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俺は21歳で、自動車関連の製造工場に勤めている。派遣社員というやつだ。この一年ほどで、俺の回りには解雇された奴らがたくさんいた。勤務態度も良くて皆勤を続けていた俺は、残してもらえたというわけだ。
少し後ろめたいけど、正直言ってホッとした。それからはいっそう仕事を真面目に取り組むようになった。
残してもらった少数の派遣社員の中に、Tさんはいた。Tさんはたぶん、45、6歳だと思う。高校生の子供がいると言っていたから。でも見た目は、40歳くらいに見えた。
俺はKさんが好きだった。女としてという意味じゃない。実際Tさんは色っぽいというには程遠かった。やせて華奢だったし。
女を感じさせるような派遣社員は他にいっぱいいた。
なんと言うか俺は、人間的にTさんが好きだった。Tさんは男の中に混じって、指先を油で真っ黒にして頑張っていた。決して不満を言わない人だった。笑顔が可愛らしい、そばにいるとホッとする人だ。いつの間にか俺は、Tさんを見かけると目で追う様になっていたんだ。
その日は、不況のあおりで、仕事は3時に終わった。今はこんな日が多い。俺はアパートへ自転車をこいでいた。
「おつかれ−、N君」
信号待ちをしていた俺の横に、自転車に乗ったTさんが並んだ。
「あっ、Tさん。こっちなの?」
「うん。今日は買い物に行くんよ。チラシで見つけたの。安売りのスーパー……。N君はこっちやったっけ?」
Tさんの笑顔には、目尻に少し皺ができていた。でもすごく可愛いらしかった。俺とTさんは並んで自転車を押して、話しながら歩いた。何故だか、すごく楽しかった。
俺には同い年の彼女がいて、その彼女と、1年位前、童貞を捨てたんだ。彼女のことすごく好きだし、休みの日に一緒に歩いていると、ずっとこうしていたいと思うくらいだ。
Tさんは俺と倍以上年齢が離れている。おばさんだよ。でも、何でこんなに楽しくて、可愛らしく思うんだ?
Tさんは服のセンスが良かった。派手じゃなく、ヤングな格好だ。しかもよく似合ってて、若く見えた。それでか?
「N君、今の頑張りなら社員になれるよ。きっと。頑張りんさいよ」
Tさんが俺の背中をポンと叩いた。何故だかドキッとした。
「N君はどこから来よるん……出身は……」
「○○県だよ」
「ご両親が心配しよるやろうねえ……。彼女は? 向こうにいるの? それとも、こっちに来てから出来たんかね? うふふっ」
すげえ可愛らしい……。コロコロと笑うTさんの、Tシャツから出ている細い二の腕に目がいき、そんな自分にびっくりした。
「じゃあまた明日」
Tさんが自転車にまたがり、俺の前を走っていこうとした。サドルの上に、ジーンズの小さなお尻が乗っていて、目を凝らしていた自分が恥ずかしくなった。
その時、Tさんの自転車のスタンドが、後輪から外れかかってガタガタしているのに気づいた。
「Tさんっ! どうしたのっ? 後ろっ! スタンドッ!」
キッと自転車を止めたTさんは後ろを振り返り、「うん……、錆だらけでみっともないから、はずして取り替えようとしたんやけど、固いんよ。錆びてて」
「俺がやってあげるよ」
「えっ?」
「ホームセンターで新しいスタンド買ってさ。俺のアパートに工具あるからさ。油もあるし」
「でも……」
「いいって。仕事も早く終わったんだし。さあ、先に買い物に行く? ホームセンターはその後でいいね」
今思うと、俺はもっと、Tさんと歩いていたかったんだと思う。きっと。
(心に残る最高のセックス体験告白掲示板より 2009年6月14日 )
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