語り部は由美
中学1年生 おしゃぶり(1)





 中学1年生になったわたしは、もちろんブラジャーをしていた。乳首がにょっきり立ってしまうと目立つので、さほど胸が膨らまないうちからブラをした。そのせいだろうか、とてもいい形に発育してくれた。幼児の服がすぐに小さくなるように、わたしのブラもすぐに小さくなった。今もまだ発展途上のような気がする。
 中学校の制服はセーラー服だった。胸元は大きくV字に割れているが、肌は露出していない。その部分を覆うように胸当てがある。V字の上部4分の3くらいは隠れてしまう。
 この紫色のセーラー服は随分野暮ったく、わたし達は改造したものだった。


 みなさんこんにちわ、由美です。ここでいうセーラー服の概念って、当時それを着ていた人しかわかりにくいんだろうなって思います。手元に残っていたらスキャニングして掲載してもいいんですけど、残っていないんですよネえ。
 スケバン(死語かな?)というかいわゆる不良のスタイルはロングスカートでした。結局ソレは特定の人だけのスタイルで、それもすたれて、スカートは短く改造するようになっていきました。でも、それもほんの数センチのささやかなもの。今とは全然違うのです。いまや短いスカートが普通で、そこからさらに改造して短くしているんですからね。都会の情報が極端な形で伝わるのか、地方には驚くほど短いスカートが存在しています。風俗顔負け。少し前かがみになると丸見えですもの。
 それにくらべると当時はかわいいもの。膝が見えたら「短い」のですから。その中でもわたしは結構短い方でした。スカートの丈そのものも短くして、しかも上に引っ張りあげます。そして、セーラー服も短くしていました。手を上げると肌が見えるんです。おへそは出ません。だって、スカートを上へ引っ張りあげているから。おへそとか、さらにその下を露出するなんて考えもつきませんでした。
 このあとわたしは、露出大好き、いやらしい視線大好きの女の子に成長していって、ヘソ下10センチ以上の露出も平気だけども・・・・、さすがに30半ばになると、いい年してと思われるのがきついですね。ううん、肌や体型には自信はありますが。
 ま、その分、エッチな下着でおしゃれしています。
 それはともかく、時代感覚が今と違うけれど、それはそれとしてわかってくださいね。

 「わあ、由美。それ、かわいいね」
「うん、でしょ?」
「でも、ちょっと短かすぎない?」
 当時のわたし達の制服は、スカート丈が膝下まであった。ちょっとしたおしゃれ心で改造する女の子はたくさんいたけれど、それもせいぜい「ギリギリ膝が見えない」程度。ふとした拍子にスカートがひるがえり、一瞬膝頭が顔を出すと、男の子たちは「おお!」とか言ったものだ。
 わたしのスカート丈は膝上2センチ。どんな状態でも必ず膝が見える高さにしてある。ここまで「見せる」子は少ない。「普通のまじめな子がおしゃれでする改造」の範囲を越えていて、指導の対象になったりする。だから、大抵はスカートを止めている腰の部分をぐるぐると巻き上げて、いつでももとに戻せるようにして、生徒指導に対処するのが普通なのだ。けど、わたしは裁縫が出来るので、ちょん切ってしまった。
「短すぎる、なんてことないよ。だって、私服だったらもっと短いの着るじゃない」
「そりゃあそうだけど。・・・・呼び出し食らうかもね」
「いいのいいの」
 クラスメイトの佐織は心配してくれたけれど、わたしは気楽だった。短くなったスカートはダサイ制服ではなく、何か別のもののような気がしていた。気持ちが明るくなった。呼び出しなんてちっともうっとおしいことだとは感じなかったのだ。
 「それでね、こうするとね・・・・」と、わたしはセーラー服の裾から手を入れて、スカートをくるくると巻き上げた。
「ほら、もっと短くなるよ」
 さらに5センチ以上短くなった。
「ちょっと、それ、やり過ぎじゃない?」
「かもね」と、わたしははしゃぎながら笑った。
 昨日の夜と今朝、わたしはこのスタイルで鏡の前に立った。とりたてて綺麗な足じゃない。けれど、スカートの下からスルリと伸びた肢体は、自分で見てもまぶしかった。可愛いと思った。綺麗だと思った。
 化粧をして飾り立てるのではなく、ただわたしが持っているというだけの、女の子らしさ。清楚・純潔というのが似合う女の子がいる。ボーイッシュにしているのが一番魅力的な女の子もいる。わたしはあっけらかんと肌をさらけ出しているのが良いように感じた。
 制服が野暮ったく感じるのは、デザインが良くないのではなくて、「人それぞれの良さを消し去ってしまう箱」だからだと確信した。
 「パンツ、見えない?」
「大丈夫よ。さっきも言ったでしょ? 私服のミニスカートよりも長いんだから」
「そうね」
「佐織もやってみたら? どうせそのうち流行るわよ」
「でも、なんか不良みたい」
「不良のスカートはロングって決まってるわよ」
「それは昔のスケバンでしょ? なんか、遊んでるっぽい子が短くしてるもん」

 沙織に薦められて、わたしはその日、スカートを巻き上げたままですごした。制服的に言えば「超ミニ」なのである。けれど、お咎めはなかった。なにしろ立ちあがって発言する機会がなかったから、先生は気がつかなかったのだ。
 衣替えが待ち遠しい5月下旬だったから冬服はつらく、短いスカートの中を駆け抜けていく微風は涼しくて気持ちよかった。わたしはそのままで下校した。一緒に帰った女の子たちには「勇気あるわねえ」とか「羨ましい」とか「わたしもやってみようかな」とか言われた。けれど、もちろん白い目で見る子もいた。そういう子はもともとわたしには近寄ってこない人種だった。男の子たちにはどう見えただろう?
 その夜、調子に乗ってセーラー服の改造に着手。成長著しいお年頃なので、人によっては急に服が小さくなる。だから、前かがみになったり、手を上げたりすると、セーラーの裾が持ちあがって肌が見える。これがなんともわたしの目には艶かしかった。ただの背中なのに。男の子たちにはもっと刺激的だろう。
 そのうちに気がついたのだけれど、わざとセーラーも短くしている子がいる。その分、スカートを持ち上げていて、要するに腰の位置を高く見せようとしているのだ。でもそれには限界があるから、結構肌が見える。見せたくてそうしているのか、それとも見られるリスクを犯してでも足を長く見せようとしているのかわたしにはわからないけれど、上半身がちいさなセーラーに包まれているのはとてもかわいい。
 わたしの場合、スカートを引っ張り上げたりはしていないから、上を短くすると明らかに露出してしまうけれど、それが似合うと思った。それに、涼しいだろうしね。冬は辛いかなと思ったけれど、コートを着れば済むことだし。
 セーラー服の改造を終えると、深夜2時を回っていた。試着するとなんともキュート。ついでに胸当ても外して、鏡の前に立つ。
「か、かわいい・・・」
 膨らみの終端が、肉体だけではなく、楽しげな心模様を描いているようだった。

 次の日、生徒指導室に呼ばれた。
 先生達は昨日のうちに実は気がついていたみたいだった。
 進路指導のための3者面談や問題のある生徒の説教に使われる部屋だから、小さくて殺風景。窓は大きくて明るい陽射しが入ってくるから救われるけれど、窓が小さくて鉄格子がはまっていたら取調室だ。
 担任の先生は30代半ばの独身男。はしたない格好はやめてきちんとしなさい、と言った。
 一応「はしたなくはないつもりです」と、口ごたえした。
 先生はちっとも感情的にはならず、むしろ普段より冷静な口調で、「スカートを元通りにしなさい」と言った。
 わたしは折り返しを戻して、スカートをキュキュと下に引っ張った。でも、膝は隠れない。
 「まだ短くしてる。もっと下げて」
 言われたとおりにすると、おへそが見えた。
「あ」
 この「あ」がどういう意味だったかは詮索しないことにして、「先生、これ以上下げたら、見えちゃいます」と言った。
「そうか。急に身長が伸びたか」と、先生はつぶやいた。
 わたしの裁縫の腕にまんまと騙されたのだ。もっとも、女の先生が服を手にとって観察すれば改造がばれちゃうけれど、男の先生が女子中学生の服に手をかけるなんてことは出来なかったのだ。

 せっかく生徒指導室から開放されたら、今度は男の子に誘われた。
 今現在で一番仲良くしている福島クンだ。具体的に告白をどっちかがしたとか、付き合いましょうと言う話しをしたわけではないけれど、わたしは彼のことが好きだし、彼もそうだった。仲の良さはクラスメイト公認で、現状では「親友」に近いけれど、すぐに「恋人」になるだろうなと、誰もがなんとなく感じていた。もちろん、わたしも。
 そんな関係だから、誘われれば甘酸っぱい気持ちになる。
 彼は放課後の屋上で二人きりで逢いたいと言う。屋上といっても、外への出口には施錠されているので、最上階の階段室、というか踊り場とでも言うべき狭いスペースである。
 「そこ、いやだな」とわたしは言った。
 「どうして?」と、福島クン。
 「だって、ワルの溜まり場じゃない」
 「または、恋人の、ね」
 「先輩とかが、隠れてタバコ吸ったりしているでしょう?」
 「そう言う時は、さっさと引き返して来たらいいだろう? 誰もいなければいいじゃないか」
 「うん」
 彼に説得されて、わたしは放課後になるのを待ち、彼の教室へ出かけて、いそいそと覗きこんだ。福島クンはいなかった。先に行ったのだ。
 不安にかられながらわたしは一人で屋上へ向かう。屋上の踊り場の手前で、階段に腰掛けているカップルがいちゃいちゃしていた。ふたりは並んで腰掛けているのだけれど、女の子が男の子の胸に顔をうずめ、男の子は女の子の背中をしっかりと抱き寄せていた。背中にある手は一本。もうひとつの手はセーラー服の裾から彼女の中に入り、おそらく胸に届いているようだった。セーラー服は半ばめくれあがっている。
 そんなカップルを見ただけで、わたしはジュンとなった。
 さらにこの上に、福島クンがいるのだろうか? 半信半疑で二人の横を通りすぎる。短すぎるスカートの中に、男の子の視線を感じた。
 「や」という女の子の声が小さく響く。見れば、男の子がスカートの中に手を入れるところだった。わたしの足に刺激されたんだろう。女の子も「や」とは言ったものの、されるがままになっていた。
 ジュン、ジュン。
 オナニーはしたことがあっても、男の子に触られたことなんてない。
 アソコに男の子の手が伸びるって、どんなかんじなんだろう?
 ジュン、ジュン、ジュン。
 福島クンは壁にもたれて待っていた。
「やあ」
「うん」
「途中に誰かいた?」
「いちゃいちゃしてた。横、通るの、ちょっと恥ずかしかった」
「俺が先にいたので、遠慮してくれたみたい」
 ワル同士でつるむでもなく、女の子を連れてくるでもない。男一人でこんなところにいるなんて、きっと気味悪がられたんじゃないだろうか。わたしがそう言うと、「だとしたら、お前が遅いせいだ」と、言われた。
「バカみたい、もう」と、わたしは答え、福島クンの横に並んで座ろうとした。
 初夏を前にして陽の沈むタイミングはどんどん遅くなっている。夕闇にせきたてられるようにして帰宅を急いだ放課後が懐かしく思えるほど、すりガラスから明るさが染みこんでくる。中学校に入学したばかりで心細かったから、余計にサンセットを早く感じていたのだろう。
 そんなわたしも随分と図太くなったものだと思う。仲のよい男の子が出来、そして彼に誘われるままに校舎の中とはいえ人影の少ない場所で逢っている。
 屋上への出口の踊り場は、陽光が差しこむとはいえ、じんめりと湿ったような薄暗さがある。窓のたくさんある教室や廊下との落差が激しいのでとりわけそう感じるのだろう。その中にすりガラスから注ぎ込まれる光を浴びて、その部分だけが埃を舞っているように見えた。
「あ、座らないで」と、福島クンが言った。
「え? どうして? 何か話があるんでしょう?」
 わたしは期待していた。ミニスカート仕様の制服に惑わされて、ついに福島クンが告白してくれるんだと思っていた。気の早いカップルが既にいくつかできているし、客観的にはわたしと彼もそのうちの一組だ。
 周知の事実だとしても、男の子に「好きだ。付き合ってくれ」なんて言われてみたい。
「ちょうどここからパンツが見える」と、福島クンはつぶやいた。
「うそ!」
 同級生の中ではおそらく一番スカートを短くして、セーラー服だって裾をカットした「露出バージョン」を自ら作り出して、羨望と軽蔑のいりまじった女の子と興味シンシンの男の子のそれぞれの視線にちょっと優越感に浸っていたけれど、あらためて指摘されるとこんなに恥ずかしいものかと思った。
 わたしは慌ててスカートの裾を引っ張りながら、「やだあ、スケベ」と小声で叫んで、その場に座りこんだ。
 ジュン、ジュン、ジュン、ジュン。
 「見られている」というより「見せている」くせに、そのことをわざわざ声に出されると、わたしの羞恥心は急カーブで上昇していった。顔が赤くなるのがわかる。男の子に触られることを想像しながら、パンツ越しとはいえ自分の指で気持ちよくなっているアソコを直視されると、どうにかなってしまいそうだ。
 既に敏感になって、ジュンジュン反応しているアソコが、ついに穴の外へ汁を漏らし始めた。やだ、パンツに染みが出来ちゃう。
「由美ちゃん・・・」
 福島クンは身体を密着させてきた。わたしの右側と彼の左側がピタリと寄り添う。
(ツイニキタカ)
 名前だけ呼んで、そのあと口ごもる。その後に続く言葉は、「好き」か「付き合って」か?
 ドキドキドキドキ。
 わたしは彼を見つめた。わたしは何も訊かない。ただ、じっと待つ。彼の口が動くのを。
 福島クンは何度も言葉を呑み込んでしまいそうになる。閉じかけた唇が触れる寸前、意を決したように再びゆっくりと開く。
「由美ちゃん、おれ・・」
 ついに!
 そのとき、タイミングがよかったのか悪かったのか、「ぁぁ」と、かすかな声がした。
 福島クンも気がついただろう。身体を密着させているので、彼がこれをきっかけに硬直してしまったのがわかった。全神経を耳に集中させたに違いない。わたしもそうだ。
 何? 今のは?
 問うまでもなくわかっていた。下のカップルが・・・・。男の子が女の子の感じる所を・・・・。
 わたしがオナニーをしながら我慢できずに漏らしてしまう声と同じ種類のものだ。
 じゅるじゅるじゅる。
 わたしのアソコは本格的に濡れだしてしまった。どうしよう・・・。自分でするときは、この状態から後は、わたしは夢中になって自分のアソコをかきまわすようになる。最近は落ち着いて「感じる」所を探ったりするようになったけれど。それでもお汁がどんどん湧き出して指のすべりが良くなってくると、この世から他の全てのことが消え去って、指遊びに没頭してしまう。
 そんなことを考えていると、わたしの身体はますます反応して、彼とくっついている部分が熱くなってきた。
 触りたい。触られたい。
 頭の隅にそんな想いが浮かび、わたしは慌てた。
 せめて彼から離れなくちゃ。身を引きかけたとき、今度はさっきよりもはっきりと「ああ!」と聞こえた。
「由美」
 小声だったが、福島クンは叫んだ。わたしは両肩に手を添えられて、彼のほうを向かせられた。恐い目、真剣なまなざし。
「はい」と、わたしは言った。
 よそのカップルに刺激されて告白の台詞が出てくるなんてなんだかなあと思ったけれど、まあいいやと思った。わたしの身体はその先のことに期待をしている。じれったくてうずうずしていた。
 ああ、でも、こんな所で彼に迫られたらどうしよう?
 ファーストキス。うん、それはいい。けれど、その先はどうしたらいいの? 拒めばやめてくれるかしら? それより、拒めるの? ううん、いくら何でもこんなところでキスより先へ進もうとはしないと思う。
「由美」
 彼は繰り返した。
「はい」
「キスしていい?」
「!」

 ぐんぐん盛り上がっていたわたしの気持ちは肩透かしを食らってしまった。
「好き」とか「付き合って」とかの告白なく、いきなりそれかよ。
 ロマンチックな気分を台無しにされてしらけちゃうよ、そう思ったのに、わたしの中を支配していた興奮はちっとも冷めなかった。
「うん。いいよ」と、答える自分が不思議だった。
 彼の唇がタコの形になって迫ってきたので、わたしはいたたまれなくなって眼を閉じた。唇は勢い良く押しつけられた。ぐちゅ、という音が聞こえそうだ。あまりにも肉感的で「もうぉ」と思ったけれど、柔らかくて暖かい感触はすぐに無粋な意識を消し去ってくれた。
 キスしたら、言葉なんていらないんだ。
 ロマンティックな愛のささやきはなかったけれど、ハートがズキズキした。ちょっと足が震えているかもしれない。
 彼の気持ちがストレートに伝わってくる。言葉を待ち望んでいたわたしは、それは間違いなのかもしれないな、と思った。行動は言葉の世界を凌駕する。そういえば先生は「行動で示せ」と言ってたっけ。それってこういうことだったのね・・・なわけないか。
 彼は時々吸ってくるけれど、わたしはどうそれに応えていいかわからなかったので、ただされるがままだった。
 やがて、彼の唇が開き、舌が・・・
 ディープキス。知識としては知っているけれど、またまたわからない。わたしの歯に遮られて、彼の舌はそこから先へ進めない。
 受け入れなくちゃ。受け入れてあげなくちゃ。
 でも、歯が開かない。かたくななままでいるわたし。彼は舌で歯を舐め始めた。歯の表面をツルツルと物体が滑ってゆく。唇の裏と歯茎の間までねっとりと舐めてくる。
 あ、今朝、歯を磨いたかしら。うん、もちろん、磨いている。あ、だけどお昼ご飯の後は、何もしていない。食べ物かすがたまっているかも・・・
 いいの? そんなところも舐めてくれるの? ちょっと、感動。
 気持ちがトロンとして、背中にさざなみが立つ。肩の力が抜け、ふんにゃりなるわたし。すかさず彼の舌が歯を割って入ってきた。
 ビクッと一瞬舌を引っ込めたわたしだけど、狭い口の中ではどれほどの抵抗も出来ない。ぬちゃっと押しつけてくる感触に反応して、わたしの舌も勝手に動き始めた。
 重ね合わせ、舐めあい、もぐもぐとこねくりあう。
 わたし達は口を全開にして、もっと、もっとと求め合う。
 校外までランニングに出かけていたのか、どこかの運動クラブの掛け声が、どんどん近付いてくる。運動部に入るなんて考えもしなかったわたしは、週に1回だけ活動日のある「詩歌」のサークルに入った。イメージが言葉に出来ず、創作への興味はあっという間に無くなってしまったけれど、初老の先生が著名な作品のロマンティシズムを陶々と解説するのを聞くのが好きだ。先生は中学生のわたし達に言葉を選びながら、でもそれを誤魔化したりせずに、説明してくれる。それが嬉しかった。
「『炎沸き立つ』・・・というのはだな、情熱的な感情表現だけでなくて、まあ、なんだな、どちらかというと大人のお付き合いということだ。例えば、恥ずかしいときには、恥ずかしいと思うだけでなくて、勝手に顔が赤くなったりな。そういう自然な反応のことだな、うん」
 先生の方が照れているみたいだ。
 わたしは今、炎が沸き立っている。キスしているだけなのに。オナニーで性器をいじって感じることは知っていても、炎は沸きたたなかったなと思う。  福島クンはいったん唇を離そうとしたのか、舌を引っ込めた。わたしはその後を追いかけるように彼の口の中に舌をねじ込んだ。でも、このまま突っ込んでしまっていいの? ふと考えた瞬間に、彼はものすごい勢いで吸った。ぎゅむっと舌が引っ張られ彼の口の深くまで進入する。とたんに彼の舌に絡め取られてしまった。

 わたし達は何度も何度もキスをした。すりガラスの外はどんよりと暮れてきて、もはや埃が舞うほど光の束はくっきりとは浮かんでいない。長い長い時間をかけて、ずっとずっとキスしていた。
 身体が動く度に立った乳首がこすれて痛い。そして、気持ちいい。つままれたり揉まれたりしたいな。
 お互いさすがに求め疲れてきた。この辺で終わりにするか、それとも先へ進むか。そういうタイミングになっていることをわたしは感じた。彼もそうだろう。わたしと目を逢わせたり視線をそらしたりしている。
 セーラー服の裾とスカートの間の露出した背中に、彼の手が添えられている。じっとりと暖かい。彼はわたしを引き寄せた。それは、わたしと密着したいためではなく、背中から腰へと手を移動させるためだとわかった。わたしはそのまま彼にもたれかかる。彼の手は前に回ってきた。おへその上あたりに掌が来る。
 すにすにと、遠慮がちに掌が動く。その先端の指先も、申し訳程度に力が入る。ほんの少しだけわたしの表面がひっこんだ。その部分には彼の指。身体がどんどん近づいていく。
 ああ、終わりにならずに、この先へ進むのね。
 こんなところで、とか、どうやって、とか、そんなことは小指の先ほども思わなかった。ただ、心と身体の赴くままに・・・・。
 お腹にあった彼の手がわたしの肌をこそげるようにして上に這いあがってくる。ブラのカップとカップのあいだに指をかけられ、少し下げられた。プルンと乳房がゆれる。乳首が感じる。
 でも、ホックを取らないと・・・。
 彼は結局ブラをとるのは諦めて、その上からオッパイを掴んだ。
 気持ちいい・・・・
 胸が感じるのはわかっていたけれど、自分ではあまり刺激したことは無い。アソコをかきまわすのは平気だけれど、自分で乳房をもんで悶える姿はなんだか変態っぽくて出来なかった。もっとも、乳首には色々悪戯するけれど。
 指や掌の動きは布越しでも十分伝わってくるけれど、じれったかった。そのまんまの状態で揉まれたいと思った。わたしは肩紐をずらした。抵抗力を失ったカップは彼の掌でもみくちゃにされ、カップと胸の間に隙間が出来た。布を邪険に払いのけながら、かれはついにわたしの乳房に。そして、乳首に。
「おお」
 彼が感嘆の声を上げた。女の子のオッパイを触って感動しているのが伝わってくる。初めてなのかしら? きっと初めてよね。
 もっと、もっと触って。ああん、感じるの。
 もっと、もっと、もっと。ねえ、おねがい、もっとオ!