ロシアンルーレット

敗 者 復 活 戦

 

27.

 店を開けていると、思い出したように客がやってくる。店内を一瞥して声もかけずに去っていく場合も少なくないが、注文する客もいる。その都度、真也はおばあさんの指導を受けながら、焼きソバを焼いたり、カレーライスを盛り付けたりした。

 カレー用の皿は、一昔前の「喫茶・軽食」と看板を出した“喫茶店の顔をした大衆食堂”でよく使われていた、楕円形の深い皿だ。芸がないなあと思うものの、新しい食器など揃えることなど出来ようはずも無い。
 真也はカレー用の皿にご飯を盛り、ルーをかけた。それを盆に載せ、客席に運ぼうとしたその時である。おばあさんに制止された。

「ご飯の盛り方が汚い」
「ルーがこぼれている」

 おばあさんは見本を見せてくれた。真也はただ炊飯ジャーからしゃもじでご飯をよそっただけであったが、おばあさんはさらにしゃもじでご飯の縁をなぞるようにして軽く押さえて形を整えた。
 その後にルーをかける。お玉から雫が垂れ、皿の端につく。それをダスターで丁寧に拭った。

「たかがカレーだとバカにしてないかい? 金を取って客に出すちゅうんは、こういうことじゃ」
 おばあさんは、よそいなおしたそのカレーを客の所へは持っていかず、脇に置いた。そして、真也に言った。
「やってみな」
 真也は言われた通りにし、それを客に出した。

 手元には、真也の失敗作とおばあさんの見本、ふたつのカレーライスが残された。おばあさんはそれをおもむろに捨てた。
「あ、もったいない……。昼食に僕達で食べれば……」
「じゃあおまえさんは、失敗するたびにそれを食べるのか? こんなのは投資のうちだ。それに、これだけ客が少なかったら暖房だけでどうせ赤字じゃよ。スキー場がオープンするまでは、全て投資だ。さあ、しっかり接客を身に付けておくれ」
「はい」と、真也は答えた。

 真也のやる気に応えて「好きなようにやればいい」と言ってくれていたおばあさんであり、また真也もがんばって稼ごうと思っていた。「良い商品を自信を持って売りたい」と就職活動をし、面接のたびにそれを言葉にし、そして不採用通知ばかりを受け取っていた真也が、やっと自分の理想を実現できるとはりきった。しかし、実際の商品ラインナップは凡百の古びた土産物屋兼食堂でしかない現実に打ちひしがれた。もっともっと、この店ならでは、自分ならではの工夫がしたかった。欲求不満を感じていた。
 だがこのとき、真也はようやく「自分がまるっきりの素人である」ことを思い知った。

 面接会場で、まだ社会にすら出ていないヒヨッ子の自分がいかに理想論や夢を語ったとしても、相手にされないのは当然だった。面接官は何十年と自分で稼いだ金で飯を食ってきたプロ中のプロだ。就職活動中の学生がいくら耳障りの良い言葉を吐こうとも、絵空事でしかないのはわかりきったことだ。真也はようやくそのことに気がついた。

 ならば会社は新人に、すなわち面接官は自分に、いったい何を求めているのだろう?
 何を判断材料にして、「こいつは使える」「使えない」「我が社に欲しい」「我が社にいらない」を判断しているのだろう?

 思索に耽りつつあった真也は、顔馴染みらしい客に声をかけられ、「まいど!」と元気良く返事をした。かつて、おばあさんが1人でこの店を営業していた頃から付き合いのある、出入りの業者さんだった。
 そして真也は、接客の技術や心がけのみならず、そういった業者との打合わせで、プロと素人、ベテランとヒヨッ子の違いを思い知らされることになった。

 旧知の営業マンや旅行業者が来れば、おばあさんは気安く世間話をしながら、しかし、若いスタッフ(真也のことだ)を交えた今年の営業のことにしてきちんと説明をしている。それならと反応してくる相手の会話にも機敏に返答をする。それは必ずしも真也のやりたい方向性とは一致していない。けれど、とても現実に即していた。「それは違うんじゃないか」と思うことがあっても、営業マンや旅行業者のスタッフがふんふんと頷く姿を見れば、きっとおばあさんの方が正解なのだろう。
 それにもし真也一人だったらどうだろうか。とてもあんな会話はできないだろう。「少し考えさせてください」とか「それはオーナーに訊いてみないとわかりません」とか返答できればマシで、下手をしたら「そんなことまで考えないといけないのですか?」と口走ってしまいかねない。

 例えば、ソフトクリームの仕入れである。
 業者の納品は月曜日と木曜日の2回である。納品は午後から夕方にかけて行われるから、月曜日には、月曜の午後から木曜の午後までの分を仕入れる必要がある。発注から納品までは中一日。土日は業者は動かないから、月曜日の納品分は土日を除いて中一日を挟んだ「木曜日」に発注をしなくてはならない。まだ週末も迎えていない、つまりその週の客の傾向すらつかめていない状態で、来週の発注をしなくてはならないのだ。しかも、木曜納品分は中一日を挟んだ火曜日の発注だ。火曜日から木曜日の間にどれだけの品物が売れ、木曜日にどれだけ届けてもらわないといけないかというのを判断しなくてはならないのである。
 おまけにスキーシーズン突入直後には「お正月」という難物がある。正月は業者も休むし、納品スケジュールもイレギュラーする。
 ソフトクリームひとつとってもそうなのだから、メニューをひとつ増やすということがどれだけ大変なことか。
 ひとつの食材がいくつものメニューに共通で必要だったり、それぞれの食品には賞味期限があったり、ストッカー(業務用の冷凍庫・冷蔵庫・常温での保管場所など)のスペースにも限界があったりと、考えることは山ほどある。

 これは経験と勘以外に頼るべきものはない。そしてその勘とは、これまでの人の動きや、天候、そして世間の動きとか流れとか雰囲気といったものから「なんとなく」しかし「相当確実に」導き出される、いわば職人の領域だ。
 もはや真也のごとき素人が口を出すべき問題ではなかった。

 何年か店を閉じていたので、おばあさんも初対面の営業マンがやってきたり、電話がかかってきたりする。そんな場合もおばあさんはテキパキと応答した。
 店内をざっと見渡しただけでメモも取らず、お土産ものも発注していく。そこには頭でっかちの夢や理想などない。ただ経験に裏打ちされた現実があるだけである。

「自分には何もできない。することがない」
 そう悟った真也は何度もディスプレイをやり直したり、掃除を念入りにしたりの作業を繰り返すばかりである。しかし、それもおばあさんに止められることがある。客の食事中だった。どういう立場の人かはわからないが、オープン前のスキー場で慌しく食事をするのだから、なんらかの開業・準備要員である。責任も重い。そういう人達にとって、昼食はひと時の安らぎだ。その横でどたばたと作業をされたらたまったものじゃない。スキー場がオープンした後に、そんな店に客など送り込んでくれないとおばあさんは真也を諭した。

 なるほど、自分は徹底的に素人なのだと、真也は落ち込んだ。
 もはや夢や理想を振りかざしてモノを言うことなど真也にはできなかった。夕食時に、今日、感じたり考えたりしたことを正直におばあさんに言った。それは「教えを乞う」立場からだった。
 おばあさんの返答は単純だったが難しかった。
「全ては、目配り気配りじゃよ」
 経営にマニュアルなどないのである。

「こんばんわあ」
 祥子がやってきたのは、午後9時近かった。そろそろ店じまいしようとしていたところだった。スキー場がオープンしたら、まだまだ労働の真っ只中である。11時まで営業をうたっているからだ。「片付け」の作業に入れるのはいったい何時になることやら。真也はそんなことを考えて半ばうんざりしながら厨房と調理器具を丹念に洗っているところだった。
 しかも、カレーライスの盛付の杜撰さを指摘されて以降、気分は落ち込み気味である。そこへ、底抜けに明るい祥子の声。救われたような気分だった。
「遅くなっちゃったあ。受験も近いからねえ」
 訊かれもしないのに、祥子は事情を説明した。言い訳がましくないところが真也に好印象を与えた。
 待ちかねたようにキャンディが「わふぉ、わふぉ」と息をしながら祥子に駆け寄ってくる。

 おばあさんは真也に、祥子と一緒にキャンディの散歩に行くように命じた。
「でも、まだ店の片づけが……」
「わしがやっとくからええ。冬のスキー場の夜の寒さを知っておかねばな。この寒い中、客はわざわざ足を運んでくれる。それを知ったら、お客様の存在も少しはありがたく思えるじゃろうよ。モノを買ってお金を払ってくれるから客がありがたい存在というわけではないんじゃ。それを取り違えると商売は成り立たん。勉強じゃと思うて行ってこい」
 真也は素直に従った。
 真也にとってもはやおばあさんは、店のオーナーでも、一緒にひとつの店をきりもりする仲間でもなかった。師匠である。
「気分転換も兼ねて、な。毎日毎日、朝から晩まで、店の中にいたら、気分が滅入る。気分転換の技術も、接客術のひとつじゃ」

 おばあさんは2人の背中に、「道が凍っとるかも知れん。気ぃつけてな」と声をかける。
 おばあさんに見送られて、真也は祥子と一緒に夜道を歩いた。キャンディのリードは祥子が握っている。背後でゆっくりと雨戸の締まる音がする。

「どお? 調子は?」
 祥子に訪ねられて、真也は「まあまあかな」と返事した。頭の中に浮かんだフレーズは「なかなか大変だよ」だったが、なぜかそれはそのまま口をついて出てこなかった。
「そっちは?」
「何が? 宿の方? 受験?」
「両方」
「どっちも、まあ、大変かな……」

 祥子は空を見上げた。真也もそれにつられて星空を見上げる。月は出ていなかったが、明るい夜空だった。無数の光源がちりばめられていた。「夜」のイメージを覆すほどの照明の数々がそこにはあった。あの星たちのひとつひとつが、何光年、何十光、何百光年の彼方にある。あるいはそれ以上かもしれない。今は既に無くなってしまった星もあるだろう。なのにその後も、気の遠くなるような年月をかけて光はここまで届いているのだ。
 悠久の時間の流れがそこにはあった。
 自分はなんて小さい存在なのだろう? その小さい存在が、ほんの些細なことに翻弄されている。それが人生ってものなのか?

「スキー場の宿といっても、うちは一応、通年営業だから。いつも通りといえばそうだし、一番忙しい時期を前にして準備が大変といえば、それもそうだし……」
「それに比べて受験はたった一度の経験ってわけか」
「一度だけだと思えば乗り越えられるような気もするし、初めてでこんなものうまくいくわけないじゃないのと思えば、なにもかも失敗してしまいそうだし」
「そうだね」
「まあ、やるだけやるしかないよね」

 やるだけ、やる、か。真也は祥子に見透かされているような気がした。
 立派なお題目を唱えたって、土産物店兼食堂の経営なんか、自分は全くの素人。でも、手がけたからには、やるだけやるしかない。
 見透かされた上で、励まされているような気にすらなった。

「走らないの?」
「うん。道が凍ってたら危ないでしょ? それに、体力を温存しなさいって、親にも先生にも言われた」
「まわりの皆が気遣ってくれてるんだね」
「どうかなあ。スキーシーズンを前に、怪我でもされたら困るって思ってるんじゃない、親は」
「それもあるけど、肉親だから、別にスキーシーズンは関係ないだろ? 親ってそんな打算的なものじゃないよ」
「でも、先生は打算的よ」
「どうして?」
「進路の決まらない生徒をいつまでも抱えているのは困るもの。あたしは陸上の方で推薦入学とかOKだから、受験勉強っていっても悲壮じゃないけど、そうでない友達もいるものね。ていうか、そっちが普通よね」
「うん……。まあ、そうかな……」

「先生なんて、生徒がどこへ進学しようが、就職しようが関係ないの。ともかく進路が決まって卒業すればね。進路相談の3者面談なんてバカバカしいのよ。あなたの成績ではここは無理、ここなら大丈夫。そんな振り分けがなされるだけだもの。本人の希望も親の期待も関係なし。そのくせ、成績より低いところを受けたいって言えば、『もったいない』だもん」

「キミはどうしたいの?」
「……ちゃんと名前で呼んでよ。祥子って。あたしは小野さんのこと、真也って呼んでるでしょ……だっけ?」
「何度か、あるよね」
「だよね」
「エッチの時に」
「もう、バカ」
 祥子が真也の肩を叩く。その手にこめられた力が、少しだけ痛くて心地よかった。

 二人がキャンディの散歩から戻ると、おばあさんの姿はなかった。奥に引っ込んで眠っているのだろう。物音すら聞こえない。キャンディを家の中に入れ、キャンディ用の器に水を注いでやると、嬉しそうに口を寄せた。
「じゃあ」と真也が軽く右手を上げると、その手をつかみ、祥子が言った。
「じゃあ、じゃないでしょ」

「じゃあ」は普段より声が大きかったが、おばあさんがおそらく就寝しているであろうことに思い当たったのか、「じゃないでしょ」はいつもより声のトーンを落とした。
「抱いて」
 祥子は爪先立ちをして、真也にキスをする。ここまでならかわいい女子高生だと言えるだろう。けれど、そうではない。
 祥子はキスをしながら真也の股間に右手を添えた。

「なにが、『じゃあ』よ。真也のスケベ。こっちはもうすっかり硬くなってる」
「祥子ちゃんが触るからだよ」
「そんなことない。触ったときにはもうカチカチだった。でも、真也のって、この程度じゃないのよね。知ってるわ、もう」
 祥子は真也の手をとり、自らの乳房に導く。
「わかる? 乳首、もう立ってるわ。アソコも濡れてるの。欲しくて欲しくてたまらないの」

 真也も祥子も全裸になり、ひとつの布団に入った。
「なんか、こうしてるの、とっても自然。本当の恋人同士みたいな気がするの」
「いや、僕には……」
「わかってるわよ、彼女がいるのは。でも、あたしが誘惑してるってわけじゃないからね。双方合意の上よ」
「セックスフレンドみたいだな」
「あら、違うの? あたしたち、セックスフレンドよ。あたし、真也のこと、愛してなんかいないんだから。ただ、したいだけ……ん……」
 喋りながらも、祥子は指先を動かして、真也に快感を与える。
「ねえ、真也も触って。ん……、そこ……、気持ちいいわ、とっても……。あ、そこがいい。もっと触って……いっぱい。あたし、クリトリス、感じるの。……ん、あん、あん、んん、んあ……、もっとよ、もっと。あ、気持ちいい、そこ、そこ〜ぉ」

「ああ、真也あ……〜〜っ」
 真也の愛撫を受けてよがり声を上げながら、祥子も真也に触れた指先を震わせた。
「ねえ、これで、いい? ねえ、気持ちいい?」
「十分だよ……」

「真也って、大人だよね。上手……、クリトリス、触られてるだけなのに、なんか、すごく……」
 祥子は可能な限り足を開いている。
「しゃぶって、あげようか?」
「ああ」
「ねえ、真也も舐めてね。シックスナイン、しよ……」

 掛け布団を跳ね飛ばした二人は、体制を入れかえる。
「やっぱり、大きいのね。口に入るかしら」
「こないだ、舐めてただろ?」
「結構、苦しいのよ。でも、いいわ……あ、そこ……、あ、はあ、はん、ああ〜。舌、舌、入れて、アソコ……。クリちゃんも、吸って、吸って、吸ってええ〜〜。ああ、お願い」
「俺のも舐めてくれよ」
「ん、いいよ。あ、大きい……。これが、あたしの中に入ってくるのね。……ステキ……、んん、んちゅ……、ぴちゅ……」
 祥子はわざと音をたてるようにして舌を動かした。

「ほら、いつまでも舌を這わしてないで、早く咥えてくれって」
「だって、大きすぎて……、んん〜〜〜!!!」

 真也は腰を振って、無理やり祥子の口の中にペニスを挿入した。
 大きくて苦しいと言っていた祥子だが、いざ咥えると、必死になって舌を絡ませてくる。サイズに無理があるからとさっきまで躊躇していたとは思えない濃厚な動き。
 指でされていたのとは明らかに異質の快感が真也の身体を駆け抜ける。
 恋人がいたわけでもなく、ただその場限りのセックスに身を任せてきた祥子。技を磨き上げる機会などあったとは思えない。にもかかわらず、しっかり真也のツボをおさえている。これはもはや才能というべきだろう。

 経験をした男から教わらなくても、ただ無意識に本能のままにセックスをしても、まるで「そのために生まれてきた女」と思わせるほどに快感をもたらしてくれる女性がいるのは事実だった。経験した中では、おそらくミコを除いて全てそうだったのだろうと真也は思う。また真也は自分もそうであることに気がついていた。一般的な男性器より、太く長く固く、そして長持ちして、かつ何度でもできる。女性との交わりを繰り返す中で、それを自覚せざるをえない女たちの言動。
 別にいい気になっているわけではないが、めいっぱい女をよがり狂わせたいと思う。
 セックスが始まると自分の性格が変わってしまうこともわかっていた。
 初めての商売におどおどしていた自分は、今はいない。女を悦ばせることに十分な自信をもった、立派な雄に変貌していた。

「あなたって、ほんと、最低だわ」と、祥子が言った。
 どんなに酷い評価を下そうと、祥子が真也に翻弄されているのは明らかだ。
「何が最低なんだよ。最高だろ? ほら、ほら」
 十分すぎるほどに濡れ、そして溢れているのに、突くほどに祥子の愛汁は湧き出してくる。経験のほとんどない男がただ自分の欲望だけのために腰を振るように、真也は狂ったように突いて突いて突きまくった。ミコは緩急をつけたほうが喜ぶが、祥子は激しくすればするほど、悦んだ。
「……ああ、だって、だって、だってえ〜〜〜、ああああ〜〜〜」

 快感で言葉が途切れる祥子。
「だって、なんだよ」
「今夜しようって約束してた……のに、……あ、く、う、イク、イキそう……」
「約束、守ったじゃないか」
「でも、ゴムなんて、用意してないんでしょ?」
「そんな暇なかったし、最初はちゃんと帰そうとしただろ。そっちがわかってて求めてきたんじゃないか」
「…いく、いく、あああ〜、もう、いく〜〜」
「わかってて、求めてきたんだろう?」

 言葉を発しながらも、真也は腰の動きを止めない。
「……そうよ、わかってて……、ああ、またイク、またイクよお〜〜、ああ〜〜。助けて、助けて、ああ〜〜……〜〜〜。だめ、だめ、だめって……て………。も、わかんない、なにもわかんない、ああ、ああ〜ん。……ねえ、もうイク、またイク、真也も、真也も来てよう」
「中で? いいのか?」
「いい、いい。中でいい、欲しい、欲しいの〜〜」

 まだ挿入をして1時間とたっていない。ミコとならまだまだコントロールして、昇り行く快感をたっぷりと愉しんでいる最中である。だが、祥子は本当に欲しがっていた。
 そして真也は祥子の中に大量の精液を放出した。
 その後も祥子は抜くことを拒み、祥子の絶頂のタイミングに合わせて、さらに3度射精した。

 3時間弱の間に合計4回も真也が放出することは珍しい。
 祥子はぐったりして動かなくなってしまったが、それでもトロンとした目つきで真也を見つめ、「まだ入れててね」と言った。
「真也って、ちっとも小さくならないのね。すごい……」
「祥子ちゃんも、相当イキまくってたじゃないか」
「うん。もう、身体が動かない。でも、はめたままが気持ちいいの」
「まだ感じてるの?」
「そう。ものすごく気持ちいいの。締め付けて、腰、ふりたいんだけど、もう動けない……」
「淫乱なんだね」
「そうかも……。でも、あたしをこんなにしたの、男達なんだから……」
「違うよ。そういう身体なんだよ、生まれつき」
「じゃあ、真也も淫乱だね」
「そうだな。多分……」
「ねえ、真也……、毎日、しようね。真也がいる間は、毎日したい。恋人になってなんて言わないから……」

 才能豊かな陸上選手、そして、家業を助けるデキた娘。この二つの顔はどこへ行ってしまったんだと思わせるほど、祥子は思いっきり女になっていた。

 

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