Rさんと、夜、会うことが出来た。 彼が泊まっていたのは、相当鄙びた温泉だった。しっかりした建物だったけど相当古く、湯治宿の雰囲気をたたえている。 最寄駅からタクシーで約2時間もかかった。バスがとっくに終わっていたのだ。けれど、Rさんからもらった10万円と、男と寝て得たお小遣いがあったので、痛くもない。 一月の給料の半分以上もの現金を持っている自分がおかしかった。 Rさんは疲れ果てたような顔をしていた。 食事もとらず、ごろ寝をしては思い出したように起き上がり、湯を浴びる。夕方ここについてからずっとそうしていたという。 食事は頼めば出してくれるが、自炊も出来る。湯治宿なので、自炊室があって、客は持ち込んだ食材を思い思いに調理するのだ。長期滞在のためには自炊がいい。ひとつには、安くつくこと。そしてもうひとつは、旅館料理というのはワンパターンであり飽きるし、カロリーも高すぎるからだ。 そんな話をRさんはしてくれた。 マンションの一室でエロに彩られたRさんとは別人のようだった。 Rさんが借りていたレンタカーで、あたしは買出しに出かけた。自炊の場合でもゴハンだけは炊いて出してくれる。ただし、朝のみ。湯治客はそれを朝・昼・夜の3回に分けて食べる。今日チェックインしたあたし達にはそれすらない。 40分ほど走って、夜11時まで営業しているスーパーを見つけた。 レンジでチンするご飯はあったが、電子レンジなんて自炊室にあるだろうか? あたしはロールパンとハムとチーズ、そしてお惣菜コーナーで売れ残っていたポテトサラダを買った。 そういえば、あたしもそんなにお腹が空いているわけではない。 |
もどろっか