ささやかな反抗 |
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人妻が男遊びに耽る。あたしはそのことにあまりよいイメージを持っていなかった。家庭が上手くいっていないから男遊びで気を紛らわさないと心のバランスが保てないのであり、男遊びなんかしているから家庭のことがおろそかになる。この悪循環に身をゆだねているだけで、自分では何一つ解決しようとしない姿勢をあたしは感じていた。 でも、いま。あたしは自らその世界へ飛び込もうとしてた。 |
結婚して7年。あたし達夫婦間のセックスは衰えることを知らなかった。徐々に回数が減ってくるという定説を覆し、それまで週に2〜3回だったのが、子作りのために毎日と逆に増えた。だから、自分では満たされていると思っていた。でも、実は満たされていなかったということに気が付いてしまった。気付かなければきっとそのまま何事もなくあたし達夫婦は平穏に暮らしたろう。 同窓会で同級生の男の子に悪戯され、身体のどこか奥の方で火種が芽生えた。高校時代は地味でおとなしかった友達が、結婚後は旦那以外にボーイフレンドを作って楽しんでいると知って、火が燃え広がった。そういう人生もありなのかと思うとカルチャーショックだったし、羨ましかった。 あたしと結婚して以来夫がオナニーしていないというのにも驚かされた。いや、それはそれで驚く必要などないのかも知れない。夫にとってそれが普通なのであれば、それはそれでいい。けれど、あたしは結婚後もオナニーをしている。夫はあたしとのセックスに満たされていて、あたしは夫とのセックスに満たされていない? いずれにしても、あたしのオナニーには夫は出てこない。相変わらずレイプや痴漢をイメージしながら自分のおまんこを指でまさぐっている。 水上夕貴はこんな女だとまわりが勝手にあたしのイメージを創りあげていたことに反感を覚えながら、それを壊すために何の努力もしなかった自分への、いまさらの反抗。そして、夫と二人で営んできた平和な夫婦生活への反抗。ささやかだけれども、自分を取り戻すための行動。 |
テレクラで知り合った男は舐めるのが異常に好きだった。あたしはベッドに仰向けになり、両足を天井へ向けて高く突き出していた。その足首を男は持って左右に大きく拡げた。あたしのおまんこを凝視する男の瞳が目に焼き付く。もうあたしは目を閉じたりしなかった。ただ見られているだけで汁が湧き出る。見られているだけで感じる。あたしにそんな素養があったことはとっくに認めているけれど、こうしてわき出す泉を下半身に感じていると、自分がさもいやらしい女のように思えて、興奮が盛り上がる。いやらしい汁を後から後から溢れさせるあたしを見ながらも、特にそのことについては何も触れない。きっと、あたしは特別なんかじゃなくて、これが普通なのだ。 気持のいいセックスにのめり込むことに罪の意識を持ち、お嬢さんであろうとしたのは、むしろあたし自身だった。まわりからイメージを突きつけられていたのではなく、あたしが望んでいたことなのだ。もっとエッチに対して貪欲に、開放的に、過ごしてれば、きっと楽しい恋愛が大学時代に出来たのでないか? 高校時代、どこか歪んだ男女関係にはまらなくても、クラスメイト達と普通の恋愛が出来たのではないか? あたしが処女であることを喜んだ夫の期待を裏切ることが出来なかったのも、あたしがあたしを清楚なお嬢さんというイメージに縛り付けていたからだ。だから、夫に教わったプレイだけをした。本当はもっと色々なことをしたかったけれど、夫のやり方だけでイクことが出来たので、不満として自覚することなくこれまでやってきたのだと気が付いた。 テレクラ男はちんちんだけ天井に向かって屹立させてベッドに横になる。あたしは男の身体に腰をゆっくりと落とす。 「俺は動かないから、好きにやってみろよ」 「うん」 あたしは腰を動かした。感じれば感じるほど動きが激しくなり、激しく動くとまた強烈に感じた。男の上にまたがりながら、あたしは一人でヒイヒイ叫びながら腰を振った。男の手が伸びてきたので、あたしは上体を少し前屈みにした。男はあたしの胸をきつくつかむ。乳房が変形する。雌牛が乳を搾られているときのように、男の手から乳首とその周囲がむにゅっと飛び出していた。もう片方の手が乳首の先端にあてがわれ、掌で擦られる。乳首をつまんでねじられる。 ああ、もう、もう、もう、もおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ、だめええええええ! 「おい、ちょっとのいてくれ。出る」 「中で出したらいいよ」 「ほ、本当にいいのか?」 「いいわ」 「じゃあ、フィニッシュだ」 体位を変えるのかと思ったらそうではなかった。男は腰を突き上げてきた。男の身体の上であたしはぴょんぴょん跳ねた。 |
真由美の家に遊びに行った。伝言テレホンをした。まず、真由美がお手本を見せてくれる。 「私は間に合っているから、適当にメッセージ入れるけど、笑っちゃダメよ」 念を押されたけれど笑ってしまった。夫とのセックスでは満足できないとか、結婚するまでは思いきり遊んでいたとか、割り切った大人の付き合いがしたいとか、5回も6回もイカせてくれる自信のある人希望とか、よくまあ次から次へと出て来るものだ。最後にきちんと身長体重スリーサイズを付け加える。 「さ、夕貴の番よ」 「うん」 あたしはセックスフレンドが欲しい、夫とは出来ないような刺激的なプレイがしたいと言った。 |
伝言で知り合った相手とデート。ノーブラノーパンで来て欲しいという相手の注文に応じた。下着を付けずに外出するのにはいつの間にか慣れていた。同窓会の日、土屋君と真由美に刺激され、あたしの乳首は立ちっぱなしだった。それが布にこすれて感じてしまう。酔っていたせいもあり、あたしはカーディガンを脱いだ。身体が火照って暑かったために何気なく脱いだのだが、乳首が透けて見えると気分が高揚してしまい、そのままにしておいた。男達の視線が心地よかった。チラチラ見る人もジロジロ見る人もいた。頼りなげなTバックがどんどん湿気を帯びていく。あたしは、ジュースが太股を伝っているのに気付かれることを想像してますます濡れた。でも、おまんこの内部がぐちょぐちょになっただけで汁は垂れてこなかった。次はノーパンで外出しようと思った。 乳首が透けて見えているのに平気でいれば、頭がおかしいと思われるかも知れない。だから、色の濃い服を身につけた。でも、形はくっきりと浮き出していた。それほど厚い生地ではなかったので目を凝らせばうっすらと乳輪が見える。ノーパンでスカートはさすがに心許ないので、パンツをはいた。レモンイエローのパンツだった。人の視線を感じて陰毛が透けているのに気が付いた。またの間にちいさな染みが出来、それが徐々に広がっていった。男だけでなく、女の視線まで突き刺さってきた。きっと軽蔑しているのだろう。人に見られてますます染みは広がった。さすがに近所の人には見せられない。あたしは喫茶店に入って時間を潰し、日が暮れるのを待った。家に帰ると夫が先に帰宅していて、しかもあたしの異変に気が付いていた。あたしは「パンツの紐が切れたの仕方なく」と言い訳したが、濡れているという事実には説明の仕様がなかった。 「思わず感じてしまったんだろ」と、夫に責められ、「うん」としか答えられなかった。「気にしなくてもいいよ、僕が君をそんな女にしちゃったんだ」と彼は言った。それは間違った認識だったが、肯定しておく。夫はあたしを激しく求めてきた。 それ以来、あたしはノーパンミニスカで出歩くのが楽しみだ。通勤時間ではないので痴漢にはあわなかったが、駅の階段で下から覗かれたり、しゃがんでみたりと楽しんだ。 出歩くだけではない、実際に人と会ってセックスをするのだと思うと、外出の準備をしているだけで濡れてしまう。仕方なくあたしは横紐結びのTバックを身につけた。 伝言の人は二言三言会話を交わすと、さっそく胸に触ってきた。約束を守ったことに感動してくれた。そして、スカートの中に手を滑り込ませて、「なんだ、上だけか」と言った。あたしは男の耳元で「紐をほどいたらすぐに外れるから」と囁いた。男はすぐに実行した。あたしからはぎ取ったパンティを男は自分のポケットに突っ込んだ。 「お茶でも飲む?」 「先に、して」 「そうだな、もうこんなに濡れてるもんな」 あたしと男はホテルへ向かった。その間、男はあたしのおまんこをぐちゅぐちゅといじり回していた。男の手がスカートの中に入っているのは、おそらく正面からはわからない。けれど、あたし達の後ろにいる人達は容易にそれと伺い知ることが出来るはずだ。あたしは時々こみあげるような快感に歩けなくなった。 あたしが立ち止まると、男があたしを抱きすくめた。首筋や耳たぶに唇を付け舌で舐めてくる。 「あ、はああ〜ん」 校庭の片隅や放課後の教室で制服のまま男女がじゃれあっているのをあたしは時々目撃した。それが見たくて用もないのに図書室に残ったりしてた。ラブシーンが見れても見れなくてもある時間には学校を出た。痴漢にあうためである。 彼のいる女の子を羨ましく思いながら、自分にはそういう人がいない。その代償行為を痴漢に求めていた。 伝言で知り合った誰とも知れない男とではなく、あの校庭の片隅で、放課後の教室で、ああして愛を確かめあいたかった。もう遅いけれど。 |
誰かとセックスした日は、夫とも必ずするようにしている。子作りのためほぼ毎日しているとはいえ、どうしても時々出来ないこともある。夫は極端な残業を嫌う。そのかわり、書類を家に持ち帰る。気分を変えてリラックスした方が仕事がはかどるそうだ。いつになったら帰れるんだとイライラしながら残業手当を稼ぐより、風呂もベッドも側にある我が家のほうがいいという。どうせ残業手当も上限を越えて付かない。 そんな日は遠慮していたが、それでも外でセックスした日は夫を求めた。外で満たされるあまり、夫とのことがやがておろそかになるのが怖かったのだ。 あたしは特定のボーイフレンドと定期的に会いながら、新しい相手も常に探し求めていた。3カ月もすれば、毎日誰かとセックスする機会が持てた。一日に二人、三人と交わることもある。夫とのセックスは律儀に続けていたが、外出の時間が長くなると家事がおろそかになる。手作りの食事がレトルトになり、クリーニング屋に頼ることも増えた。支出がかさむ。ホテル代は男が出すにしても交通費はかかるし、食事まではおごってもらってもその後にお茶を飲む場合などはあたしが払った。何もかも出してもらうのは気がひけた。 家計がピンチになったのである。 そんなことばかり気にしていたせいだろう、つい、「お小遣いが欲しいな」と口走ってしまった。その時ははじめての相手だったから、「なんだよ、それならそうと最初から伝言に入れておくのがマナーだぞ。仕方ないか。ほら」と、二万円くれた。 あたしは男を整理した。ボーイフレンドとして長く付き合いたい人を三人に絞り、その他の男とはもう会わなかった。そのかわり、伝言に「お小遣いくれるひと」とか「援助交際」などのメッセージを残した。お金が欲しいといった方が、メッセージの返信が多いのには驚いたが、その方が男も安心なのかもしれない。 |
ひとこと「援助交際」と口にすれば、簡単にお小遣いが手に入ることがわかってから、あたしは一時それに夢中になったが、やがて「いつでも望めばお金は手に入るんだから」と、むやみに身体を売ることはやめた。罪の意識があったわけじゃない。かといって、「誰にも迷惑かけていないし、お互い納得してやってるんだから」と言い切るつもりもない。心情的には「食べない動物は殺さない」に近かった。殺生がゆるされるのは自分の命のために食するときのみ、という精神だ。自分はセックスがしたいからしているだけであって、お金を目的としているわけじゃない。普段はキャッチ&リリース。お金が必要なときだけ殺生をする。 セックスがなんだか哲学的になってしまったような気までして、それほど夢中になれなくなってきた。まずいな、やりすぎたかな、と感じたのは、夫とのセックスもだるくなってきたからだ。 そんなときに真由美から持ちかけられたのが「スワッピング」だった。相手を交換するだけでなく、相互鑑賞プレイで、「めちゃくちゃ興奮するよ。同じ部屋で四人がやりまくるんだもの」 地味処女の真由美の口から「やりまくる」なんて単語が飛び出したのにはびっくりした。 |
スワッピングプレイは衝撃的だった。単にパートナーを交換したり、相互鑑賞をする、というような生ややさしいものではなかった。くんずほぐれつ同時進行で行う4人プレイ。男が仰向けにベッドに横になり、あたしがその上にシックスナインの体制で四つん這いになる。あたしがちんちんをくわえて、男がおまんこを舐める。こんなことをしていると、舐めてもらうために落としていた腰を両手でつかんで持ち上げられた。そして、もう1人の男に後ろから挿入される。 うそっ! 今、あたしの中に入っている人は、さっきまで真由美とやっていたじゃない。真由美はどうしているの? 真由美の姿を探そうにもあたしはちんちんをくわえている。顔を動かすことが出来ないので目だけをきょろきょろさせるけれどもよくわからない。まあいいや、と思っていると胸をつかまれた。真由美までがあたしを責めはじめた。あたしは真由美の手によってベッドの上に転がされ、それからはみんなの完全な餌食、玩具になった。思い思いにあたしを弄ぶ。あたしの意志とは無関係に身体がビクンビクン反応する。次にどうなるか、どこをどのように責められるか全く予想が付かない。 頭の中が真っ白になった。3枚の舌、6本の手、2本のちんちん、そして、真由美が取りだしたバイブ。恍惚の海の中で朦朧としているあたし。あ、あたし、今、潮を吹いている。イッているのに誰もあたしを責めるのをやめない。イキ続けているうちに激しい痙攣があたしを襲った。あたしは意識を失った。 気が付くと、あたしは壁に持たれていた。大開きになった股の間にはバイブがささったままだ。真由美はふたりの男とセックスを謳歌していた。おまんことアナルの両方に男を受け入れてひーひー叫んでいた。定まらない視線に半開きの口。唇の端からネットリとした白い液体を伝わらせている。 |
「ねえ、お尻って気持ちいいの?」 「気持ちいいよ。出入り口付近をくすぐられるのも、奥まで突っ込まれてお腹の中をグチャグチャに掻き回されるのも」 「痛くない?」 「痛いに決まってるじゃない。でも、だんだん良くなるの。私はすごく感じる。人によるけどね。絶対あんな所なんてイヤ、って人もいるし。イヤっていう気持が強いと、入らないし、入れても痛いだけみたい」 「そうかあ。痛いのか」 「夕貴なら大丈夫じゃない? やりたいんでしょう?」 「興味なかったんだけどね。真由美が、こないだ。。。。」 「じゃあ、教えてあげる。最初は挿入せずに、ゆっくりもみほぐすの。それから、まず指ね。あんまり痛くないと思うわ。出したり入れたりしているうちに変な気分になったら素質あるわよ。その次は、歯ブラシの柄かな? ブラシの部分だけ残して全部挿入して、ぐるぐる回して直腸を刺激するの。これで気分が悪くなったらアナルはやめた方がいいわ。でも、興奮するのなら、エスカレートしていっていいよ。どんどん太いものを入れていったら」 「話を聞いてるだけで濡れてくるんだけど」 「じゃあ、素質有りね。初心者用のバイブを貸してあげる」 「え? いいの?」 「うん、わたしはもう使ってないから」 「初心者用だから?」 「まあね。お尻のはアソコのより細いの。でも、わたしは普通のバイブで出来るから」 |
夫の職場環境が変わった。支店開設のための要員に選ばれ、これからの1年間、度々出張があるという。 「転勤になるの?」 「いや、転勤にはならないよ。支店オープンの前後1ヶ月くらいは向こうにつきっきりになるかも知れないけど、あくまで出張だから」 あたし達には子供がいないし、借家だから、転勤になっても別にどうということはない。ついていくだけだ。本来は。けれど、あたしにはたくさんのセックスフレンドがいる。住む場所が変わればもう会えないだろう。 「転勤はそんなにイヤなのか?」 「別にそうじゃないけど・・・」 「今回は大丈夫だけれど、僕はサラリーマンだから。いつ、どこへ行くことになるかわからないんだよ。それは知ってるだろう?」 「ええ・・・・」 夫にとっては理解できない理由で(理解されても困るけど)顔を曇らせるあたしに、夫ははじめて疑念を抱いたようだ。 「どうしたの?」 「ううん、なんとなく」 テレクラや伝言ダイヤルで相手を捜すリスクをあたしは承知していた。連れて行かれた先がホテルではなくマンションの一室で、ドアの中から複数の男の声が聞こえたので、慌てて逃げ出したことがある。不潔きわまりない男と出会ったときは、そいつが風呂に入っている間にやはり逃げた。その筋の人だと一目でわかる男が待っていたときはすっぽかした。男選びも慎重にならざるをえない。その中で、ようやく定期的にあって楽しくデートできる人や身体だけの関係の人、そして真由美を通じた複数交際など、やっと落ち着いてきたのだ。新しい土地で一からこの関係を築くのは容易ではない。 あたしは夫のことそっちのけで自分のセックスの心配ばかりしていることに気が付いて、「ひどい妻だ」と思った。 「大丈夫よ。住み慣れたところを離れるのかと思うと、ちょっとブルーが入っただけ」 「まあ、今すぐどうこうというわけじゃないから」 「うん」 あたしは夫の笑顔を見て安心した。それどころか、次のことを考えていた。「夫が頻繁に出張するなら、ボーイフレンドと会う機会が増える」と。 |