28.
あちらこちらで躓きながらではあったが、真也は店の準備を順調に整のえていった。 あれほど難しく感じられた「陳列」や「盛り付け」も、正式営業を前にボツボツと客がきたおかげで、それなりに慣れた。 手順を守り、やるべきことをきちんとやる。地道な作業の積み重ね。これが「難しさ」を乗り越える唯一の方法なのだと真也は悟ることにした。たかだが650円のカレーライスでも、ご飯の形を整え、レードルから垂れたるうをきちんと拭う、それらの動作を手抜きさえしなければ、決して難しくないのだ。 難しくないのに、おばあさんから注意を受けることがある。それは、うっかりしていた時だったり、これくらいならいいだろうと自分を甘やかしたり、妥協したりしたときだ。 おばあさんはお見通しなのである。 何度も同じことを指摘されるには恥ずかしい。そう思った真也はひとつひとつの動作が慎重になった。面倒だから、これくらいは大丈夫だろなどという手抜きもしなくなった。そして、それらはいつしか手順として自分の中に定着した。すなわちこれが慣れなんだなと思った。 |
これまでの真也は、自分の理想と「慣れ」とは、相容れないものだと考えていた。良い品物を丁寧に説明して販売する。それは一期一会であり、手順などない。しかし、そうではないと知った。 手順に漏れがないようとは、常に気を配ることであり、それは回数をこなすことで容易になる。慣れは悪いことではない。慣れる事によってよりクオリティーが高まるのだ。 バイト程度の経験はあっても、学生の真也には、当然のことながら社会人経験はない。バイトだからといって、言われたことをしているだけではダメなのは、経験上わかっていたが、求められているクオリティーがバイトと社員では違うのだと、このとき、初めて気が付いた。おばあさんは、真也のことを、学生バイトとしてではなく、社会人1年生として1から仕事を教えようとしてくれているのだ。 そう思うと、就職活動で机上の空論を振り回していた自分が恥ずかしくもなり、情けなくもなった。同時に、疑問も湧いた。社会人経験のない就職活動中の学生に、いったい企業は何を求めて、様々な試験や質問をするのだ? 筆記試験でも、面接でも、グループディスカッションでも、レポートや作文でも、採否を判定する経験豊かな社会人たちにとって、我々学生は「はるかに下の存在」なのである。 彼らは何を求め、何を見出そうとしているのか? さっぱり、わからない。そう考えると、就職活動対策なんて、どこに力を入れたらいいのか、それすらもわからなくなってくる。 「ほら、何をボーっとしてるんだい? 手を動かしな、手を」 おばあさんに声をかけられて、真也は我に返った。 同じ結果を出すのなら、より早く簡単に。同じ時間を作業に費やすなら、結果はより高度に。 いつも言われていることを思い出しながら、真也は仕事を再開した。目の前のことをとにかくきちんとやりとげなくてはならない。 真也の動きがスムーズになると、おばあさんとのコンビネーションも潤滑になった。お互いが「あ・うん」の呼吸をつかみ始めたのだった。 |
開店準備を進めながら、真也はスキー場がオープンした後のことをイメージした。 昼食時から店を開け、閉店がいわゆるアフタースキーの時間帯を含んだ夜の11時。この間、初心者の真也と、高齢のためいったんリタイアしたおばあさんの二人。果たしてこれで店の切り盛りが出来るのだろうか。 スキーシーズンはどんどん近づいている。 今年のスキー場開きは12月18日である。ゲレンデの一角で神事が営まれるが、真也やおばあさんにとってはほとんど関係なかった。雪の状態も心配である。毎年、初雪は遅く、降雪量は減る傾向にある。スノーマシンでゲレンデを整えることも出来るが、これも気温が下がらなければ使えない。スキー場開きを3日後に控えた12月15日、粉雪は舞うものの、積雪には程遠い状態が続いていて、関係者をやきもきさせた。 「自然が相手なんだから、のんびり構えているしかないのにねえ」 おばあさんはまさしく「のんびり構えて」を実践していたが、「そうはいかないのよ」と、遊びに来ていた祥子はため息をついた。 「既に予約は入っているもの。我が家もそのつもりで準備してるし。でも、雪がないとキャンセルが大量発生するから」 「ここ数年、スキー場開きに雪があったためしがあるかい? そんな時期に予約なんかとるからいけないんだよ」 「旅行会社が売るからね。『滑走不能時も保障なし』を条件に、激安パックをね」 「保障があろうとなかろうと、雪がなくて滑れなくちゃ、客はキャンセルするわな。けど、キャンセル料は入ってくるんだろう?」 「さあ、どれくらいの金額になるんだか。そのへんのことは、あたしは知らないから」 「雪は年々、遅くなる傾向なんだろ? 去年まではどうしてたんだよ」 ようやく真也が口を挟んだ。 「人口雪、降らせてなんとかゲレンデ1本確保してたけど、今年はまだ温度が高いらしいわよ」 「充分、寒いけど」 真也は首をすくめるポーズをした。室内はポカポカと暖房が効いている。 そういや、そろそろ自分の寝室も暖房を入れとかないと、部屋に戻ったときに凍えることになるなと真也は思った。 夕食もキャンディの散歩も店の戸締りも終えたひと時の時間である。誰も観ていないのにテレビがついていて、こたつの上にはお茶とスナック。そんなおしゃべりタイムだから、真也がこの場にずっといなくてはならないわけではない。 「さて」と、一声、真也は立ち上がった。 ストーブの火を入れ、それから風呂にでも入ろう。そうこうしているうちに寝室も暖まるだろう。 「あ、あたしがしてきてあげる」 さっと立った祥子は、右足を一歩踏み出した真也を追い越して、パタパタと2階へあがって行った。 「あんたたちもすっかり仲良くなったねえ。まるで新婚さんを見てるようだよ」 おばあさんの一言に、真也は心が痛んだ。 恋愛感情のない、いわばセックスフレンド。真也と祥子の仲を、おばあさんはどう見ているんだろう? ふたりっきりで部屋に籠ることも珍しくなければ、男女の仲を疑われても仕方ないし、祥子の声だっておばあさんの耳に届いているかもしれない。 おまけに、恋人と名乗るミコが真也のもとを訪ねてきた実績もある。 おばあさんは真也の女性関係や倫理観をどうとらえているのだろう。「女にだらしのない奴は、とっとと出て行っておくれ」などと突然言われたらどうしよう。 真也がいなくなって、それでお店の開店ができなくなっても、もともと廃業した店だったのだから、おばあさんは痛くも痒くもない。出ていけと言われて、出て行ったとしても、真也は元の生活に戻るだけだ。帰宅のための交通費程度は、ミコから既に借りている。 実害は無い、といえば無いのだけれど、真也は無性にさみしさを覚えた。 もう、ここが、今の自分の居場所になっている。 そう実感した。 |
真也が風呂から出てくると、照明は落とされ、もう居間はシンとしていた。既におばあさんは床についているのだろう。2階にあがると、部屋では祥子が待っている。もう毎日のことだ。 回数を重ねるごとに、真也と祥子のセックスは、一度に何度も交わるのではなく、一回のセックスに時間をかけるのが主流になった。 とはいえ、恋人がたまの逢瀬にお互いの身体をむさぼりつくす、というのではない。 真也はお店を本格開店に向けてラストスパートをせねばならないし、祥子だって学校があれば、帰宅後の家の手伝いもある。それぞれ自覚しているので、なんとなくセーブしていた。 今日は昨夜のような、主導権の奪い合いをしなかった。そのかわり、それぞれがじっくり相手を愛撫し、受け入れ、その後に攻守交代して……、というのを何度か繰り返した後、正常位で挿入した。 真也の人並み外れた大きさ・硬さも、時間の長さも、祥子は最初からそれほど苦労をせずに受け入れていたが、今ではさらに進んで、締め付けてくる。愛液の分泌量も初めての交わりの頃にくらべたら、3倍から4倍は溢れさせていた。真也も祥子も、特定の相手にこだわらず奔放なセックスをし、どんどん肉体的快感を追及するタイプだし、好き者が好き者と出会って、まさしく性を謳歌している。そして、大量の愛液は、ますます激しいセックスを可能にし、ふたりを官能の池に深く深く沈めた。 |
一人用の布団は、二人で入るにはやはり小さい。だから真也と祥子はどうしても身を寄せることになる。 「ねえ、あさって、うちの慰安会があるの」 祥子の唇が動くと、真也のそれにサワサワと触感が伝わる。ふたりの顔はキスの最中ほどに接近している。 「慰安?」 悪戯っぽく祥子の舌が真也に伸びる。 「そう。シーズンを目前にして、準備にがんばってくれたバイト君達に、ちょっとしたねぎらいの会よね。もうすぐ地獄のような忙しさになるから、そうなる前にって。ううん、たいしたことはしないのよ。温泉に行って、お昼ご飯食べるだけなんだけど……、ん、ちょっと……、だめ、スイッチ入っちゃうから」 唇と舌の愛撫で、2度目の官能を呼び覚まされた真也が、祥子の乳首を指先でつまんだのだ。 「これぐらいの強さ、が好きなんだよね」 「うん……はあ……、真也って、上手なんだね……」 祥子は目を閉じて、乳首の先がゆっくりと溶けていくのを感じながら、それでも台詞を続けた。 「でね、祖父が、真也もよかったら一緒においでって……」 「え? なんで?」 真也の指が止まる。 真也が祥子の祖父に慰安会に招待されるいわれはない。もとはといえば、真也は川上荘でバイトをするはずだったのだ。しかし、事情があって遅刻したために、クビになった。事情は聞いてすらもらえなかった。お客様にはこちらの事情など関係ないと、門前払い同然だったのだ。その時は途方にくれたが、結局、今のような状態に落ち着いている。どちらが良かったのかはわからない。 ひとつだけ言えるのは、「慰安会に招待されるいわれはない」ということだけだ。 「うふふ、もう、こんなに大きくなって……」 祥子が真也のペニスに指を滑らせる。尿道にはまだ精液が残っているはずだし、さらに奥から新しいローションも噴出している。乾いているのか、濡れているのか、濡れているとしたらそれがどの程度なのか、ペニスが感じる女の子の指の感触でおおよそ理解できる。 真也は腰を突き出した。真也を触っていた指の第2関節を突いて押し、祥子はその圧力に「あ」と指を引っ込めた。 「ね、もう一度……」 真也はおねだりをした。 「いいけど、慰安会には、来てね」 「俺は一度はクビを言い渡されたんだぜ?」 「その後のここでのがんばりを、祖父は認めたってことよね」 「今更、認められても……」 ……ちっとも嬉しくない、そう言おうとして、でも、言い澱んだ。なぜなら、「あの頑固親父」に認められたらと思うと、ちょっと嬉しかったからだ。 「今更認められても、困る?」 「別に困らないけどさ」 掌で砲塔の先を包み、ねっとりとした液体を潤滑油にして祥子はこねくり回した。 「これからスキーシーズンを迎え、ご近所どうし、仲良くやりましょうってことでいいんじゃない?」 「僕たちはもう十分仲良しなんだけどね」と、真也は祥子の蜜窪に手を伸ばす。祥子もとっくに準備オッケーだった。1回目のセックスからずっと濡れっぱなしだったのかもしれない。触れる程度に指先を膣口につけただけなのに、不覚にもヌルリと吸い込まれてしまった。 「お願い」と祥子に言われて、真也はわかったよと答えた。そのお願いは、慰安会への同行なのか、「もう一回抱いて」の意なのか、真也にはにわかに判断しかねたが、同行の決意もついたし、2度目のセックスも始まった。 |
2回目の交わりのあと、二人はお互いの性器をゆったりと弄んでいた。余韻を楽しみながら、けだるい時間を過ごしていた。猛りは少しずつ静まりつつあったが、完全に終息したわけでもない。アイドリングの状態だった。ミコや他の女性との経験で、真也は知っていた。いちばん敏感な部分を愛撫し合いつつも、余韻以上の刺激を与えず、求めない。冷めないように、求めないように、余韻だけが2人の間に響き合っていた。求めすぎると、余韻ががいつしか前戯となり、再度の交わりへと移行してしまう。眠りに落ちるか、起き上がって他のことをやり始めるかでもなければ、何度でも交われる2人であることを、真也も祥子も、とっくにわかっていた。だから、後戯をお互いにセーブしている状態だった。 祥子は、真也の指先からもたらされる甘ったるい時間に身を任せていた。祥子は、まるで少女がぬいぐるみを愛玩するかのように、真也に触れていた。 「ずっと、隣にいてね」 「え?」 今日は帰りたくない、の意味かと真也は思った。しかしそうではなかった。 「慰安会のとき……」と、祥子が付け加えた。 「ああ、こちらからそうして欲しいくらいだよ。そうでないと、身の置き所がない」 川上荘の連中で、真也が知っているのは祥子とあの祖父だけである。バイト生の何人かにソフトクリームなどを食べさせてやったこともあるが、練習のためにと祥子が連れてきたモルモットであり、それで別段、仲良くなったというわけではない。誰と何を話していいのかすら、わからなない。 「最近、ずっと言い寄られているのよね」と、祥子は言った。「和則君っていうんだけど、大学1年生で、女性経験、どの程度あるんだか、純情な感じで、まっすぐ情熱をぶつけてくるの。苦手なのよね、そういうの。こっちにその気はないって意思表示してるんだけど」 「バシって、断らないからだよ」 「だって、うちの従業員だもの。あんまりキツく言えないじゃない」 「従業員がオーナーの孫に手をつけるの? バシって言っていいんだよ」 「でも、傷ついてやめられても困るし」 祥子には祥子なりの考えがあるのだろう。ともあれ、祥子はいつもそばにいて欲しいと言い、真也もそうしてもらわないと困る。お互いの利害は一致したのだ。だから真也はもうそのことには触れなかった。 そのかわり真也は、祥子の身体に手を触れた。布団の中で向かい合った状態で身体を寄せ合っている二人にとって、そえはすごく自然な行為だった。 |
明日があるのに、とうとう3回戦までしてしまった。気だるい甘美が身体の芯でゆらめき、ざわついていた。 いつ終わるともしれないひたすら交わり続けるセックスと違い、3回目はコンパクトに、だけど十分な官能を味わい尽くすセックスだった。この1回だけで完結してもいいほどの、深く濃い行為だった。先の2回のセックスは、前戯だったと言えるほどの、ひたすら激しい結合だった。 「もう……ダメ……」 何度か身を起こそうとした祥子だったが、「力が入らない」と呟いては、また布団に身を横たえる。 「泊まって行く?」 「そうしたいところだけど、やっぱりそれはまずいよね」 泊まることを拒否する意思表示なのか、今度はしゅっと祥子は身体を起こした。何も身に着けていない彼女の背中は色っぽかった。多少柔らかくなっていたが、相変わらず勃起したままの真也のペニス。そこへまた血流がどくどくと流れ始めた。 祥子がそれに気づいたかどうかはわからない。そっと布団をめくって下半身もあらわにし、そのまま立ち上がった。よどみない動作で衣服をまとう。布団の下で真也は自分のものをもてあましたが、それを沈めるにはあまりにも夜が遅すぎた。4度目は諦めるしかない。明日もあるから、ほどほどにしておこう。 そういう終わり方はなんとなく納得がいかない。中途半端な商品を「営利」のために納得がいかないまま売っているような、そんな気分だ。 営利とはつまり打算だ。セックスくらい「打算」ではなく、お互い果てるまでやりたいものだと真也は思ったが、服を着終えた祥子のフラフラした様子を見ると、祥子は祥子なりに果てたようで、真也はまあいいかと思った。 |
「送るよ」と真也は立ち上がった。 「え? いいよいいよ。だって、まだ裸じゃない」 「すぐ着るよ。それぐらい待ってろよ」 「だって、悪いわ」 「おまえ、妙にふらついてるじゃないか。なんだか心配なんだよ」 「大丈夫よ。まだアソコになんかひっかかってる感じが残ってるだけだから」 言い終えて、祥子は赤くなった。「もう、なんてこと言わせるのよ」 「今さら恥ずかしがる仲じゃないだろ?」 「エッチしてるときに大胆になるのと、普通の会話をしてるときでは、別なの」 外気は予想以上に冷たかった。真也は首を竦めた。ジャンパーを羽織ってきたが、とうてい間に合わない。川上荘までの往復だからなんとか我慢できる範囲内か。本当ならジャンパーの下に厚手のセーターか何かを着込むかなにかしたいところだ。 本当はダウンジャケットでも欲しいところだ。 「すごい冷えてる〜」 祥子の口から白い息が大量に漏れる。 「これなら人口降雪機でスキー場オープンできるかも」 「ああ、相当寒いな」 祥子は真也の腕にしがみついた。 「たっぷりエッチしておいて良かったあ。まだ身体の芯がポカポカしてるよ」 「そんな会話は、恥ずかしいんじゃなかったのかい?」 「時と場合によるわよ」 「どんな時と場合によるんだよ」 全く理解しがたいが、嫌な気持になったわけではなかった。 しばらく無言で歩いた後、「そうそう、真也」と祥子が言った。 「アルバイト、女の子なんだけど、1人そっちへまわしてあげられるかも?」 「川上荘の?」 「うん。もう締め切ったんだけれど、応募があってね。断ろうとしたんだけど……、そういやそっちでアルバイト欲しいって言ってたな〜と思って」 「う〜ん、どうなんだろ。二人でまわすのは大変だなとか、そんなことは色々今までにディスカッションしたけど、1人雇うと決まったわけじゃないし」 「一応、履歴書が来ることになってるから、そしたら持っていくわ。二人で相談して決めたら?」 「そうするよ」 「でも、そうなると、もうエッチできないね」 「え? どうして?」 どうして、と訊き返しながら、真也はドキッとした。 「ど〜せ真也はその子に手をだすんでしょ? だったら、あたしはもう用無しじゃない」と言われていると思ったからだ。 しかし、それは真也の勘違いだった。 「だって、その子が来たら、真也の隣の部屋に寝泊りすることになるに決まってるじゃない。そしたら、声、聞こえちゃうし、セーブしてたって、気配でわかるわよね。あたしだって、いくらなんでも、隣の部屋に女の子がいるのわかってて、のこのこ夜中にエッチしに行けないわよ」 「案外、そんなこと気にしない子かもよ?」 「そういうことを言ってるんじゃなくって、丸聞こえがわかってるのに、そんなことをするのは、非常識だし破廉恥だってこと」 祥子のまなじりがキッと釣り上がった。真也を睨み付けているのだ。でも、その表情はすぐに柔らかくなった。 「……あたし、非常識で破廉恥なこと、嫌いじゃないわ。だけど、真也の仕事がやりにくくなるでしょ?」 毎晩セックスフレンドが訪ねてきて、遠慮無しにやってる……、そんな目で見られたら、確かに仕事はやりにくい。 新人アルバイトにとって、自分は、店の再開に尽力した大先輩……あるいは、上司? それが、女にだらしないヤツと思われたら、指示ひとつ出しにくくなるだろう。 「そりゃあ、その通りだけど」 「それに、その子がもし処女とかだったりしたら、あたし達のエッチって、刺激が強すぎない?」 「処女でなくたって、刺激、強いと思うよ」と、真也が返事すると、祥子はウフフと嬉しそうに笑った。 |