Tバック

 

 

 見られても差し支えないものをスカートの下にはいておく。
 中学生になって、あたしたちはスカートの下にはブルマを身に付けていた。
 何の改造もほどこしていないあたしのスカートは、覗き込まれる心配も無かったし、風で舞い上がることも無かったけれど、スカートめくりが流行っていたのだ。
 そして、女の子たちはスカートをめくられることをむしろ喜んでいた。「残念でした。ブルマはいてるもんね。男子にパンツなんか見せてあげな〜い」と、男の子たちをガッカリさせて楽しむのだ。
 けれど、あたしのスカートがめくられることはついに無かったのだけれど。

 見られてもいいもの、ではなくて、見られるための下着。

 帰宅途中にランジェリーショップに寄った。
 色も形も様々な布達が、店内に溢れ返っていた。パンティとブラだけじゃない。ベビードールにガーターにボディースーツにキャミ。眩暈がしそうなほどのきらびやかさだ。
 陳列台に遮られて表からは見えない一角には、玩具や媚薬などもあった。
 レジの向こうには、20代とも40代ともとれる、年齢のよくわからない女性が静かに座っていた。

 女子高生らしい二人連れがきゃあきゃあと騒ぎながら、何も買わずに去った後は、沈黙が流れる。2〜3人の女性があれこれ眺めたり、レジで支払いをしたり、何もかわずに出て行ったりした。
 カップルでやってきた2人は、クスクスと声を潜めて笑いあったり、ヒソヒソ話をしたりしていた。
 あたしは店内をぐるりと回った後で、パンティのコーナーで足を止めた。

「どんなのを探しているの?」
 声をかけられてあたしは驚いた。こういう店でも店員が話しかけてくるのだ。
 レジの奥には相変わらず年齢不詳の女性がいる。声をかけてきたのは、あたしがさっきまで客の一人だと思っていた人だった。客を装いつつ万引き防止の監視でもしているんだろうか?
「身だしなみ系? それとも、プレイ系? 勝負下着だったら、あんまり凄いのは止めた方がいいわよ。経験の少ない男の子はひいちゃうから。それとも……」
 その店員はあたしの姿をサッと上から下まで眺めて、「露出計かしら?」と言った。
 あたしは「ええ」と返事した。

 店員さんはまず、シンプルなTバックをふたつ選んでくれた。ひとつはハイレグ気味で、もうひとつはローライズ。どちらもメッシュで透けている。あたしはハイレグのピンクを選んだ。
 次にGストを持ってきてくれた。ひとつは横と後ろがゴムひものタイプ。前には小さな黒い三角布が申し訳程度に。股下のどのあたりまで布が届くのだろう? もうひとつはさらに小さな三角形の銀ラメ。横と後ろは細いゴールドチェーン。
 どちらも下着としては全く実用性がなかったけれど、あたしは両方とも買うことにした。
 隠れたコーナーから玩具もひとつ選んでレジへ向かうと、「あなたなら、これ、着こなせると思うよ。プレゼントするわ」と、さっきの店員がワゴンからデニムのホットパンツを持ち上げた。
 サイドが5センチばかり割れてて、その部分は靴紐のように格子状に渡された紐でつながっている。
「ノーパンで履くのが基本だけど、パンティを見せるのもいいわね」

 駅のトイレでさっそく着替える。
 あたしはチェーンのGストにした。
 腰まで引き上げると、何の抵抗もなくスッとチェーンが割れ目に吸い込まれてゆく。

 少し前まで付き合っていた男に、ガードが固いってよく指摘された。
 開きにくく、濡れにくいんだそうだ。
 そんなあたしだったのに、すっかり開放されていた。

 電車が来るまでの間、何度も階段を上り下りした。
 電車に乗ってからはつり革をつかみながら、身体を少し前かがみにする。お尻がはみ出すのはわかっていた。
 濡れた。

 

もどろっか

それとも、先に進む?