俺が夏祭りのチーフに選ばれたのは、7月の始めだった。 |
夏祭りレディーのまず最初の条件が「容姿端麗」であることから、「女を外見で判断するなんて」と反感を持つOLも少なくない。だが、実際に選ばれたとなると、「容姿端麗なだけではなれない」ことはわかっているので、みんな自分が一定レベル以上の女だと認められたと喜ぶ。さらにはつけあがる者もいた。もともと顔や頭に自信があり、選ばれて当然というような態度を最初からとっている輩達だ。要領だけを心得た中身の伴わない娘だって存在する。地方支店のお偉方の目をだまくらかすくらい朝飯前なのだろう。 |
レディーマスターはここ数年、人事部副部長を務める猪熊女史が努めていた。40代後半。仕事が出来るのは皆の認めるところだが、彼女についてそれ以外のことはまるでわからない。何しろパーソナル情報に探りを入れようと人事部にアプローチしたところで、彼女が人事部の情報の金庫番なのだからどうしようもなかった。 |
「久しぶりね、ヨシフミ・・・」 |
金曜日の夜。明日の10時からオープンする夏祭りを控えて、俺は最後のチェックを終えた。腕時計を見ると11時に近い。夏祭り準備室と名付けれた会議室に泊まりこむより仕方ないかなと思った。 |