。茶色よりむしろ黒に近い使い込まれた乳首は、純白の布越しに妖艶な匂いを放っていた。
 下半身はタイトミニ。色気を売り物にしている重役秘書が好みそうなスタイルだ。これでキビキビと仕事をこなせば、上品と下品のギリギリのラインが男の垂涎の的になるだろう。

 ストッキングはなし。下着は、直也がセクシーショップで買ってくれたものだった。本当は旅行初日の夜にプレゼントしてくれるはずだったのだけれど、わたしがおねだりして朝から履いた。だって、夜になったら、きっともう下着なんて不要だもの。
 いくつかあるうち選んだのは、これまたスーツにあわせてシンプルなもの。前に小さな黒いシースルーの三角形があるだけの、ほとんど意味のない代物。ちょうどクリトリスのあたりから紐1本になって後ろに続いている。横ももちろん紐一本。
 パンティーを履いてしばらくすると、わたしの中に残っていた直也の粘液が垂れてきて、紐にからみついた。にゅるりという気色の悪い生暖かさがわたしの敏感な部分にからみつき、わたしまでエッチなお汁を浸出しはじめた。
 やん、もう……。
 ふたりっきりの旅行。ふたりっきりの夜。
 エッチな想像がわたしの感覚を支配し、どんどん濡れてくる。

 乾きかけては濡れ、濡れては乾き、そしてまた濡れる。旅の道中、わたしはそんなことの繰り返しだった。何しろ、紐一本のパンティー。歩けばもちろんのこと、椅子に座ったり立ったりするだけで、アソコへの刺激が生まれる。
 こんなことでは、グリーン車の上等な座席をスカート越しに濡らしてしまう。座席が濡れているということは、当然スカートにだってシミが……。
 誰にも後ろ姿を見せることが出来なくなっちゃうじゃない。
 焦ったけれど、心配無用だった。
 慣れ、である。慣れとはおそろしい。なにかの拍子に違和感を感じることはあるけれど、それでエッチな気分になるということはなくなった。
 そうだろうなあ。いちいち官能していたんじゃ、TバックやGストを身に付けている世間の女たちは、おちおち仕事もしていられないよなあ。
 妙に納得したり感心したりしながら、車窓を見る。直也は窓際の席をわたしに勧めてくれた。乗車後、しばらく軽い会話をしていたけれど、リクライニングを倒して直也は眠ってしまい、それ以後、することがない。
 連日のバイトバイトで直也は疲れきっている。わたしと一緒に旅行に行くんだという高揚感だけが、直也を支えていた。そして、いざその日がやってくると、彼はすっかり安心しきって、全身が弛緩してしまったのだった。
 思いを遂げて安らかな寝息を立てている直也。いとおしい。疲労の色は見えるけれど、なんて穏やかな顔をしているんだろう。
 必ずしも真っ当じゃない仕事で得たお金で、グリーン車だの高級旅館だのを選択したわたしは、ちょっと恥ずかしくなった。お金を稼いでいるときは、せっかくの機会なんだから、とびっきりの旅をしたいと思っていたけれど、こうして好きな人と一緒にいられるだけでこんなに穏やかな気分になれるのなら、おにぎりとかサンドイッチとかを作って、近所の小さな山にハイキングに行くだけでも十分だったなと思う。
 わたしったら、いったい何を考えて、何をしてきたのだろう?
 お弁当を持ってのハイキングだったら、無理なバイトをする必要も無かった。そこそこで良かったのだ。そうすれば、直也だって毎晩疲れきって眠るだけの生活なんてする必要も無く、いっぱいお喋りして、いっぱいセックス出来たのに。
 窓の外は、浅い春をめいっぱい吸収しようとしているのか、山も木々も明るく輝いていた。
 わたしは、考え込んで気分をどんよりさせるのをやめることにした。もう旅は始まっているのだ。楽しまなくちゃ。

 金沢についた。Gパンに明るい色の襟付きシャツというラフな格好の直也だけれど、わたしがジャケットをプレゼントした。Gパンとジャケットの組み合わせは、似合う人にとってはおしゃれだ。似合わない人がこれをするとチグハグな印象を与えるけれど、直也の場合はOKだ。
 レストランに入っても、気後れすることは無い。
 金沢の繁華街、香林坊の裏手にある、てんぷらの専門店に入った。ちょっと遅めだけれど、ランチ。ランチメニューは高くない。一品ずつ揚げては出してくれるお店で、慌てると口の中をヤケドしそうになる。列車の中では眠っていただけなのに、直也の食欲は旺盛だ。ランチのセットメニューだけでは足らず、色々なネタを注文する。セット以外のものは夜と同じ値段だ。でも、遠慮することは無い。わたしたちはこれまで一生懸命稼いできたのだ。
 私の収入はちょっと後ろめたいけど、ウリで得たお金は封印することにした。それでも、翻訳とスナックでそれなりに稼いでいたので、大丈夫だ。
「これは抹茶塩で召し上がってください」
 籐の受け皿に和紙を敷いたその上に、揚げたばかりのてんぷらが載せられる。上等そうな和紙なのに、油を吸ってどんどん変色してゆく。ネタを箸でつまんで、ちょんと抹茶塩をつけ、それから口に運ぶ。
 柔らかな風味がじんわりと舌の上にひろがってゆく。サックリ、ホコホコ、じんわり、な感じ。
 油っぽくないし、ゴワゴワした感じもない。冷めてゴワゴワした学生食堂や町の定食屋で食べるてんぷら定食とは全く違う。高級とか上等とかって、やっぱり根本的に何かが違うんだと思った。お金をかけるとは、こういうことなんだな、と思う。無理してバイトした甲斐があった。電車の中で、「お弁当持ってのハイキングでも良かったのに」と後悔しかけた気持ちが霧散した。
「おいしいね」と、直也が笑い、わたしが頷く。
 幸福感がじんわりと広がってゆく。

 昼食を終えた私たちは、荷物を預けに宿に行った。一歩、中に入ると、外の喧騒の全てが遮断された、まさしく異空間だった。和の伝統と粋が巧みにコーディネイトされており、どこか古くて懐かしいと感慨を抱きかけては、それを否定せざるを得ない先鋭的な意匠に目を見張らされる。
 例えば、玄関の扉を開ければ、そこは枯山水である。計算されつくした文様が描かれており、一部の狂いも無い。その中央に、木製の太鼓橋が掛かっている。しかしそれは、さほど中央が盛り上がっているわけではない。両端と中央部の高さの違いは、ほんの4〜5センチだろうか。
「ふう〜ん」と、直也が言った。
「何が、ふう〜ん、なのよ」
「ライティングだよ。照明の巧みな演出で、実際よりも橋の中央部が盛り上がって見えるんだ。建築物は凝れば凝るほどメンテナンスが大変だし、旅の客っていうのは、荷物が多かったり、疲れていたりするから、急な傾斜は余計な負担をかける。だからそのあたりの演出には、それなりの注意深さが必要なんだよ。デザイナーの想念が先走ってしまうと、実用性に乏しい建物になってしまうんだ」
「へえ〜」
 直也にそんな観察力があるとは思わなかった。
「ほら、あそこ、枯山水のど真ん中に、本物の池もある。きっと、どんな好みの人にも、それなりに喜んでもらえるようにしたんだろうなあ。とはいえ、客に媚びてるような下品さがない。これは素晴らしいなあ」
 太鼓橋を渡り終えると、赤い布を敷いたベンチがある。館内なのに、屋根までついている。峠の茶屋を模したようだ。
「水戸黄門のうっかり八兵衛が、お団子を食べていそうな風情ね」と、わたしが言えば、「そうだね。だけど、当時の茶屋って、本当にこんなだったのかなあ?」と、直也が首を傾げた。
「当時って?」
「だから、水戸黄門の……」
 言いかけて、直也は「そうか!」と手を叩いた。
「何よ」
「この茶屋は、一般的な日本人がイメージしている『それらしいもの』にしているだけで、時代考証をあえて無視してるんだ。歴史を正しくなぞる事より、雰囲気っていうか、現代の客のイメージに合わせてあるんだよ。なるほど〜」
 こんな調子で直也の感想に付き合っていては、時間がどれだけあっても足らない。それほど広くない玄関ホールには、この他に水車や荷車などがインテリアとして配置されていたが、鑑賞よりも用事を済ませるのが先だ。
 ホールの片隅に、これは何の変哲も無い受付カウンターがあり、スーツの男性と和服の女性が迎えてくれた。どこの旅館でもありふれた光景だが、この和風異空間の玄関ホールにすらマッチしていた。
 あとでそのことを直也に言うと、「人間の想像力とかイマジネーションには限界があるんだよ。我々はタイムスリップごっこをしに来たんじゃなくて、旅館に泊まりに来ただけなんだからね。認識できる範囲を超えての演出は、無駄だと考えたんじゃないかな? 事実、僕たちはスーツに違和感を感じなかったんだし」
「それって、中途半端でいいって、こと?」
「ここは太秦映画村じゃないんだから、ほどほどでいいんだよ」
 チェックインは午後3時からで、まだ1時間ほどある。「お待ちになられるんなら、隣に喫茶室もございますが」と案内してくれたけれど、「荷物だけ、預かってください」とわたしは言った。まだ観光らしい観光はしていない。
「では、お部屋にお入れしておきます」
 
 荷物を預け、身軽になって宿を出ると、わたしたちを再び喧騒が包み込んだ。駅から続く道と、香林坊からの大通りが交差する、武蔵が辻という賑やかな交差点はすぐそこだ。
 もうここは、観光地というよりも、大勢の人々の営みがとぐろを巻いている都会。次から次へと路線バスとタクシーがひっきりなしにやってくる。
 尾山神社から兼六園へとわたしたちはサクサク歩き、兼六園の中ではのんびりぶらついた。
 忍者寺や東の廓、江戸村など、それなりに観光地を巡りたかったが、もう夕暮れが迫っている。空気も冷たさをはらんできた。夕食の時間も伝えてあるし、それまでに一風呂浴びるとすれば、そろそろ潮時である。
 友達同士のグループ旅行のように、打ち合わせをしたり、それぞれの希望の調整をしなくても済むのが、恋人のありがたさ。わたしと直也は、ゆっくりと宿への道筋を辿った。手をつなぎながら。
 
 客室は全室が離れである。
 わたしたちは二人だけなので、一番サイズの小さな部屋を取っているけれど、それでも贅沢な部屋構成だ。居間、寝室、茶室の3室があって、それぞれの部屋から庭が見える。すぐ先に隣の離れも見えるけれど、あくまで屋根や壁がわかるだけで、窓は植栽で隠れている。都会の中の旅館だから、庭だって広くない。けれども、窮屈さを感じさせなかった。
 お風呂は内風呂もあるが、庭に木立に囲まれた露天風呂があって、月明かりを見ながら湯に浸かることが出来る。この他に、玄関ホールやフロントのあった母屋には大浴場がある。大浴場には露天はないけれど、サウナが設置されていた。
 早くいちゃいちゃしたかったけれど、サウナは捨てがたく、まずは食事の前の入浴は母屋に出かけることにした。
 浴衣に着替えようとして、ハッとした。直也に裸を見られるのは平気だけれど、エッチなパンティーを履いていることを思い出したのだ。そして、恥ずかしくなった。二人してエッチな会話をしているとか、彼の指がわたしに悪戯をしているとか、そういうのであれば恥ずかしくない。いや、二人して、でなくてもいい。わたしが自分勝手にエッチな気分で盛り上がっていてもいい。彼にその気が無くても、「ねえ、見て見て、ほら〜」などと、自分のエッチな姿をさらすような気分であれば問題ない。でも、自分も彼も、そうじゃないのに、身に付けているものだけがエロチックというのは、どうにも照れくさかった。
 幸い彼は庭に面した縁側に腰をかけて、部屋に案内してくれた仲居さんがいれてくれたお茶を飲んでいる。若いくせに、そういう後姿がサマになるなあと思いながら、わたしは俊足で着替えた。
「先に、お風呂へ行ってるよ」
「あ、僕も行くよ。ええっと、着替えと、それから、部屋のカギと……あれ?」
 玄関ホールのインテリアを颯爽と評価した直也の面影は無く、行動そのものがしどろもどろしている。どうしたのかな、と不思議に思った。見れば、直也の頬がわずかに紅潮している。もう、夜の営みに思いを馳せているのかな? わざわざ訊かなかったけれど、きっとそうなんだろうと思うと、わたしは嬉しくなった。

 大浴場といっても、カランがいつつ、湯船には3人も入ればいっぱいの、大浴場らしくない大浴場だった。そりゃあそうだろう。なにしろ、離れがむっつ。それだけの旅館なのだ。各部屋にあるお風呂よりも大きいパブリックバスであることを意味しているに過ぎない。
 露天風呂も無い。露天は各離れにそれぞれあるのだから、必要ない。そのかわり、公衆浴場のような実用一点張りの浴室ではなく、庭石や熱帯植物を配し、意匠をこらした設計になっている。片隅にはサウナもきちんと稼動している。二人で満員になるような小さなブースだけれど。
 風情を味わうのは、直也と二人、月を見ながらの庭の露天風呂なんだからと決め、わたしは身体を磨くことに専念した。サウナも少し利用した。入浴を終えて出てくると、大浴場前の小さなロビーで、直也は既に待っていた。
「食事の用意を始めていいですか、って訊かれたんで、どうぞ、と言っといたよ」
「うん」
「でも、ちょっと待ってもらおうか?」
「大丈夫。長湯してないから。お腹もすいてきたし」
 直也の視線がわたしの下半身に注がれている。浴衣が少し乱れていた。わたしはあえてそれを直さず、「行こうよ、部屋へ」と言った。
 
 食事を終え、テーブルの上が全てすべて片付くと、仲居さんが「失礼いたします。お休みなさいませ」と部屋を出ていった。
「ふうっ」っと、直也がため息をついた。
「どうしたの?」
「いやあ、料理を持った人が出たり入ったり、なんだか落ち着かなかったよ」
 わたしはプッと吹き出した。
「なんか、おかしいか?」
「別に、おかしくないけど、なんとなく直也の気持ちがわかるから……」
「どう、わかるんだよ」
「だって、しょっちゅうわたしの方見てたし」
「そりゃあ、見るよ。二人で旅行に来てるんだから」
「それだけじゃないでしょ? エッチなこと、考えてたでしょ?」
 開きかけた口を閉じて、それから、また直也は唇を動かした。
「ま、まあね」
 わたしは食事を思い出しながら、クスクスと笑った。
「な、なんだよ」
「だって、『あ〜ん』とかしかけて、気分が乗ってきたら『失礼いたします』だし、こりゃあカップルだからってあんまり変なことは出来ないなと思って、普通に会話してて、なんかおかしな話題になって大笑いしてたら、また『失礼いたします』だもの。もう笑うしかないよね」
「そ、そうなんだよな」
 うん、うん、と直也が同意した。
「それに、いくらなんでももう来ないだろうと思って、直也が隣に来て……」
「そうそう! 浴衣から手を差し込んだ途端に、『デザートでございます』だったっけ?」
 さすがにデザートの後に運び込まれるものは無いだろう。二人ともそう思って油断した。口移しでシャーベットを食べさせあいながら、そのまま唇が首へ。さらにはだけた浴衣の胸へ。
「あん、ひく……」
 わたしが声を漏らし、「もう感じてるの?」と直也が囁き、わたしが頷いて……。
「久しぶりに、ひとつになれるね」
「ああ」
 お互いの手が、お互いの性器に差し掛かる。わたしは直也にもらったパンティーを履いていたけれど、直也はノーパンだった。既に堅くそそり立ったそれが、わたしの手の中ではちきれんばかりになっていた。そして、畳の上にお互いの身体が崩れたその瞬間。
 そして、ノックの音。扉越しに、「お下げしてもよろしいでしょうか」
 
 二人とも大爆笑になった。とてもエッチなムードになりそうもない。笑いすぎてお腹が痛くなった。左手でわたしはお腹を押さえ、傾いた身体を支えようと右手を床に突いた。……はずだった。
 けれど、その手は偶然にも隣に座っていた直也の大切なところに触れた。
 ギンギンになっている。お腹がよじれそうになるほど笑い転げるわたしの横で、直也もそれに呼応しながらも、これから始まるであろう激しい愛の営みを前に、既にめいっぱい欲情していたのだ。
 偶然触れただけなんだから、「あらやだ」とか言って、サッと手を引っ込めても良かったかもしれない。むしろ、それが普通だろう。
 けれど、せっかく触れた直也自身。本当に本当に久しぶりのセックス。もう、手放したくなかった。
 直也の大きくなったソレをわたしは握り締めた。アソコがジュンと湿ってくる。
 浴衣をめくり、わたしは「お舐めしてよろしいでしょうか」と言った。直也の返事を待たずに、唇を近づける。

 わたしは直也に注文をつける。「座椅子に座って。で、テレビを観てて」
「え? テレビを観るの?」
「そう。何事も無かったように、テレビを観ててね」
 直也は言われたとおりにした。けれど、下半身は丸出しである。
「平然と、テレビを観てるのよ」
 わたしは直也のそそり立つモノを握り、2〜3度しごきあげる。「ぅぅ」と、小さく唸る直也。
「いっぱい、してあげるね」
 色々なおしゃぶりテクニックで直也を喜ばせてあげたかったけれど、煮えたぎった直也のものを手にすると、わたしが我慢できなかった。思わずむしゃぶりついてしまう。
 唇と舌をしっかりと密着させ、顔を前後に動かす。わたしの目の直ぐ下で、直也のモノがわたしの口に入ったり出たりしている。
 唇がカリを通過する度に直也のアソコはピクピクと反応する。とてもわかりやすい。素直なおちんちん。ジュルジュルと先端から愛液が溢れ出る。
 前髪をかき上げ、彼のを咥えたまま、彼の表情を盗み見る。直也はわたしに言われたとおり、テレビを観ている。男が他のことをしているというのに、女は必死になってペニスを頬張る。なんて淫靡なんだろう。欲しくて欲しくてしょうがない女が、なんとかしてあまりその気ではない男を、その気にさせようとしている。女には自信がある。わたしに舐められて、平然としていられる男なんていない。それどころか、いつのまにか男は夢中になっている。
 そんなことを考えながら、わたしは舌先でカリの裏をツンツンと突付いた。強くは無いが確かな快感に、直也は薄く唇を開いて目を細めた。
 うふ。感じてる、感じてる。
 嬉しい。
 焦れったさに耐えかねて、直也が腰を浮かす。でも、そこにいる女は自分の股間に顔を埋めているだけで、次の行動に移ろうとしない。
 直也はいつまで我慢できるかしら。急激に発情して、わたしを押しのけ、そして襲い掛かってくるだろうか。
 直也と肌を合わせるのはまだ3回目だけれど、彼のものをおしゃぶりしていたら、これまでの2回のセックスの経験も踏まえて、彼がどうやって昇りつめていくのか、なんとなく身体が理解しつつある。
 彼は女の子に嫌われるのを極端に恐れるタイプ。それは出会いの頃からわかっていた。自分の主張も通そうとするけれど、お願いをすればそのとおりにしてくれる。
 だから、今はわたしの好きなようにさせてくれている。
 そんな彼だから、このまま射精に導くことはたやすい。もちろん、ギリギリのところで射精させずに快感を与え続け、もう我慢できないとばかりに野獣化させることもわたしには出来る。
 でも、せっかくの長い夜。今日は誰にも邪魔されることは無い。
 決めた。射精の寸止めを何度か繰り返し、でも彼が野獣化してしまう前に、今度は彼に奉仕させてやろう。
 わたしの口と直也のものをしっかりと馴染ませてから、咥えるのをやめた。

 今度は舌先で彼のもの全体を責める。ペニスを優しく握ってゆっくりピストンしながら、袋を舐める。表面をツツツと微妙に這わせながら、時々タマタマをくいっと押し上げる。タマへの直刺激はあんまり男の子は喜ばない。だから、これは、あくまで刺激に変化を与えるため。その間も、右手のゆうるりとしたペニスへのマッサージは継続したまま。
 でも、決して敏感な先端には触れない。透明な液体が「早く触って」とばかりにじくじく湧き出している。わたしのアソコももうビチョビチョだ。わたしも触られたいけど、今はこのままでいい。大洪水になるまで、放置。そこへ彼の全てを導くの。

 優舐、甘噛、球上を繰り返し、わたしはその後、ゆっくりと肛門へ向かって舌を移動させた。
 直也のアナルが開発されているかどうかは知らないけれど、始めての肛門舐めだったとしても、大丈夫。わたしには自信がある。トロけるような快感を与えてあげるわ。