フライデーナイトアベニュー
5月の2回目の金曜日 その(3)





 俺はアヤコとホテルに向かった。
 さっきまで俺とアヤコは公園でセックスをしていた。そして、俺はアヤコの中に射精し、アヤコはそのエキスを一滴も漏らしたくないと自分が穿いていたパンティーを丸めて蜜窪に押し込んだ。その上に、Gパンを穿いた。
 「スカートにすれば良かった。なんだかあそこがごわごわする」
 「おまんこにショーツを押し込んでるからだよ。おまんこに物を挿入したまま町を歩くなんて筋金入りの淫乱だな」
 俺はわざとそんな風に言った。
 「エッチな気分のときに、淫乱になれないほうが不幸だと思うけど」
 それはそうかもしれない。
 俺たちはホテルに入った。バスタブに湯がたまるのも待ちきれずに浴室にアヤコを連れ込む。俺は丁寧にシャワーをアヤコにかけてやった。足元に流れ落ちる湯が汚れている。さすがに野外でのセックスは泥や誇りが体にまとわりつく。
 ソープを身体に馴染ませながらお互いの肌に掌を重ね合わせると、それはもはや身体を洗ってやるサ行ではなく、プレイの一部だ。感度を高め合いながら興奮の息を漏らす。
 アヤコの蜜窪は、さっき公園で俺が流し込んだ精液とアヤコが新しく分泌したラブジュースでどろどろになっている。俺はアヤコを四つんばいにさせて後ろから挿入した。
 アヤコの襞は俺の欲棒にぴたりと絡み付いてきて、俺の腰の動きに合わせて快感を引きずり出してくる。俺はアヤコの奥を思いっきり突き上げた。
 「ああ、ああ、あなたのそれがいい。吐きそうになるぐらい気持ちいい・・・、はあ〜ん」
 そうこうするうちに湯船にお湯がたまる。俺はアヤコから離れ、シャワーで石鹸の泡と体液を洗い流し、それからバスタブに身を沈めた。
 俺が先に入ってあぐらをかいて座る。その上にアヤコが重なるようにして腰を下ろした。膣口にペニスの賛嘆をあてがって、ゆっくりと。
 「俺はじっとしているから、こんどはおまえが動けよ」
 「うん」
 俺は後ろからアヤコの胸に手を回し、乱暴にもみ、乳首をつまんでひねったり引っ張ったりした。アヤコが腰を上下させるたびにアヤコのバストは形が変わるほどに引っ張られる。
 気持ちいい、気持ちいいとアヤコは連発した。でも、時々「ああん、気持ち良くない。お湯が、おゆがあ」
 水の抵抗で思い通りからだが動かせないようだ。だが、その歯がゆさも好い。
 俺は何度も、今にも放ってしまいそうになりながら、浮力と抵抗で動きが制限され、ぎりぎち止まってしまう。射精寸前の快感をこれまでにないほど長く感じながら、でも、アヤコの中に放出してしまいたい欲求をいよいよ抑えることができなくなってきた。
 「ああ、もう来て、来て、イク、イク、イクゥ〜ンン」
 俺は左手でアヤコの腰を捕らえ、お尻を少し浮かし加減にしながらガンガンついた。右手の人差し指の指紋でクリトリスを激しくこすりつけながら。
 熱いしぶきをほとばしらせると、アヤコはぐったりとして、ため息をついた。
 俺たちは挿入したまましばらく余韻を味わっていた。

 俺とアヤコはベッドに移動して、またすぐに肌を合わせた。
 俺はアヤコの中にそれから3回射精をした。アヤコが何回イッたかなんてわからない。裸のままでベッドの上に並んで寝転びながらテレビを見ていると、アヤコはおなかがすいたと言い出した。
 俺は、ホテルを出て俺の家にこないか、と提案した。
 「まさか、そんなことできるわけないでしょう?」
 「いいんだよ。妻も子も出ていっていないから俺一人だし」
 「そんなこと言ってないの。わたしたちってこういう関係なんだから、けじめつけとかないといけないと思うわ」
 「いいんだ」と、俺は少し強い口調で言っていた。
 「本当にいいんだ。俺がそうしたいんだよ」
 「でも、今はいいとしても、あなたがわたしと逢う気持ちがなくなって、それでもわたしが別れたくないって、家にまで押しかけたらどうするの?」
 「アヤコはそんなことはしないよ」
 「もう」
 「本当にいいんだよ、かまわないから来てくれないか?」
 「わかったわ。道を覚えないようにする」
 俺達はスーパーマーケットで買い物をして、俺の家に向かった。

 翌朝、目がさめるとアヤコはいなくなっていた。書置きが残っていた。「犬の散歩のバイトがあるので、出ます。ゆっくりお休みになってくださいね」
 それで俺は思い出した。アヤコは俺の古い友人である木村が始めた犬の散歩屋のアルバイトをしているのだ。
 そんなことをしても何の意味もないのはわかっていたが、俺は木村に電話をかけた。
 「今、いいか?」
 「ああ、いいけど、いったいどうしたんだ、こんなに朝早く」
 「いや、目がさめたら、なんとなく、こないだの彼女のことを思い出してしまったんだ。犬の散歩だから朝は早いんだろう?」
 「ああ、彼女か・・・、気に入ったのかい?」
 木村は「こないだの彼女」だけで、俺がアヤコのことを言っているのだと察したようだった。
 「そうだな。まあ気に入ったかな?」
 「じゃあ、今度デートでも誘ってやれよ。おまえは妻子に逃げられ、あの子も彼と別れたばかりだと言っていた。ちょうどいいじゃないか」
 「そりゃあ、ちょうどいいな」
 「おまえの電話番号を教えておくよ」
 「それはいいけど、いいのかい?」
 「何が?」
 「おまえのほうこそ、お気に入りじゃないのか?」
 「社長が従業員に手を出すとろくなことはない」
 「俺ならいいのか?」
 「ま、あんまり良くはないけれど、仕方ないな。彼女を不幸にするなよ」
 「何言ってるんだよ」
 「あははは。俺達とであったことがそもそも不幸かもな」
 「ところで、おまえは散歩に出なくていいのか?」
 「土日はアルバイトに任せている。最初のが戻ってくるまでもう一眠りできる」
 「そうか、悪かったな。じゃあ切るよ」
 「そうそう、バイトじゃなくて、ボランティアの話しだけどな」
 「足腰の弱った一人暮しの老人でも、散歩を引き受けるから犬と暮らしてくださいってやつか?」
 「そうそう。彼女が一番乗り気だし、もしかしたらおまえにも何か相談するかもな」
 「相談? 俺にできることなんか何もないぞ」
 「ま、話だけは聞いてやってくれ。じゃあな、おやすみ」
 「ああ、お休み」

 電話を切ったとたんに、電話がかかってきた。
 (こんな時間に誰だろう?)
 ベッドに半分もぐりかけていたので、受話器を取るのが億劫だった。
 そのうち留守番電話が応対した。
 「あ、あれ? 留守? それともまだ眠っているのかしら。さっきまで話中だったのに、違うところに電話していたのかしら」
 由香の声だ。
 「ええと、係長さん、今日、暇だったらデートしてください、と言おうと思っていたんですけれど、留守なら仕方ないですね。また、会社で声をかけてください。こっそりメモを手渡されて、開くと何時にどこそこで、なんて書いてある、というのは少し憧れなんです。よろしくお願いします」
 由香が俺との逢瀬を再び望んでいてくれるというのは嬉しかったが、今はとにかく眠りたかった。




8月の3回目の金曜日 その(1)

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