「係長、ちょっといいですか?」 |
彼女の用件は「お昼ご飯に付き合ってください」だった。 |
妻が子を連れていなくなってから、給料は全て小遣いになった。住宅ローン・公共料金・定期券その他固定支出を支払うと、意外なほど手元に残らなかったが、それでもそれまでの「小遣い」より遥かに多かった。 |
由香とのせっかくの昼食なので、「お昼のミニ会席」でもどうかと思ったが、由香のリクエストで「Aランチ」となった。 |
由香はAランチふたつを注文すると、「係長、見て欲しいものがあるんですけど」と言った。 |
俺はどう答えようか迷った。会社の仲間の間でも、飲み会などのときは「フライデーナイトアベニュー」が話題になることはある。いまさら「なんだ、それは?」としらばっくれるのは不自然だ。 |
俺の反応には何の関心も示さず、由香は言った。「間違いないのね、この場所」 |
その夜、俺は由香と寝た。 |
ほんの数時間だが熟睡することが出来たようだ。俺は由香と別々にホテルを出て会社に向かった。 |